82 貴族と王都のダンジョン 10
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今は、セーフティーゾーンにて休憩中である。
私はにやけていた。
目の前には魔剣【レウィシア】、魔盾【ラナンキュラス】、そして私の着ていた鎧一式が置いてある。
魔剣【レウィシア】は両手でも扱いが難しいのではないかという幅広の大剣だ。だがそのデザインは白いカラーをベースに金のラインが走っており非常にオシャレ。
魔盾【ラナンキュラス】は同じく両手でも扱いが難しいのではないかという大盾だ。大きさとしては体を縮めれば、何とか全身が隠れるといった大きさがある。同じく白をベースとし金の縁取りと赤い文様が走り非常にオシャレだ。
両方とも私の腕力ならば片手で問題ない。重装騎兵も真っ青な装備だ。もう何も怖くない。
「ムフフ……」
頬が緩んでしまう。白い武具シリーズの完成だ。かっこええ。
髪や尻尾が黒いのでちょっと合わないかなと思っていたが、全部装備した姿をこの階層の水たまりの水面を使って確認したら、思ったよりかっこよかった。ちょっと目立つけど。
「ご主人様まだ見てるんですかぁ」
「ノワール様そろそろ寝た方がいいですよ」
おお、そうだな。
今はアリシアさんとカーマインさんが見張りに立ってくれている。といってもセーフティーゾーンなので形だけだ。実際今まで特に何もなかった。
何かあれば、対応するより大声を出すなりして私たちに知らせる方を優先するように言っている。
私たちの持ち込んだテントは、結構広い。組み立てたままアイテムボックスにしまえるので、それなりのものを買ったのだ。これを一から組み立てようと思ったら半日は取られるんじゃないかというぐらいのもので、その分居住性は抜群だ。
しかし――
「どうしたんですか?」
ソレイユちゃんとティーアを見る。ソレイユちゃんは外見的に幼いし、着ている物も休憩中ということもあってラフな格好だ。うん、普通に健康そうに見えるな。最初に見たときはガリガリだったけれど今はそんな片鱗など一切見えない。ただやはり14歳よりもかなり幼く見える。妹というよりも娘みたいな感じだろうか。
ティーアは……なぜそんな薄着なんだろうか。外で何かあった場合どうするのだろう。というよりも……
じ~
谷間とか太ももとかエロいです。
「ご主人様、どうしたのかしらぁ?」
じ~
見た目だけならどストライクなんだけどなぁ。
「……大丈夫? おっぱい揉む?」
「え!? マジっすか? …………え!? マジっすか?」
「なんで2回言ったのかわからないけど、別にご主人様にならいいわよ~」
そう言って両手を組んで胸を強調するようなポーズを見せてくる。
おひょー
モミモミモミモミ……
「あっ……」
モミモミ……
「あぁ、んぁ……」
「ノ、ノワール様!?」
少し揉ませてもらってから、手を離し手ワキワキさせる。
「はぅん……あら、もういいのかしらぁ?」
自分の手を見る。ワキワキ……ワキワキ……
……なんという事でしょう。行き場のないムラムラ感が下半身に……しかしそこに息子はいなかった! ではどこに行くのか……なんかそのムラムラが下半身辺りをぐるぐるとまわっているような感じがする。
「……ああ、ありがとう。ちょっと言いようのない不安感に襲われたのでもう寝るとするわ」
「そう? 私は続きをしてもいいのだけれど?」
「ノ、ノワール様が求められるのでしたら……わ、私も!」
「いや、今日はもういいや、悪かったな起こして」
「ぶーぶー」
ティーアが口をとがらせているが無視する。いや、色々と感謝はしているんですよ。正直に伝えるとどうなるか分からないので伝えないが。
女性の体でこれ以上ムラムラした場合どうなるのか怖かったというのもある。ソレイユちゃんとティーアが見ている中、自家発電とかできないしな。……ティーアと間違いなんか起こしたら目も当てられない……見た目はいいんだけどなぁ……まあ、真面目な話、性格の云々以前に性別が問題なのだけれど。
うーむ、同性の胸を揉んでこれは……性欲があると言えるのだろうか?
◇◇◇
26階層からはまた空があった。屋内なのに。
端的に言うならば沼地エリアっぽい。湿気が多く足元も湿気た土に背の低い雑草が所々に生えるといった感じだ。木々が視界を遮り、遠くを見通せない。
「あ、ちょっと待って。【クリーンコーティング】」
皆に魔法をかける。初級魔法の一種で汚れが付きにくく、また落ちやすくなるという魔法だ。掃除なんかに便利なんだけど、攻撃力とかは一切ないので不人気な魔法だ。このパーティー、私のスカート状の鎧とか、アリシアさんのドレスとか、カーマインさんのメイド服とか、妙にスカートの奴が多い。ティーアもスカートではないが前垂れ? は結構長いし。こんな所を歩いて泥が裾に着くのはいただけない。
ガッチャンガッチャン――
フルアーマーノワール参上! 鎧に剣に盾まで装備してまさに無敵!
