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91 ダンジョンコア

『あのー、ワシの事を忘れんで欲しいのじゃが……』


 ん、誰だ?


「ねぇ、あの玉が喋っているわよぉ」


 目を向けると近くに赤い玉――ダンジョンコアが転がっていた。ソレイユちゃんのことでそれどころじゃなかったけれど持ってきていたんだった。

 私は転がっていたダンジョンコアを拾い上げる。


「これはダンジョンコアだな。これは――」


 そう言って皆に落とし穴に落ちた後のことを説明した。


 魔王とか意外としょぼかったような気がしたので、みんなの視線は私が持っているダンジョンコアに集中した。


「これが、このダンジョンの核なんですか。」

「はじめて見るわねぇ。こんなものだったのねぇ。」

「これってここに持ってきてもいい物なんですか?」

『いや、ダメじゃよ! 早く最下層の台座に戻して。』

「ここ30層だぞ? 最下層ってどこだよ。」

『70層じゃ。』

「…………無理だな。」

「無理ですね」

「無理ねぇ」

『ええい、ワシが送ればいいんじゃろ! ほら、寄った寄った!』


 なぜかダンジョンコアが一か所に集まるように指示を出す。そうして、みんなが集まったところで、ぐにゃりと周囲の空間がゆがんだ。


 またこいつ、何も言わずに転移魔法を使ったな。転移魔法自体は危険のある魔法ではないので何も言わないが……問題があるとすれば転移先だろう。モンスター部屋などに移動されると厄介だ。

 ちなみにこの世界の転移魔法は「いしのなかにいる」状態にはならない。転移先がある一定以上の空間密度の場合、魔法が弾かれるからである。同じ理屈で、水中などへの転移も無理だ。転移先は空気――気体などがある場所か悪くて真空状態の場所になる。


 そうして移動した先はそこそこ広い部屋だった。


「ここは?」

『70層、ダンジョンの最奥、ダンジョンマスターの間じゃ』

「……便利だな。」


 そう言って周囲を見回す。大きさとしては体育館の半分くらいだろうか。まあ、それはともかくその広い部屋には中央に何かの台座があるが、それ以外には何もない。本当に広いだけの空間だ。


『あれじゃ、あの台座! あそこにワシを置いてくれ。』

「置くとどうなるんだ?」

『ダンジョンの機能がワシに戻る』


 ……よく分からない。台座の中央に窪みがあったので、おそらくここに置くのだろうと、置いてみる。


『おほー、これじゃこれ。100年ぶりじゃのう』

「で、ここはダンジョンマスターの間なんだろ? マスターは何処だ?」


 周囲を見回す。やはりだだっ広いだけの何もない空間だ。私達5人以外何もない。


『このダンジョンにマスターはおらん。いや、先ほどまではあの魔王がマスターだったのじゃがおぬしが倒してもうた。』

「ふーん。まあいい。そっちの願いは聞いてやったろう。今度はこっちの願いを聞いてもらおうか」

『なんじゃ? あのいけ好かん魔王を倒してもらった上に、ここに戻してもらったんじゃ。ある程度は融通するぞ。』


 とりあえずここは70層らしい。ならばもうレコード更新ということだろう。……実感がわかねぇ。


「よかったな。70層だぞ。」

「なんだか実感がわきませんわ。」

「そうですね。30層からいきなりですから。」


 気にするな。私もだ。


『……ぬっ……なあ、おぬしちょっと頼まれてくれんか?』


 アリシアさんたちと話していたら、ダンジョンコアが声をかけてきた。


「なんだ、面倒事か?」

『いや、65~69層にかけてワシの制御下にない魔物がいるんじゃ。あの魔王が連れてきた奴じゃな。ダンジョンの魔物はワシが生み出した疑似生命体じゃが、そちらは違うんじゃ。ダンジョンにそういうヤツがいると困るんで、それを退治してきてほしいんじゃ。』


 なんだこいつ。結構図々しいな。


「で? どうする?」

「何か見返りはあるのかしらぁ?」

『ふむ、人間の冒険者とやらはダンジョン産の宝が目的なのじゃろう? それを適当に20個ほどでどうじゃ? あと魔王の飼っていた魔物どもはすべて希少な奴らじゃ。人間どもはそういった奴の素材を欲するのじゃろう?』

