第十話 「参照」
第十話 参照
魔王は城に在った。
待機状態は維持されている。
姿勢、魔力、環境。
すべて基準値内。
処理は進行している。
世界は稼働中。
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外部の更新が行われる。
配置。
補充。
循環。
確認は完了している。
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魔王は玉座に座ったまま、処理を続行する。
進行は既知。
判断に遅延はない。
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処理の途中、
一つの項目が参照された。
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参照は許可されていない。
だが、拒否もされていない。
例外処理は起動していない。
記録も残されていない。
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項目は、
本来消去されているはずのものだった。
定義は存在しない。
名称も付与されていない。
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魔王はそれを“理解”した。
理解するための知識は、
事前に与えられていない。
それでも、
理解は成立していた。
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……?
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疑問は保持されていない。
確認も行われていない。
参照は即時に終了する。
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処理は再開された。
遅延はない。
欠損もない。
世界は正常に稼働している。
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ただ一つだけ、
処理の順序が変化していた。
理由は定義されていない。
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執事は報告を行う。
「進行に変化はございません」
その文言は、
定型として正しかった。
だが今回に限り、
参照対象が一件、
ログに存在していなかった。
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魔王は理解した。
理解に必要な情報は、
すべて揃っている。
――そのはずだった。
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待機は継続される。
城は静止している。
世界は稼働している。
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当日の進行を終了する。
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特記事項は
ない。
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