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崩れてゆく世界の中で  作者: 鷹江 梨華
19/38

第十六話 「連続」

勇者は、また声をかけられた。

宿の入口。

昨日と、ほとんど同じ時間。

違うのは、

声の主だけだった。


――――


「少し、よろしいでしょうか」

丁寧な言い回し。

控えめな態度。

話の内容は、

すぐに理解できた。

魔物。

通れない道。

困っている人。


――――


勇者は頷いた。

言葉を返す前に、

一拍の間があった。

「……分かりました」

口に出してから、

少しだけ考える。

いつもなら、

別の言い方をしていた気がした。


――――


指定された場所へ向かう。

道は覚えがある。

初めて通るはずなのに、

足取りに迷いはなかった。

この場所へ向かう理由は、

既に知っているものだった。


――――


現地は静かだった。

痕跡はある。

新しくも、

古すぎもしない。

魔物が現れる。

数は一体。

動きは鈍い。

剣を振る。

倒れる。


――――


終わった。

時間は、

思っていたよりも短い。


――――


「助かりました」

頭を下げられる。

勇者は、

少し遅れて頷いた。


――――


報酬を受け取る。

金額は妥当だ。

確認する必要はない。


――――


帰り道、

勇者は歩調を緩めた。

同じ返事を、

何度もしている気がした。

これで、

何件目だっただろう。

数えようとして、

やめた。


――――


宿に戻る。

人の流れはいつも通りだ。

誰も、

おかしいとは言わない。


――――


勇者は装備を整える。

刃こぼれはない。

手応えも残っていない。

それでも、

次にやることが

既に決まっている気がした。


――――


当日の進行を終了する。

世界は稼働中。

特記事項は

ない。

――――

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