理不尽、殲滅を開始する/Ridicule of Cheshire
改)今までに一度だけ出てきた美人メイド“ノーナ”の名前を“ミーレ”に変更しました。
あとは、タイトルをまとめて『理不尽、〜〜』に統一しました。
改2)挽肉と八つ裂きを入れ替えました。
挽肉になってから八つには裂けないよね〜。
魔獣の大群があげる砂煙が、視界の最奥に映る中、
北門の城壁、その上にエミリーとシオンがいた
「あー頭に響く。
この音どうにかならないのか?」
頭痛を堪える様にこめかみをほぐしている彼女に、
「魔獣の足音だから仕方ないよ。
でもまるで地震みたいだね。」
魔獣の大群が地響きを上げながらこちらに向かって来る様は圧巻
いやそんなのどうでもいいわボケ。
なにナレーションしてんだよ。
見ただけで万越してるんだケド。
こんなの聞いてないわ〜。
うんこれは追加報酬だな。
「リズはどうする?
突っ込む?」
「メンドイ一人で行け。」
そう言ってどこからか家具を取り出し、
メイドも呼んでティータイムを始める
「ミーレ、今日の紅茶とお菓子はなんだ?」
「紅茶はいつものを、お菓子は商会ギルドの一級品が御座います。」
「むぅ、やはりそうそうブランシュのお菓子は食べれないか。」
「申し訳御座いません。
ですが、そう言っているうちにお菓子の風味は損なわれてしまいます。
なので早めにお召し上がり下さい。」
「仕方ない。」
そう言ってお皿に盛られているダックワーズを手に取る
ダックワーズというのは、アーモンド風味のメレンゲを焼き上げ、
生クリームを挟んだものだ
生地の表面はさっくり、中はふわっとした食感で、
口当たりのいい生クリームをアーモンド風味の生地挟んだ魅惑の一品
「ねぇリズ、毎回思うけどそれどうやってるの?
ボクには“普通の”魔法の才能がないから詳しく教えてね?」
「えーやだ。」
お菓子の方が大事な様子だが、
「それじゃあこのお菓子はお預けね。」
そう言って刹那のうちに抜刀
視認することも許さぬまま、ダックワーズの乗った皿を刀の上に乗せ、
手元へと引き寄せる
「あれ?」
だが、皿はあるのに先ほどまであったお菓子は消えていた
「シオン様、優雅な時間にその様な物騒なものはお仕舞い下さい。」
そう笑顔で返すミーレの手には、皿に乗せられたダックワーズがあった
「これは降参。
でもキチンと説明しないとヤだよ?」
黒い笑顔全開で微笑む
「魔術刻印を仕込んでいるだけだ。」
「ふ〜んそうなんだ。
それで魔術刻印て何?」
「知らないのか?
生物に刻むのが刻印、無生物に刻むのが魔法陣だ。
常識だから覚えとけ。」
「ありがと。
やっぱり可愛いなぁ。」
「キモい死ね爆ぜろ。」
「はいはいっと。
リズ、お仕事の時間だよ?」
魔獣の接近を即座に視界に捉え、無表情になるシオン
それとは相対的に、余裕の笑みを見せるエミリー
ちなみにミーレはすでに帰還している
シオンが動くすぐ前に帰還させたようだ
「ボクは下から切り込むから。
こぼれないように殲滅してね?」
そう言い残して城壁から飛び降りる
そのすぐ後に暴風が吹き荒れる
落下している最中に城壁を蹴り、加速
その勢いを抜刀からの居合で魔獣の群れへと叩き込む
その様は一筋の矢の如く
先頭にいた魔獣はもちろん、一気に中間あたりの魔獣まで吹き飛ばす
ポッカリと空いた魔獣の群れの中、
「剣聖シオン・スレイヴ、推して参る。」
そうポツリとこぼしてから踏み込む
その様子を上から見ていたエミリーは自らの力を行使する
「付与魔法:輝翔双翅、発動。
並びに魔法陣:《破壊の鼓動》アクティベート。
充填率10、
20、
30、
40、」
エミリーが上空に浮いた瞬間に、頭上に放たれた魔法陣
半径一メートル弱くらいの魔法陣は酷く禍々しい、歪んだチカラを孕んでいた
そして、彼女が数字を刻む度に、
時計の針のような音が聞こえる
「50、
60、
70、
80、
90、
100%、発動。」
魔法陣に魔力が充填された瞬間、
魔法陣が砕け、歪なカケラとなって、
魔獣の群れへと降り注ぐ
「「期は満ちて、
蕾となりて、花と散る。
その咲く花は、どんな色?」」
戦場に響く鈴のような声
その声は、二人の女性の物だった
濃密な狂気を孕んで……。
グチャリ
バキグチュギャビチョヌチュグルガキッ
破壊が戦場へと降り立つ
「「ドス黒い地獄だ」」
魔獣の群れの中心部に形容のし難いナニカが鼓動する
一度脈打てば、八つ裂きに
二度脈打てば、挽肉に
三度脈打てば、赤染みに
そうして災厄は地へと産まれ落ちる
GyoEoaoaUoooAupu!!!
Gugyae?
かに思えた。
生まれ落ちた災厄は重低音とともに刻まれていた
バラバラになった災厄はその巨体を肉塊に変えて魔獣たちを押しつぶす
今のは……。
まぁいい、今は仕事が最優先だ。
さっさと片付けるか。
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〜ある男の嘲笑〜
「さぁさぁ楽しい茶会の始まりだ。
待っていてくれ、愛しのMy princess」
そう言ってニタニタと嗤った




