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92 パワーレべリング

「よっし、行くぞ!」


 私達は65~69階層の魔物退治に向かう。もう最下層までついてしまったため、ここからはパワーレべリングをしていこうと思う。他の皆は後ろからついてくるだけで暇になるだろうが、まあ仕方ない。もう時間をかける意味もないしな。


 〈気配察知〉を階層全体に広げる。すると20体程度の大物が引っ掛かる。今から行く階層は、ダンジョンコアのマスター権限でダンジョン産の魔物は発生していない。すべて先代魔王(ヤツ)の配下ということになる。

 ちなみに地上などで〈気配察知〉の効果範囲や精度を高めたりすると小動物やら虫まで引っかかって頭が情報を処理しきれなくなるため普段はやったりしないのだが、ここはダンジョンのためそういった心配がない。

 20体程度ならば問題ないだろうと〈気配察知〉の精度を高めるとおおよその形状や大きさ、レベルまで分かるようになる。


 69層から遡って処理していくため、今いるのは69層であるが、ここにいるのはすべてレベル200台の奴らばかりだ。しかも体格もかなり大きい。ほとんどはドラゴンのようだ。……どれだけドラゴン好きなんだよ先代魔王(あいつ)は。

 ちなみにエサはどうしていたのかというと、たまに低階層に移動し冒険者をさらっていたらしい。ダンジョンで冒険者が行方不明(死亡したら時間経過でダンジョンに取り込まれるため死体が残らない)になるのはよくあることなので今まで気づかれなかったそうだ。


「というわけで抹殺!」

「ギャァァ!!」


 1匹目。死角から近づき不意打ちの一撃で脳天をかち割ってやった。ただ悲鳴を上げられてしまったので他に気付かれた恐れがある。


 ドスンドスン! と近くにいたらしい他の奴らがこっちによってくる。


「ティーア、防御は任せるぞ。ソレイユちゃんを気にかけてな」

「はぁ~い」


 アリシアさんはレッド、ブルードラゴンと先代魔王、ティーアとカーマインさんはダークドラゴンの経験値を吸収してそれぞれレベルアップしている。そのため、現状アリシアさんがこの中だと一番レベルが高いのだが、経験の差からティーアに万が一の防御を任せる。ちなみにソレイユちゃんは完全に肉体を一から作り直したためかレベル1になってしまっていた。そのため絶対に攻撃を当てるわけにはいかない。


「【天に昇る塔(スカイツリー)】!」


 こちらに近づいて今まさに食らいつこうとしていた、3匹のドラゴンが地面から勢いよく生えた光の槍に串刺しにされた。


 どうも、先代魔王戦でプッツンしてから魔法の使用判断が素早くなったような気がする。


 なお、


1―各種感覚器官で攻撃を感知する。

2―感覚神経により脳に信号が送られる

3―頭で対応を判断する。

4―運動神経により各種筋肉に対応のための動きを伝達

5―動く


 という動作で、レベルが上がって素早くなったりするのは1、5であり、2~4はレベルが上がっても速くなったりしない。なので、どうしても外部からの情報に対して体が動くまでにタイムラグが発生する。だがあの一件以来、3の速度が上がったように感じる。感じるだけで気のせいかもしれないが……脳筋の考え方が変わったということもありうるな。


 いいことだ。


「フハハ、雑魚どもめ!」


 ――おっと、この慢心でソレイユちゃんを失いかけたんだったな。自重しないと。スニーキングミッション……は時間がかかるので、普通に近づいて一定距離から魔法ブッパがいいかな。



「ゴァァァン!!」

「ギャオォォン!!」


 適当な距離まで近づこうと思っていたのだが、さすがはドラゴンといったところかある程度近づいた所でこちらに気付き、襲ってくる。


「【(ハープーン)】×3!」


 ドドドッ! という音と共に放たれた魔法がそれぞれドラゴンを貫き絶命させる。


 しかしこいつら、こっちを見かけたら脇目も振らず襲ってくるけれど、野生の本能とかで逃げたりしないのだろうか。地球だと体の大きさが強さと比例するのかもしれないが、こっちの世界はレベルなんてものがあるため、大きさイコール強さではないんだけれどな。


 なおダンジョン産の魔物ではないため死体は消えたりしない。そのため死体をそのままアイテムボックスに放り込んで行く。解体とかは後で場所を借りてまとめてやるつもりだ。もし手間がかかるようなら、人を雇ってやってもいいと思っている。アリシアさんやメリノ君などの貴族様がいるし変なことにはならないだろう。……なってももみ消してくれるんじゃないかと思っている。


 次の階もその次の階も同じく20~30体程度の大型の魔物がいるだけだった。勿論ドラゴン以外の魔物もいた。

 詳細な地図があり数もそこまで多くなかったので時間は余りかかっていない。先代魔王は少数精鋭で育てていたのだろう。

 そうして次々と攻略していく。


 ◇◇◇


 そのまま進んでいると、高速でこちらに向かってくる影がある。今回もある程度まで近づいてから魔法で仕留めようと思っていたのだが、その物体――目視できる距離になり大きな狼型の魔物と判明――はこちらを見るや否や回れ右して逃げて行った。


