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崩れてゆく世界の中で  作者: 鷹江 梨華
13/38

第十話 「参照」

第十話 参照


魔王は城に在った。


待機状態は維持されている。

姿勢、魔力、環境。

すべて基準値内。


処理は進行している。

世界は稼働中。



---


外部の更新が行われる。


配置。

補充。

循環。


確認は完了している。



---


魔王は玉座に座ったまま、処理を続行する。


進行は既知。

判断に遅延はない。



---


処理の途中、

一つの項目が参照された。



---


参照は許可されていない。

だが、拒否もされていない。


例外処理は起動していない。

記録も残されていない。



---


項目は、

本来消去されているはずのものだった。


定義は存在しない。

名称も付与されていない。



---


魔王はそれを“理解”した。


理解するための知識は、

事前に与えられていない。


それでも、

理解は成立していた。



---


……?



---


疑問は保持されていない。

確認も行われていない。


参照は即時に終了する。



---


処理は再開された。


遅延はない。

欠損もない。


世界は正常に稼働している。



---


ただ一つだけ、

処理の順序が変化していた。


理由は定義されていない。



---


執事は報告を行う。


「進行に変化はございません」


その文言は、

定型として正しかった。


だが今回に限り、

参照対象が一件、

ログに存在していなかった。



---


魔王は理解した。


理解に必要な情報は、

すべて揃っている。


――そのはずだった。



---


待機は継続される。


城は静止している。

世界は稼働している。



---


当日の進行を終了する。



---


特記事項は

ない。



---


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