早く魔物来ないかな~。性能を試してみたい。
「ガァァァ!!」
ベチコーン!
「プベッ!!」
おっとしまった。リザードマンっぽいのが急に襲ってきたので盾で叩いたら吹っ飛んでどこかに行ってしまった。これでは剣と盾を使う戦いというのができない。
さっきの声を聴きつけたのかリザードマンが次々と集まってくる。リザードマン自体は上の階層にもいたのだがここのリザードマンは上階に比較し強く、また沼地での戦闘に特化しているというのだろうか……足元が泥みたいなのに動きが素早く、また力も強い。実際、アリシアさんやカーマインさんなんかはスピードで追いつけていない。
「くっ、このっ!」
アリシアさんなんかはあからさまに泥により足をとられている。いつもよりも動きが鈍い。
「キキィッ!」
さらに、前方にある木々には猿のような魔物が枝から枝へと飛び移ってくるのが見える。〈鑑定眼〉で見てみると、「ポイズンエイプ」という魔物らしい。見た感じは紫色の猿といった感じだが、なんでも毒を持った唾液を飛ばしてくるらしい。
唾を飛ばすとか汚いな。
リザードマンの方はともかく、ポイズンエイプの方は厄介な敵だ。なんせ木を利用して『上』から攻撃してくるからだ。また、木々の上を移動しているので追跡が難しい。
毒攻撃がどういった物なのか分からないため魔盾【ラナンキュラス】に魔力を流して防御力を強化しておく。また同時に魔剣【レウィシア】の攻撃力も上げておく。
魔物の数が劇的に増えてきたな。なかなか厳しくなってきた。
「アリシアさんと、カーマインさん、ソレイユちゃんはリザードマンを、私とティーアは猿の方を対応する!」
「「「「はい!」」」」
全員が理解したようなので、私は地面を蹴ってこちらに向かってきていた猿と一気に距離を詰める。向こうはこっちがこんな動きをするのが予想外だったのか驚いた顔をしていた。そのまま猿が次につかもうとしていた枝を切ると、スカッ! という擬音が聞こえそうなほど見事に腕を空振りさせ地面に落ちていく。そしてそのままベチャッ! と地面に落ちた。まあ、そこまでの高さではない上に地面の草と泥のおかげで死んではいないようだ。
そのまま追撃し――というか一緒に落ちてやれば、私の装備の自重でブチュッ! と猿がつぶれた。
まずは一匹。
ペペペッ!
枝に陣取った猿どもが唾を吐きかけてきた。これは毒攻撃なわけだが、見た目が汚い。
まあ、盾で受けてもいいのだが汚いのですべて躱す。そして再度ジャンプし一閃! それだけで猿の首が飛んだ。そのまま猿のいた枝に乗り――ボキィ! ……重さに耐えきれず折れた。
…………木々の枝を足場にパパッと倒そうかと思っていたのだが無理そうだ。
「キキィィィ!」
猿共が「このデブが!」とでも言ってそうな声を上げている。いい笑顔で指差して笑ってるし。
別にデブではないぞ。装備が重いんだよ。もう一度だ。
今度もジャンプして、――さすがに同じ手は喰らわないと言わんばかりに猿共は周囲の木々を渡り移動する。私は、そのまま枝に乗り――ミシッ!――折れる前に次の枝にジャンプする。
「キキィ!」
ははは! 今頃あわてだしたのか。遅いわ!
なるべく太い枝を選びながら、折れそうな場合はそのまま枝が折れる前に次の枝にという技を繰り返し猿共を屠っていく。
ちらっとティーアの方を見ると――なんとティーアの奴、羽根を大きくし飛びながら猿共を倒していた。
空を飛べるって便利そうだな。
まあ、私も魔法を使えば飛べるのかもしれないが、やったことはない。フルアーマー狐が空を飛ぶってビジュアル的にどうかなと思ったことも理由の一つだったりする。あと、変に飛行魔法を使用するよりもジャンプしたほうが速いというのもある。
地上を見ると、3人がうまく連携して、リザードマンを倒していた。リザードマン側を誘導しなるべく1対2~3になるようにしてサクサク倒していっている。
結局、これらの敵は数も多くレベルもそれなりのはずなのだが、そこまで苦戦することはなかった。といってもアリシアさんは数撃食らっていたようなのですぐにヒールで回復してやる。
「これで全部ですか?」
「そのようだな」
「ノワール様、見てください。こんなものをドロップしましたよ。」
そう言って、ソレイユちゃんが持ってきたのはリザードマンからドロップしたアイテム『リザードマンの角』が3個…………待て、リザードマンに角なんてなかったはずだ。なんでこんなものが……
何故落としたのかは〈鑑定眼〉で見てもよく分からなかった。
なお『リザードマンの角』はかなりの強度と麻痺属性があるが小さいため、弓の鏃や投げナイフなどの材料になるらしい。