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暇人な付与術師《エンチャンター》  作者: 嘘つき妖精
[理不尽を体現した女]
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理不尽、持病と友人に翻弄される

首都ローズフリーデン

エミリーは甘味を求めてある家にいた

この家の持ち主はシオンと言って、

軍服を羽織り、長い黒髪を後ろでまとめた男だ


「おいシオンっ甘味は何処にっ。」

「ん?ここにはないよ?」

そう言って肩を竦める

「何でっ!?」

「家にあるなんて一言も言ってないよ?」

片目を閉じてしてやったりと言う表情を浮かべる

「オマエシニタイカ?」

背後に魔王を幻視するほどの闇のオーラ

「まぁ待って待って。

今回は依頼に来たんだ。

君の腕を見込んでね。」

スッと真面目な表情に切り替える

それを見て、

「わたしは高いぞ?」

どうやら甘味バーサク状態は治まった様だ


「じゃあ本題ね。

その前にハイこれ。」

と言って小箱を手渡す

それを受け取った彼女の顔が驚愕に染まる

「これはブランシュ・ノワールの新作っ!

ここここれをわたしに?

おおおオマエまさかわたしと結婚する気なのか?

プロポーズなんだなっ?

そうなんだなっ?」

いきなり出された予想外の甘味にパニックになる

「いくらボクでも同性とは結婚しないよ?」

そう、

彼、ではなく彼女なのだ

シオンは正真正銘の女なのである


「そういえばそうだったな同志よ。

同じ薄い胸部同士頑張ろうではないか。」

「ん?僕は薄くて良かったと思っているよ?

だって戦闘中に揺れたりするし空気抵抗がヤバいから邪魔だし。」

至極真っ当に返す

「裏切り者ぉぉっ!!」

半泣きになって怒るが、

「て言うか本題に入りたいんだけどいいかな?

じゃあ説明するよ。」

と言ってエミリーの慟哭と憤怒をサラリとかわしつつ説明を始める


「最近魔獣系統の魔物が頻繁に現れているんだ。

これを見るに獣の魔王が動き始めたと推察される。」

「つまり、この騒動をわたしが収めろと?」

公私混同はしない、それが彼女だ

「ん、そう言うこと。

できる?」

「わたしを誰だと思っている?

最強の「そう言うのいいから。」ちょ今の決め台詞なんだけどぉ!」

シオンは慣れた様子でエミリーの相手を“しない”

「で、するのしないの?

究極どっちかだけど。」

「魔物の大量発生(スタンビート)ならお前も得意だろ?

何でわたしなんだ?」

疑問に思っていたことをようやく口にする。


「今回はただの大量発生(スタンビート)じゃないっぽいんだよ。

なんか必死と言うか何と言うか。

さすがのボクでも半狂乱の相手は無理。」

「ふむ、理由は分かった。

で、何をわたしに差し出す?

富か?栄誉か?名声か?

それとも爵位?さぁ言ってみろ。」

どこぞの悪役の様に言う

案外そう言うのが好きなのかもしれない

「君が絶対にしたくなる様なものを持って来たよ?」

意味ありげに含むシオン

「ほぅ、してそのブツとやら何だ?」

どっかの悪代官の様な笑みを浮かべるが、次の言葉で表情が凍る

「我が王宮に仕えている専属パティシエ、

ブランシュ・ノワールに直接買い付けできる様にする。

それが今回の報酬さ。」


「やるやる絶対やるお願いしますやらせてください秒で沈めるからマジでお願い何でもするからぜひブランシュ・ノワールのお菓子を直で買わしてお願い…………ect.」


身体強化を使って刹那でシオンに飛びつくエミリー

壊れた様に懇願を続ける彼女に、


「分かったから落ち着いて、

て言うか今の君はすごくキモイ。

そんなにくっ付かれると説明出来ないから。」

必死でしがみつくエミリーを、必死で引き剥がすシオン

ようやく落ち着いたのか離れるエミリー

「場所はどこだっ!

すぐに消してやるっ!!」

前言撤回、治まっていなかった

「アイビー森林地帯だよ。」

「分かった今からそこを「消しちゃダメだよ?」何故だっ!

ブランシュがわたしを待っているのだぞっ!!」

「あそこは優秀な魔蜂蜜の産地だし、

それにブランシュもそこの蜂蜜使ってるし。」

「じゃあ殲滅だっ。

今から行くぞっ!」

今にも飛び出していきそうな彼女をなだめる様に、

「まぁまぁ、今は調査隊がいるから明日まで待ってね。」

今のエミリーを簡潔にまとめるなら“猪突猛進”だろう

「オマエらどれだけわたしを待たせれば気が済むんだっ!!!」

「ちゃんと待ったらブランシュ・ノワールに会えるからねぇ。」

微笑を浮かべる

対してエミリーは、

「分かった。」

借りて来た猫のように大人しくなった


「君は大人しかったら可愛いんだけどねぇ。」

「わたしにそんな趣味はないぞ?」

「ボクもだよ?」

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