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第十九話 「通常」
朝になった。
特別なことはない。
勇者は装備を整え、宿を出た。
――――
町は、いつも通りだった。
人の数。
行き交う声。
店の準備。
どれも、記憶と一致している。
――――
掲示板の前で足を止める。
依頼が並んでいる。
新しいものと、
古いもの。
――――
勇者は、一枚の紙を見る。
内容には、見覚えがあった。
昨日、
終えたはずの依頼だった。
――――
文面は、ほとんど同じだ。
魔物の種類。
場所。
報酬。
――――
依頼主の名前に、
視線が止まった。
文字は、書かれている。
だが、
読み取ることができなかった。
――――
勇者は、その場で立ち止まった。
見間違いではない。
目をこすっても、
状況は変わらなかった。
――――
「……そういうものか」
小さく、そう呟く。
理由はない。
納得したわけでもない。
――――
勇者は、
その依頼から視線を外した。
――――
掲示板を離れる。
次に何をするかは、
決めていない。
それでも、
足は前に出ている。
――――
町の喧騒に、
違和感はなかった。
――――
当日の進行を再開する。
記録は更新された。
内容に問題はない。
世界は稼働中。




