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暇人な付与術師《エンチャンター》  作者: 嘘つき妖精
[理不尽を体現した女]
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理不尽、至福の時を過ごす

現在、エミリーとシオンは王城でお菓子を食べていた。


「このお菓子も美味いな。

ん?こっちはクッキーか?

!?しっとりしているだとっ!

これは何と言うお菓子だっ!」

テーブルに置かれたたくさんのお菓子を一つずつ手にとっては食べていく。

「それはソフトクッキーだよ。

他にもナッツとかチョコレートとか入ってるヤツもあるよ?」

苦笑をこぼすシオン

やっぱりお菓子を前にしたリズは可愛いな。

リスみたいでイジメたくなるのも彼女の魅力かな?

優しそうな見た目と違って案外腹黒いシオン

「これはシュガーラスクか。

〜♪、やはり王族御用達はいいな。」

一つ手にとっては両手でむぎゅむぎゅ食べる

あぁ、わたしはこのために生きて来たっ。

わたしも王族と繋がりがあればこのお菓子を毎日……。

っはっ、一瞬意識を持って行かれた。

罪づくりなお菓子たちだ。

悪いお菓子はわたしの糧となるがいいっ!

はっはっは〜♪

「楽しんでいる様だけどそろそろ謁見の様だよ。

お菓子片付けないと……。」

瞬間、

「わたしはお菓子が食べたい。」

とても穏やかな声で言った

しかし、内包されている感情は有無を言わせないほど苛烈だった

「はぁ。

だと思った。

今回“も”特別でこの部屋に来て貰える事になったから。

よかったね。」

呆れ半分諦め半分の声が漏れる。

「当たり前だ。

わたしは国王より“偉い”んだぞ?

むしろ感謝しろ。

……それより“あいつ”がどうなったのか興味があるな。」

突如周辺にいたメイドたちがドアへと駆け寄り二列に並ぶ


出て来たのは“剛健”と言う言葉が似合う壮年の男、

その男が護衛を連れて入って来た

「よぉ、待たせたな。

……相変わらず菓子ばっか食ってんのな。」

親しげそうにエミリーに話す

「これがわたしだ。

それより一国の王がそんな態度でいいのか?

ライナー・フォン・フラワーガーデン王サマ?」

からかう様にウインクするメアリー

若干口元にお菓子のくずがくっついているが気付いていない

そのせいでませた子供がウインクしている様だ

「フルネームで呼ぶなって何回も言ってんだろ。

……だいたい俺にフラワーガーデンなんてファンシーな名前似合わねぇんだよ。」

「お前のいかつい顔には似合わんだろうな。

しかし、前代まで綺麗な顔だったのにこんないかつくなるとは……。

ぷっ…くくっ…。

はぁ面白かったぁ。」

ころころと楽しそうに笑う

「はぁ、まぁいいか。

……国王をからかうとかどう言う神経してんだか。

とりあえず、今回の件を引き受けてくれた事を感謝したい。

何か欲しいものはあるか?

いわゆる前金というヤツだが。」

口に入れていたものを一瞬で飲み込むと、

「お菓子っ!」

子供の様に手を挙げて答える

「だろうな。

よし、あれを持って来てくれ。」

そうメイドに言うとメアリーの対面に座ってくつろいだ

ちらりと彼女の食べる姿を見てみる

すると勢いよくこちらを向き、

「やらんぞ?」

と親の仇を見る様に言う

「菓子類はあまり好きじゃない。

だから遠慮なく食っていいぞ?」

「お前がこう言うの(お菓子)が好きって言ったら引くところだったわ。」

遠慮の欠片なく言い放つ

「一応不敬罪で死刑になるところだぞ?」

「知らん。

わたしを殺せるのはわたしか神だけだ。

それに非武力を訴えているこの国に殺られるほど柔じゃあないさ。」

けけけといたずらっぽく笑う

「一応この国には剣聖がいるんだが……。」

「シオンのことか?

残念だがあいつとは相性が良くてな。

て言うかこいつが剣聖なのを忘れてたな。」

至極真面目に失礼を撒き散らす

「剣聖って言ったら剣神の加護持ちだぞ?

普通忘れないんだがなぁ。」

こいつ一般常識というものが通用しねぇ……

「まぁまぁ。

このヒト(リズ)はこういう人だから。

陛下の気持ちは分かるけどねぇ。

まぁボクは気にしてないしいつもの事だからいいよ。

それに友達感覚の方が付き合いやすいし。

陛下が気にする必要ナシ!」

微笑と苦笑が混ざった笑みで国王に言う

「んな事とっくに分ぁってるよ。

何回こいつと顔突き合わせてると思ってんだ?」

そう言って返している間にも当の本人はお菓子を食べている


雑談を交わしている間、

「陛下、予定のものが来ました。」

と執事の一人が言う

「おう。

リズ、お前の前金が届いた様だ。」

と言って扉から出て来たのは、

たくさんの種類のホールケーキ

ショートにレアチーズにモンブラン

ガトーショコラやシフォンやタルトなど

色とりどりの様々なケーキが部屋に運ばれる

圧巻の様子に目を奪われるメアリー

「これはまさかっ!」

「ブランシュ・ノワールのケーキ地獄だ。」

数十種類あるケーキは、

人によって吐き気をもたらすほどの甘い匂いを撒き散らしている

「まさに天国っ!

全部今日までに食い切ってやるっ!」

彼女なら達成出来そうな気がするのが不思議な所

「俺はもう帰るわ。」

そう言って部屋を出る

なにあの甘ったるい匂い。

やべ、吐きそうになって来た……。

ケーキの匂いに当てられて逃げたのだ


「〜♪」

扉の向こうから幸せそうな悲鳴が聞こえる

マジであれ全部食う気かよ。

……あれで太らないから不思議だよな。


ギィィンッ


ビクゥ

なんだ今の金属音。

なんか刺さってるみたいな音だが……。

恐る恐る振り返ると、

フォークが扉を貫通しかけていた

……あの扉確か一センチあった様な気が。

考えるのやめてさっさと帰ろ。

うしろのフォーク?おれしらない。

おれかえる。フォークしらない。


「チィ、仕留め損なったか。

まぁいいや、ケーキたべよっ♪

うま〜♪」

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