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85 魔王の配下

 目の前に現れた初老の男性。そうして闘技場のような場所に満員の観客席。(観客はゴーストではあるが)

 これはどう見てもあれだな、目の前の人物の考えにより意図的にこの場に連れてこられたということだろう。ということは目の前の男性はこのダンジョンの主的な存在だろうか。

 というより、アリシアさんにより目の前の人物が魔王だと言っていた。


「魔王……あれが?」

「確か学院で教えられましたわ、正確には先代の魔王ということですが……なんでこんなところに」


 青い顔をしながら答えるアリシアさん。


「おや? 私をご存じで、それはそれは光栄ですね。しかし残念です、あなた方はここから生きて帰れないのですから。」


 丁寧な言葉づかいで暗に私たちを殺すという魔王。〈鑑定眼〉を使用してみるが、名前がラグナドロスアルタミココス? ……長いのでもう先代魔王でいいや。レベルは何と780。

 確か以前ソレイユちゃんに聞いた話ではレベル200台の勇者が魔王を討ったという事だったので、魔王のレベルも200~300程度だと思っていたのだが。


「フフフ、喜びなさい。私の栄えある伝説の一歩として刻まれるのですから。ああ、周囲のゴーストは気にしなくて良いですよ。あれらはこのダンジョンで死んだ者たちの魂でありただの観客です。あなたにはもっと良いお相手を用意しています。」


 なんだかペラペラしゃべっている先代魔王。……ここで殴り掛かったらどうなるのだろうか? マジギレされそうなので止めておくか。


「……魔王が相手をしてくれるわけではないと?」

「さすがのあなたでも私の強さでは一撃で殺してしまいますからね。多少は私も楽しみたいのですよ。フフフ、出てきなさい、我が(しもべ)たちよ。」


 そう先代魔王が言ったかと思うと闘技場の出入り口かと思われた部分にあった鉄格子が徐々に開いていく。

 そうして完全に開き切った後に、奥から獣の唸り声のようなものが聞こえてきた。お約束としてはあそこから大きな化け物とか何かしらの高レベルの魔物が出てくるのだろう。


「ノワール、まずいですわよ。何かここを脱出する手を考えないと」


 アリシアさんは先代魔王が相手ということで何とか逃げようとこちらに提案してくる。だが周囲を見回してみても、出入り口など、今さっき開いたところを除いて存在しない。


「出入り口はあそこしか無いな……自信を持て。問題は無い。」

「で、でも……」


 アリシアさんがいつになく弱気だ。変に自信過剰なのは問題だが、だからと言って最初から負けると思っているのもよくないと私は思う。アリシアさんに弱気な態度は似合わない。なので、アリシアさんに近づき先代魔王に聞こえないよう声を押さえて話す。


「大丈夫だ。アリシアさん。あなたは何をしにここに来た。名声が、宝がほしいのだろう。」

「分かっていますわ。ですが」

「それに、目の前の先代魔王だったかな。任意でここに呼び寄せたということはこのダンジョンの主ということだろう。そして、あれは私よりもレベルが低い」

「本当ですの!?」


 小声でビックリするという器用なことをするアリシアさん。


「ああ、それにあいつは(しもべ)といった。ならば今から出てくるのはあいつよりも低レベルの魔物だろう。ダンジョンの主である先代魔王、それにそもそも魔王なんぞというたいそうな称号を持っているのだ。あいつよりレベルの高いものはこのダンジョンにはいないと考えていいだろう。ならば私ならば問題は無い。そして回復魔法と蘇生魔法を使える私が無事ならば、アリシアさん、あなたも問題なくここを超えることができる。困難を乗り越え名声を手に入れようじゃないか。」