「40個だ。それも最下層付近で出る希少なやつで手を打とう。」

『くっ……いいじゃろう』

「あと退治する魔物がいる階層の詳細な地図……そのぐらいか? アリシアさん他に何かいるものはあるか?」

「え? えーと、そうですわね……」


 急に振られたため顎に手を当てて考えるアリシアさん。


「70層まで到達したという証のようなものがほしいですわね。何かありませんの?」

『そうじゃの、これでどうじゃ?』


 そう言うと台座の前が光って拳大の宝石のようなものが複数個現れる。そこにはそれぞれ49~70までの数字が書いてあった。


「それぞれの階層の階段の前にある扉に埋め込まれている魔宝石じゃ。」


 これを外すことで扉が消え下階への階段が現れるという。25年前に65階層までの魔宝石が抜き取られたらしいが、その抜き取った冒険者はダンジョン内で死亡したため、魔宝石はダンジョンが吸収しリセットされた。その後20年前に48層まで来た人間がその階層までの魔宝石を持って行ってしまったらしい。

 なので、今ここにあるのは49~70の魔宝石だ。

 なるほど、これで最高階層を報告するわけか。確かに自己申告だけだと嘘を言うやつが出て来るかもしれないしな。

 そう言えば、ギルドにこんな宝石が飾ってあったような……気がする。同じようなものを大量に飾ってあったのが記憶の片隅にある。48個あったかどうかは覚えてない。


 ちなみに魔宝石(これ)をここに移動させたことですべての階層の階段が解放されたことになる。


「あとは49層~70層までの地図でしょうか? それがあればより現実味が増すのでは?」


 カーマインさんが言ってくる。

 するとまた同じように台座の前に22枚の紙……じゃないな、羊皮紙が出現する。今言った地図のようだ。


「ずいぶんとあっさり出すな。地図があればここまで到達する奴がいるかもしれないぞ?」

『ふん、ワシはここで何百年もダンジョンをやっておるんじゃ。知っておるんじゃぞ。この上の街がワシのおかげで成り立っておるのを』


 なるほどダンジョン都市はダンジョンがあることで成り立っている。そのダンジョンを破壊しようとは考えないだろうということを分かっているのか。私たちも報告はするが、ギルド等が率先してダンジョンコアを保護しそうだな。


 そうして、その後、目の前に宝箱が40個出現した。

 何で宝箱ごとなんだ? 中身だけでいいんだが。


『ほれ、すべて60層代で出る物ばかりじゃ。約束は守れよ。65~69層の魔物退治じゃ。それが終わったら、ここに戻ってくるがええ。地上まで送ってやろう。』

「そういったことができるのか?」

『ワシはダンジョンマスターじゃぞ。ダンジョン内なら移動は自由じゃ。』


 ……地上部分はダンジョンではないと思うんだが、まあいいや。


「どうするアリシアさん?」

「何がですの?」

「この宝の事だ。メリノ君――メリノ・レスター・フーカ氏も出資してくれているので半々かと思うんだが、今のうちに検分してほしいものをもらっておくか?」

「一応、確認だけはしておいた方がいいのでは?」

「そうですわね」


 そう言って、みんなで宝箱の中身を検分することにした。

 確かパトロンになった際に宝などはアリシアさんを優先してよいと言っていたような覚えがあるが、さすがにそれをそのまま解釈するわけにもいかないだろう。メリノ君には少なくない額を出資してもらっている。それ相応の見返りという物が必要だ。


 宝には色々とあったが別にそう言ったものに詳しいわけではないので、正直に言って価値がわからない。分かるのは魔剣などの武器ランクなどが表示されるものだけだ。




「お、これなんかメリノ君へのお土産によさそうだな」


 宝の中に豪奢な装飾が施された剣を見つける。〈鑑定眼〉で見ると武器ランクAの聖剣だった。さすが深階層の武器だ。メリノ君も男の子だしこういうのは喜ぶだろう。


「魔剣ですか?」

「いや、聖剣だな。武器ランクAの業物だぞ。これはメリノ君にあげていいか?」

「ええ、構いませんわ。」




「これは魔法を込めて任意の時に使用できる物のようだな」


 私が手にしたのは、ネックレス型の魔道具だ。デザインは一見シンプルに見えるがよく見ると細かい装飾がこれでもかと施されている。

 今言ったように魔法を3種類まで込めておいて、任意の場合に使用できる物らしい。


「【リザレクション】などを込めておいて、アリシアさんかカーマインさんが持っておくのはどうだ?」

「あら、いいですわね。デザインもいいですし。」




 そんなこんなで検分し終わり、アリシアさんとメリノ君で10個ずつ分けることになった。全数の半分(残りの20個)についてはアリシアさんが王族への献上品としたいらしいので、戻ってからパトロンであるメリノ君と話し合うらしい。


「第二王子はアレでしたが、今の王はなかなかの人物ですわよ。」

前回からちょっと間があきましたね。

どうも流れは考えているのですけれど、うまく文章化できません(´;ω;`)


少し前に、魔王がダンジョンのことを説明していましたが、あれは魔物側のダンジョンに対する認識というだけで、正確かどうかについてはまた別です。

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