第十八話 「選択」
勇者は、依頼を受けた。
そう認識していた。
――――
「こちらになります」
案内されるまま、歩き出す。
迷いはない。
道も、時間も、正しいはずだった。
――――
歩きながら、勇者は考える。
自分は、いつ依頼を受けたのだろうか。
会話はあった。
説明も聞いた。
だが、
決定した瞬間だけが思い出せない。
――――
選択肢が、あった気がする。
肯定か、否定か。
受諾か、保留か。
そのどれを選んだのかは、
分からない。
――――
それでも、
身体は前に進んでいる。
足は止まらない。
行き先も、はっきりしている。
――――
現地は、静かだった。
依頼内容と一致している。
場所も、状況も、想定通り。
魔物は一体。
動きは鈍い。
危険性は低い。
剣を振る。
倒れる。
――――
終わった。
――――
達成感はなかった。
失敗した感覚もない。
ただ、
「終わった」という事実だけが残る。
――――
報告を終え、
勇者はその場を離れた。
後から、
ひとつだけ違和感が浮かぶ。
――――
その依頼は、
本来ここに存在しないはずだった。
だが、
確認する術はない。
誰も疑問を持たない。
世界も、何も言わない。
――――
当日の進行を継続する。
世界は稼働中。
特記事項は
ない。