「……わかりましたわ」


「内緒の作戦会議は終わったかね? では紹介しよう。我が僕の最高傑作、レッドドラゴンとブルードラゴンです!」

「「ゴガァァァァ!!」」


 先代魔王が声を発するのと同時に前方の通路から出てくる2体の巨大なドラゴン。一体は赤くもう一体は青い。……安直なネーミングセンスだな。

 2体のドラゴンの見た目は西洋竜そのままだった四肢とは別に翼があり、空も飛べるのだろう。鱗も硬そうだし、その口には肉食と思われる鋭い牙が並んでいた。


「ふふふ」

「どうした、恐怖で気でも狂ったかね?」

「まさか、この程度で私たちを相手にしようとは片腹痛いですわ!」


 お、おう。アリシアさん自信がつくのはいいことだが、ちょっと変わりすぎじゃないですかね。


「あなたに絶望という物がどういう物か教えて差し上げますわ。森羅万象が私に跪く。私はアリシア、アリシア・ショコラ・メープルローズ!」


 名乗りながらビシィ! バシィ! とポーズを決めるアリシアさん。Oh、これは続く流れですな。


「私のレベルは12万ですよ。私はノワール!」


 アリシアさんの横で左右対称になるようにポーズを決める私。ビシィッ!


「「我ら三千大千世界に輝く至高の美人冒険者集団『高潔な乙女達(ノーブルメイデン)』!!」」


 ドカァァァン!! 後方で爆発が起こる…………という演出をしてもいいぐらいカッコよく決まった。

 見たまえ、先代魔王などアホ面をさらして見入っているじゃないか。

 やはり決めポーズは必要だったんだ。


「さあかかってきなさい。身の程を教えて差し上げますわ!」


 そう言い腰のレイピアを抜くアリシアさん。前に出るのはいいんだけど私のセリフも残しておいてね。


「ク、ククク、そうか馬鹿にしているのか。――潰せ! ドラゴンたち!」


 先代魔王が青筋浮かべながらドラゴンに命令している。なんだろうかカルシウムが足りていないっぽい。


 咆哮を上げながらこちらに向かってくる2匹のドラゴン。それに対して私たちも向っていく。下手に逃げたりして背中を見せる方が危ないだろう。

 以前ドラゴンを魔法で一撃ということがあったが、ここは室内なので大規模魔法は崩落の危険がある。勿論効果範囲を限定的にできる魔法も存在するが……何となく、できれば接近戦でけりをつけたいところだ。

 相手は2匹ともレベル300と非常に高い。これだけで勇者と戦えるというぐらいだ。

 両者が近づいていき50メートルを切ったという所で、赤い方のドラゴンが口を開きタメを作った。以前の経験から言ってブレスの予備動作だろう。


「アリシアさん!」


 前方を走っていたアリシアさんの襟をつかんで庇う。そうして盾を前に構えその場に踏ん張ると同時に、ドラゴンの口からブレスが吐かれた。


 ゴアァァァァァッッ!!


 瞬間、火炎放射器も真っ青な炎のブレスが私たちに直撃した。

 だが私の盾【ラナンキュラス】の特殊能力は魔力を流すことによって防御力の上昇が図れるという物だ。これにより武器ランクはBにもかかわらず、魔力を流した際の硬度はランクAにも匹敵する。すでに【ラナンキュラス】には壊れない最大量の魔力を流し防御力を確保している。


 ドラゴンの火炎放射はそれを受けた盾を起点に二つに分かれていく。


「くっ! 【空調(エアコン)】」


 だが、その熱気までは完全に遮断できたわけではないので魔法により私たちの周囲の温度を調節する。

 やがてブレスがやむのだがその時にはもう一匹の青いドラゴンが私たちの間近にまで迫っていた。


「ふっ! 飛んで火にいる夏の虫ですわ! 食らいなさい、奥義、螺旋突き!」


 アリシアさんが走って行き、ドラゴンの足に手首のスナップを聞かせた突きを繰り出す。別に魔法とかではないので、剣技の名前は叫ぶ必要が無いのだが。そうして――


 キキィィィィィ――


 鱗によって剣筋が滑ったレイピアがそのまま鱗を引っ掻いて行き……ガラスを引っ掻いたような不快な音が響いた。


「うわっ!」

「きゃっ!」


 2人して一瞬顔をしかめてしまう。

 その一瞬が命取りになった。次の瞬間にはドラゴンの振るわれた爪によりアリシアさんの上半身がコマ切れとなって吹き飛んで行った。

主人公さん「落とし穴に落ちたのは私のミスではない。魔王の卑劣な罠だったのだ!」

皆「な、なんだってー!!」



本物語のあらすじに少し追記しました。

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