Ⅳ
「ごめん、オレより父さんが、兄ちゃんが生きてたほうが良かったのに」
みんなでほってもらったお墓の前で、そろってだまったまま礼をしていた、村のみんなにそう言った。墓標には『ライオス・デンゼット』の文字。オレの父親の名前だ。父さんも兄ちゃんも、オレにとって、ホントに英雄みたいな人だった。打ち合いの稽古も、いっぺんだって、二人に勝ったことがなかった。
近所のおじさんやおばさんはみんな、何ともヘンな顔をして、そんなことはないよ、と言った。いつだったか前に見た、子どもの歯が取れそうで取れなくて、困っていた時の、オレの兄ちゃんのような表情だった。
大丈夫だよ、困った事があったらいつでも言ってね、みんなは口々にそう言ってくれた。
みんな、気を使ってくれてるんだ、何となくそう思った。二人がいなくなって辛いけど、みんなだって辛いんだろう。父さんも兄ちゃんも、とてもすごい人だったから。
「オレ、家のことならできるから。だから一人でも大丈夫だよ」
こんな、まだ未熟で一人になってしまったオレを、村に置き続けてくれた、村の皆には感謝してる。
だから、オレはオレで、皆が困ってたら助けよう。頼まれたことはできるだけ引き受けよう。それだけの恩義を、オレは受けてるはずだから。