第十六話 「連続」
勇者は、また声をかけられた。
宿の入口。
昨日と、ほとんど同じ時間。
違うのは、
声の主だけだった。
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「少し、よろしいでしょうか」
丁寧な言い回し。
控えめな態度。
話の内容は、
すぐに理解できた。
魔物。
通れない道。
困っている人。
――――
勇者は頷いた。
言葉を返す前に、
一拍の間があった。
「……分かりました」
口に出してから、
少しだけ考える。
いつもなら、
別の言い方をしていた気がした。
――――
指定された場所へ向かう。
道は覚えがある。
初めて通るはずなのに、
足取りに迷いはなかった。
この場所へ向かう理由は、
既に知っているものだった。
――――
現地は静かだった。
痕跡はある。
新しくも、
古すぎもしない。
魔物が現れる。
数は一体。
動きは鈍い。
剣を振る。
倒れる。
――――
終わった。
時間は、
思っていたよりも短い。
――――
「助かりました」
頭を下げられる。
勇者は、
少し遅れて頷いた。
――――
報酬を受け取る。
金額は妥当だ。
確認する必要はない。
――――
帰り道、
勇者は歩調を緩めた。
同じ返事を、
何度もしている気がした。
これで、
何件目だっただろう。
数えようとして、
やめた。
――――
宿に戻る。
人の流れはいつも通りだ。
誰も、
おかしいとは言わない。
――――
勇者は装備を整える。
刃こぼれはない。
手応えも残っていない。
それでも、
次にやることが
既に決まっている気がした。
――――
当日の進行を終了する。
世界は稼働中。
特記事項は
ない。
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