理不尽、鬼が出る
少し時間が出来たので書きました。
ドスッ
いきなり室内に響く音に警戒しようと思ったが、止めた。
刀というここら辺では珍しい武器が扉に“突き刺さって”いたからだ。
ドスッ
ドスッドスドス
ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドス
「怖ぇえよ何考えてんだお前俺の護衛だろ何で扉を滅多刺しにしてんの!?!?」
この笑えない重低音を打ち破ったのは我らがヘタレ王。
だがな、お前は所詮ヘタレなのだよ。
ドスッ
今までで一番大きな音を響かせてその勢いで粉々に砕け散った扉の先には……
幽鬼のような表情をしたシオンが……。
「じゃあ後は頼んだ我らがヘタレ王。」
さっさと退散する事に限るよこう言う時は。
窓に手を掛け……「ナンデ、ニゲヨウトシテイルノ?」
おっふ……神は死んだ。
「で、何でリズは何時も寝ているような時間にこんなヘタレの部屋に居るわけ?」
「何でわたしが寝てるって知ってるんだ?
ここから王城まで結構距離がある筈だし、それに結界もメイドも反応していなかったし……。」
「そんなことは置いておいて、な ん で こ こ に 居 た の ?リ ズ ?」
一度区切って一文字ずつ言い聞かせるように話しているが、目が死んでいるのは気のせいだろうか。
「いやいやそんなことで済ませられる問題じゃないぞ!
わたしの屋敷の防衛に関する重要な問題だからな!?」
この話は不味い流れだ、今すぐ軌道修正しなければ。
ドスッ
「今、ボクが聞いてるの。
分かる?」
「……はい。」
怖ぇえよ。
止めよう?そういうの。
マジでそういうのイクナイ。
……床が貫通してるよ。
王の執務室だよ?最重要人物が何時もいる部屋だよ?
最高級の防護障壁やら何やらとたっくさん張り巡らされている部屋だよ?
怖ぇえよ。
「あのですね、そこのヘタレと言われ続けていじけてる奴にですね、少しだけ用がありましてね、それでですね、早くから寄った事態ですよ、ね。」
さっきから刀で床をコンコンしてる訳ですけどね、怖ぇえんですわ。
刃物は欠けやすいんだからそんな風に扱ってはいけませごめんなさいもう何も言いません……。
「で、その用事って何?」
「あぁ国外へ出るからその挨拶をしに ズドンッ ……何か気に触ったのデスカ?」
流石我らがヘタレ、シオン相手に禁句をさらっと口にするとは。
案の定手加減をミスって床に大穴開けてるよ怖い。
これには我らがヘタレも動揺を隠せない。
冷や汗だらだらで上目遣いに彼女を見ている……何か笑える。
突き刺さったまま抜こうとしない刀に手を掛けつつ、明るさが欠けた表情で……。
「何笑ってんの?」
鬼さんこちらを向いちゃった……。




