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桃太郎ではございますが  作者: 団楽
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桃太郎。

日本人なら誰でも知ってる、ヒーロー。


だけどヒーローだって苦しんでる。苦しんで、あがいて、戦って、そしてヒーローに結果論としてなるんだ。

このお話は、そんな桃から誕生という、ちょっと変わった生まれの少年が、頑張って生きるお話。

結果論としてヒーローになれたらいいね。

俺の名前は桃太郎

桃から生まれた桃太郎


唐突だが

誕生とは戦いである


生む側にとって命をとした戦いであり

そして

生まれる側にとっても同様

生きることを掴みとるための戦いなのだ


未知の世界へ

まだ弱々しい体で

安全が約束された胎内から

飛び出していくのだ


赤子はみな

戦士なのだ


産声とはすなわち

勝利の勝鬨である


そして、桃から生まれた

この俺の出生も

その瞬間から戦いであった


出刃包丁の真剣白羽取り

俺の始めての勝利の瞬間である


※※※※※※※※※※※※※※

どんぶらこ

どんぶらこっこ


気がついたとき

俺は揺れていた


正直、甘ったるい香りが充満した中

絶え間ない、規則性のない振動に俺は直ぐに酔った


気持ち悪い

助けてくれ


キラキラのエフェクト申請をしようと覚悟を決めたとき

俺の必死の祈りか絶望が通じたのか

上限運動は不意に止まった


「あんれまぁ、おっきな桃じゃぁ。

しかも、よう熟れとる。もって帰って食うとするかのぅ」


外側から老婆の声が聞こえる。

なるほど、俺は桃の中に閉じ込められているのか


((怒))


誰だよ!誰特だよ!

なんの目的があって、桃なんかに閉じ込めたんだよ!


軽く怒りを覚えつつ、俺は助けを求めるべく、声をあげる。


「おぉ~い、助けてくれ!桃に監禁?されてるんだ!」


だが、耳が遠いのか、俺の声は老婆に伝わる事は無かった。


さて、そんな俺in桃を運ぼうと老婆は懸命に担ごうとするが、老婆が担ぐには桃はちょっと重くて大きいらしい。

まぁ、人間一個はいってるしね(笑)


「あたたたた~。

重い桃やね。腰をやわしちゃうわぃ。」


うん。きぃつけな。

俺out桃だったら手伝ってやるんだがなぁ。


軽く敬老精神を発揮しつつ、どうしたものかと(意志疎通はならないものの)俺も頭を悩ませていると、それは始まった。


「‥転がすかのぅ」


「え‥‥⁉

ちょちょちょ!桃だから!桃、林檎じゃないから!

痛みやすいよ!ものごっつ痛みやすいよ!」


俺は叫んだ!

ものの道理を叫んだ!

けれど桃in俺の声は、耳がすこぉし遠い老婆には聞こえない。


ゴロゴロ

ゴロゴロ


恐怖の回転運動である。


「重いけんどもね~♪じぃさんのためなら、えんやこら、どっこい♪」


外から聞こえる老婆の奇妙な歌が軽くドプラッている。


脳ミソが、回転運動と老婆の怪しげな歌でシャッフルされ、俺は危険なキラキラをスプラッシュする前に、ブラックアウトした。


感謝だ‥


※※※※※※※※※※※


「‥かぁ~、くった。くった。

ばぁさんの飯はなんぼ喰うても旨いわぃ。」


熊をも逃げ出すような、どら声に俺は覚醒した。

起き抜けには聞きたくない声だ。


「じぃさまが、いつも蒔きひろいのついでに、兎やら鹿やら猪やら熊やら、お土産物もって帰ってきてくれるじゃぁ。」


「なんの。いい女にはええもん食わせにゃ。男の甲斐じゃ。

デザートには、そのいい女を頂けるんかな?」


「もぉ~、じいさんたら(はぁと)」


これが爺さんと婆さんの会話だろうか。

ラブラブ、熱々じゃないか!


「あたしもいいけど、その前に。

ほれぇ、桃じゃ、桃!」


「ひゃ~、立派な桃じゃ!立派じゃのぅ。」


立派、立派と俺(の入った桃)を誉める爺さんへの好感度が俺の中でぎゅいんと上がる。

立派だろ!なんたって俺(の入った桃)だからな!


「川で洗濯しとったら流れてきたんよ。ずっしり重くて、立派じゃろ?」


「どぉれ。俺が切ったろう。すこん、種ごと真っ二つになぁ!」


「やんれ!じい様!格好いいのぅ(はぁと)」


立派という言葉に天狗になっていた俺の中で血の気がざぁっとひく。

今、この爺さん、真っ二つにって言ってなかったか?


桃の中心、種じゃなくて俺いるよ?

中心にみっちり、俺、インしてるよ?


闘気!


殺気とは違う、純粋な闘気を俺は感じた。

全身の毛穴が開き、全身の産毛が逆立つ!


「かぁぁぁ‼」


爺さんの気合の入った一撃に、俺は戦士になった。


誕生とは戦いだ。

赤子はみな、生を求め戦う戦士だ。


産声は、勝鬨なのだ。


「おぎゃぁぁぁ‼」


俺は、まよいなく降り下ろされた、その一撃を

爺さんの、気合の入った一撃を


真剣白羽どった。



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