理不尽、と国王と剣聖はキチガイ……みたい?
茶番会です。
「やぁ陛下、ご機嫌麗しゅう存じます。」
とても綺麗な笑顔で目の前にいる男性、ライナー・フォン・フラワーガーデン現国王に話しかける。
「ちょっとキモいやめてくれマジで。
お前にそんな言葉使われると鳥肌が立って仕方ないんだが。」
「そう言うことを言っていいのかなぁ?
へ・い・か?」
随分と優しげに、そして恐ろしいまでの黒い笑顔で国王へと呼びかける
「何お前本っ当にキモいマジで。」
その言葉を聞くや否や、彼女の全身が淡い黄緑に発光し、
ドスッ
「グフ……。」
身体強化による駿足で国王に腹パンした
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今、エミリーがいるのは王宮
彼女が指揮官らしき男を殺したことによって即座に魔獣の群れが崩壊
そのおかげで北門以外の東、西、南門における戦闘も終息を迎えた
その、祝いの席にいるのである
「陛下、あまりリズに良いようにされるのは国王としての威厳に関わりますよ?」
そう告げたのはこの国の最高戦力である剣聖、シオン・スレイヴだ
「そう言われてもな、力関係というものがな、あんだよ。
俺にこいつを黙らせることは出来ない。
と言うことで剣聖、なんとかして。」
この国で唯一対抗できるだろうシオンに丸投げする
「やだ。」
「国王の勅命なんだけどっ!?」
「だってそっちの方が面白いし。
ね〜リズ。」
薄ら笑いで国王を貶しつつエミリーに話を振るが、
ぷいっ
シオンから顔を背け、頰をふくらます
「知らん、そこの“駄”国王にでも聞け。」
女性陣から貶され続ける国王を、周りの貴族たちが見ているのだが、
その視線には哀れみの視線が多数混ざっている
「何その“駄”っておい残念人間聞いてんのか?
おいざんねゴフッ……。
……すいませんでした。」
また、彼女の拳が炸裂し、口から肺の空気が漏れる
「ねぇリズ。」
「なんだ?」
「食べ物取らないの?」
「……。」
そう、普段ならいの一番で料理を盛る彼女が始まってから何も取っていないのだ
「ほらあそこに最高級の花牛があるよ?
この国の特産物で脂と身が絶妙な割合になってるとっても美味しいお肉だよ?」
「……。」
「もしかして、ねぇ。」
「……。」
「知らない人がいっぱいで緊張してるのかなぁ〜?」
獲物を見つけた肉食獣のような顔で彼女に詰め寄る
「ねぇねぇ緊張してる?
人見知り?
怖いの?
うふふふ……。」
口に手を当ててニヤニヤ笑うシオン
「貴族が、
貴族を殺したくなるだけだ。」
ぼそぼそと呟くエミリーとは対照的に、
「そっかぁ〜、貴族が嫌いなのかぁ〜。
ふふふふ。」
ニタニタとムカつく笑顔で寄ってくる
「ふん、そこまで言うなら取ってくる。」
面倒なのかウザいのか、その場から離れ、一番近いテーブルに向かう
キョロキョロ不安げにテーブルへと向かう彼女の姿は、なんと言うか残念だった
やっとこさたどり着いたテーブルには、花牛のレアステーキが置いてあった
皿に数切れ取って口へと運ぶ彼女の顔は、喜びに満ちていた
「うま〜!!
お〜に〜く〜うま〜!!」
これはうまいな。
肉は重いからあんま食わんがうまいな。
ただ、重い、うまいが。
ソースもなかなかイケるな。
レタスとお肉を絡めて〜、んま〜!!
肉肉肉〜、……重い。
肉以外は〜、エビだっ!
ここから少し離れたところにあるトマトソースのかかったロブスターにパタパタと走り寄っていく
もうすでに貴族のことは眼中にないようだ
貴族の視線を一身に受けている事を気づかないで
「あちゃ〜、あれはもうダメだな。
リズの目がハートマークになってるみたいだ。」
「ほんとだな。
ありゃもうダメだ。」
突如、グリンッと首がこちらを向き、
親指を下に立てて首を切った
「聞こえてたみたいだね。」
「首切ったぞあいつ。
絶対になんかヤバイ予感しかしないんだが。」
「あはは、ドンマイ。」
「え?俺?マジで?」
「当たり前?」
国王なのに国王なのに……、と呟いている変な人は置いといて、
ボクも楽しみますか。
茫然自失の国王、笑裏蔵刀の剣聖、歓天喜地の理不尽
三者三様、頭のおかしい三人組だ