「キャウンッ! キャウンッ!」


 ご丁寧に悲鳴まで残して……


「え~……」


 ここにきて野生の勘とか言うやつだろうか……この場合どうすればいいんだ? 追いかけるべきか。と思ったが相手の速度が速くすぐに見えなくなってしまう。

 うーん、倒しつつ進んで行けば何時かぶつかるだろう。


 そう思い、この階層も向ってくる敵を千切っては投げ千切っては投げを繰り返していた。ただ、ドラゴンカーニバルは最初の69階層だけだったようで、その後は多種多様な魔物が出現している。

 巨人のような人型の魔物も出現したので、一応コミュニケーションをとろうとしたが無駄だった。他の魔物と同じようにこちらを見ると「ゴガアァァ!」と吠えて襲ってきたので、頭はあまりよくないのだろう。

 今までのやつはすべてこちらを見るや否やすぐに襲ってきてすぐに返り討ちにあったので、もしかしたら言葉の分かるやつはいたのかもしれないが、話し合いは出来そうになかった。



 そうして進んで行くとさっき逃げられた大きな狼を見つけたのだが……

 クゥ~とこちらに向けて『お座り』をしていた。それにどう見ても体がプルプルしている。そうして、更にその後ろには子供だろうか、よく似た毛並みの子犬程の大きさの狼っぽいものが。

 ……めっちゃやりにくい。

 子供を守ろうとしているのか、体は後ろに引き気味なのに逃げる気配は無い。……魔物って他の動物と同じように子孫を残していくのだろうか。あまりそのあたり気にしたことはなかったな。どうしよう。


「ヘイ! コトバワカリマスカ?」


 一応コミュニケーションをとってみよう。


『偉大なる王よ。魔王の配下の我を滅ぼしにやって来たのでしょう。申し開きは致しませぬ。しかし我が子は見逃してはもらえませぬか?』


 言葉が通じた。これは僥倖。しかもめっちゃ低姿勢。


「待ちなさい。私は何も見境なく滅しようというわけではありません。あなたが今後人間を襲わないというのであれば見逃すこともやぶさかではありませんよ。」

『おお! なんと寛大なお言葉か。感謝いたします。』


 それっぽく言い返してみると、『へへー』とお座りの状態から頭を下げるという体勢的にかなり厳しいことをやってくる狼。まあ平和的に事が運ぶならそれでいいよね。……なに? 今までの事? 知らんな。


「ところで王って何?」

『あなた様から精霊を統べる王の気配を感じました。気に障ったのであれば死をもって償いますのでなにとぞ子には寛大なご処置を』


 いや、そんなことで殺さないよ。しかし精霊を統べる王って何ぞ?

 ………………あ、精霊王って称号があるわ。これかな?

 精霊王という所を意識してみる。すると――


『おお、王よ……なんと神々しい』


 目の前の狼がだばーと涙を流してこちらを見てくる。後光でもさしているのだろうか。


「とはいえ、ここはダンジョンなので出て行ってもらわねばならないのだが」

『もとより我らの意に反して連れてこられたので問題ありませぬ。』


 一応〈鑑定眼〉を使ってみると、



名前:―

種族:フェンリル

年齢:122歳

性別:雌

レベル:180



 ……魔物じゃないじゃん。

 後ろの子犬っぽいのも同じくフェンリルだった。ただ子供なのでレベルは1桁。

 なお、この世界のフェンリルはどうも魔物より精霊に近い生き物らしい。そのため、私の中の精霊王という物に敏感に反応したんだとか。

 余談だが、この年齢で180というレベルは十分どころかチート並に高い。


「私達は魔物退治があるのでここで待っているか、それとも一緒に来るか? 魔王が連れてきた魔物は排除するように依頼を受けているので、今から対応するところだ。その後、ダンジョン外に出る。この時には一緒には来てもらうが。」

『王よ。感謝の念に堪えません。我が命はあなたの物。我が身をご自由にお使いください』


 こいつ結構支離滅裂だな。さっきは見逃してくれって言っていたのに、今は自分を使えとか言っているぞ? テノヒラクルーとまでは言わないが45度ぐらい回転してないか?


 結局なんかついてくるらしい。


「可愛いですわね」

「そうですね~」


 なぜかアリシアさんがフェンリルの子供を抱いてモフモフしている。


「あれ、いいのか?」

『危害を加える気が無いのであれば、構いませぬ。それに子は独り立ちするもの、いつまでも親元に居られないのです。』


 フェンリルに聞いてみるといいらしい。て言うか、レベル、年齢共一桁で独り立ちとか結構情け容赦ないなコイツ。


 その後、私とフェンリルが先頭に立ち、魔物を排除していく。なおこの後、フェンリルのように話が通じそうなやつはいなかった。


 アリシアさんたちは相変わらずフェンリルの子供をモフモフしながら後ろを付いて来ている。

ネタバレになりますが、このフェンリルさんはチョイ役です。

主人公さんの慈愛溢れる性格(笑)を表すためのモブです。

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