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Estrea  作者: 鳶田こう
5/10


 ドンドンドン、と勢い良く扉を叩く音でアクセルは目を覚ました。帰宅して、持ち帰ったボアを捌いた後、どうやらうたた寝をしてしまっていたらしい。どれくらい寝入っていたのだろう。捌くのが終わったのは、おやつの時間には少し早いくらいの時間だった筈だ。窓の外を見ると、まだ陽は沈んでないようだが、あと二刻も経てば陽が沈む、そんな時間帯だった。


 と、ぼんやりと考えていたアクセルだったが、再びドンドンドン、と先程より強い力で叩かれた扉の音で我に返る。アクセルは今、一人暮らしだ。自分に代わって、客に出てくれる人はいない。


「はぁーい! なになにー!?」


 アクセルは、慌てて戸口に向かい、そう言いながら扉を開けた。


「あ、アクセル!」


 と扉が開くやいなや、尋常ではない剣幕で、ケインと同じく同世代の友人、アンディが家に飛び込んできた。


「ど、どうしたんだよ。そんな慌てて……」


「チビ三人ここに来てないか!? ディムとエミーとジェリックの三人!」


 様子がおかしいアンディの剣幕に、困惑しているアクセルを気にも留めず、彼はアクセルに問いかけた。


「いや? 誰も来てないけど――何かあったの?」


 アクセルは、そう、少し身を引きながらぼんやりと答えたが、もしや何か問題が起きたのでは――、と気づき、一変して真面目な声でアンディに訪ねた。


「それが、村の中にいないみたいなんだよ。今は、村の皆総出で探してる。探し始めてからもう二刻くらいは経ってるかな……林の方はもう探したし、村中探し回ってるし、家も今一件一件確認してる。でもいないんだ、だから、もしかしたら……」


「……森に入ったかもしれない、ってことか」


「そうとはあんまり考えたくないけど……、そういうこと」


 村の林はそれ程広くない。村中の人で探しているのに、子どもが林の中で遭難して見つからない、というようなことは考えにくかった。それよりも、村には周囲を囲うように塀があるが、その塀は村の出入り口で途切れており、その出入り口には特に門番もいないし、門扉だって付いていない。そこから、村の外へ出て行ったと考えるのが妥当だった。


「それで、なんだかおっかないウルフの群れが出る噂があるんだろう? だから、陽が落ちる前に森を捜索した方がいいって村長が言って、これから男何人かで森に行こうって話になってるんだ」


「じゃあオレもそれに行く。剣の腕なら自信あるし」


「うん、皆もそう言って、ついでにアクセル呼んで来いって。俺も森に行くから、支度できたら村の入り口に来て」


「オッケー、伝言サンキュな!」


 そう言ってアクセルは、素早く狩りの支度に取り掛かる。

じゃあ伝えたからね、と言うとアンディも足早に家を出ていった。




 アクセルが、小走りで村の入り口へと向かうと、もう既に、捜索に向かうメンバーは集まっているようだった。ディンバラの村長モーリスや、先程のアンディの顔もある。


「ごめんお待たせ!」


そう言って、彼らに急いで合流する。アクセルが来たのを確認した村長が口を開く。


「皆、迅速に捜索を行うのじゃ! もし何か手がかりを見つけたり、危険を感じたらすぐ周りの者に知らせよ! くれぐれも日が暮れるまでには森を引き上げるように!」


 その村長の声にバストンがはい! と声を上げる。彼は、どうやらこの捜索隊のリーダーを任されているようだ。それから、捜索隊のメンバー各自に許可証が配られる。これがないと村の外では、単独で行動ができない決まりなのだ。森に入る全員に行き渡ったのを確認して、村長は掛け声を掛けた。


「行き渡ったな? では皆、心してかかれ!」


 男たちは、それに自分たちを鼓舞するように、おお! と声を上げ、森へと向かった。





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