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75 貴族と王都のダンジョン 4

「さてと、ザコは片付いたわけだが……どうする? 逃げるか?」


 私は残った1人に声をかける。

 こいつだけ他の奴らとは比べ物にならないほどの高レベルだったし、さっき雑魚どもが私たちを包囲している時も1人だけ一歩後ろに下がっていた。


 〈鑑定眼〉にて対象はエルフで180歳、レベル82となっている。


 ここはレベル50越えで『こいつ人間じゃ無ぇ』とか言われる世界だ(エルフですけど)。なぜこんな奴が盗賊をやっているのか疑問である。雇われ用心棒とか……ではないな。

 さらにこのエルフの男性は見た目は小汚くしているが、他の奴らと違い、体臭が余りしない。それなりに清潔にしているであろうことが一目――一嗅ぎでわかる。


 装備も汚れているように見えるが偽装だろう。匂うぞ、装備品から金の匂いがプンプンするぜぇ。


「引くわけにはいかない」


 静かにそう言うと男は、スッと剣を構える。

 その剣も、鞘は汚し塗装がしてあるのに、剣本体の方はちゃんと磨かれている。


「ノワール様、私が相手をしましょうか?」

「いや、私がやろう。ソレイユちゃんは皆と一緒にそっちに倒れている9人を縛り上げておいてくれ」

「は、はい」


 そう言ってこちらに寄ってきていたソレイユちゃんを皆の方にやり、距離を少しとる。さすがにレベル82の相手はソレイユちゃんでは無理だろう。


「悪いな、で? 名前くらいは聞いておいた方がいいかな?」

「ウィルズだ。」

「…………ノワールという。」


 マジで名乗ってくれるとは思わなかった。思わず名乗り返しちゃった。


 ガッ!


 地を蹴り一瞬で距離を詰めてくるウィルズ。そして横なぎに振るわれる剣は……淡く発光している!


 ギンッ!


 構えた剣で受け止めたが、相手の体格と速度から予想される以上の衝撃が来て、あわてて足を踏ん張り耐える。


 なんだ!?


 〈鑑定眼〉を始動すると魔剣【ベイラール】と出た。能力は【斬撃能力上昇】【スピード上昇】【魔力強化】。

 ――違う、これじゃない


 鍔迫り合いなどはせず、すぐに距離をとり再接近してくる。

 ならばいい、こちらも相手も剣の長さ――リーチはほぼ同じだ。魔剣といっても突出した能力のない武器ランクBの物なので数度打ち合った程度では差が出るようなこともない。


 接近してきたところを今度はこちらから仕掛ける。剣を縦から斜めに振り下すとウィルズは少し体をずらしただけで躱す。紙一重というやつかもしれないが……バカめ!


 レベルに物を言わせ剣の軌道を無理やり変える。通常ではありえないほどの急激な軌道の変化に、ウィルズが目を見開く。――と同時にこちらに向けていた剣を軌道修正して受ける。

 酷く耳障りな音がする。ウィルズがうまく剣を滑らせてこちらの力を逃がしたみたいだ。


 それから数度の剣戟。


 クソッ! こいつ強いぞ!


 レベルはそこまででもないのに(私視点で)、剣の腕が突出して良い。さらに、見た目よりも一撃が重い。


 ウィルズが再度、離れようとバックステップを踏むが、甘いわ!

離れようとした瞬間、私も地を蹴り、ウィルズに追随する。ほぼぴったりと寄り添ったまま移動していく――


 移動中に目を走らせる。

 ――魔装……【重量軽減】【防御力上昇】

 ――指輪の魔道具……【腕力上昇】……一撃が重いのはこれか


 思考していたら、ウィルズが止まると同時に剣を構えた。マズッ! こっちは止まる準備をしていなかったのでそのままつっこむ形になった。


「クソッ!」


 あわてて体をひねってかわす……が、今度は相手の方がそのまま剣を横滑りにして来た。

 クソッたれと悪態をつきながら、体をひねった反動で剣を振り上げる。


 両者の剣が弾かれ私は体勢を崩したまま……て、このまま終わるかよ!

 片腕で剣を保持し、もう片方の腕で地面を(つか)む。


 ベキィッ!! という音と共に指が石造りの地面にめり込む。そのまま腕力を使って、地面を支点に回し蹴りを相手の頭めがけて放つ――――が、


 ごきぃッ!


 なんとウィルズは片腕で受け止めやがった。

 ――いや、鎧がひしゃげているので完全に受け止められてはいない。変な体勢で放った力の乗っていない一撃でこれである。

 ウィルズはもう片方の手で、……て、お前、剣はどこだよ!


 地面に刺さって放置されている剣を見つつ、脚を掴まれ、そのまま、力任せに壁にたたきつけられる。地面を掴んだ指で踏ん張ろうとしたが、一瞬遅く、すっぽ抜けてしまった。


「――っ!」


 レベルや鎧のおかげで体にはそこまでダメージは無かったのだが、運悪く頭をぶつけてしまった。


 痛っ――くないな。

 すぐに意識を相手に戻すが――ウィルズは何故か後ろを振り返り



「お嬢様っ!!」


 ウィルズの投げたナイフがアリシアさん――をかばって前に出たカーマインさんに吸い込まれていく。



「なっ! テメェ!!」


 私はその光景を、頭のどこかで間に合わないと理解しつつも、怒りが込み上げてくる。


 やめろ! 仲間に手を出すな! ぶち殺すぞ!


 そのまま力任せに踏み込み剣を振るう。ウィルズは流れるようにこちらを振り返り――その途中で剣を手に取り――


 剣戟交差


 ぶつかり合った両者の剣が半ばから砕ける。


 その砕けた破片を横目で見つつ、剣を手放し――右フック!

 ウィルズは先ほど回し蹴りを受けた腕はすでに機能しておらず、逆の腕で防御し――鎧ごと腕を砕かれる。


「ぐうっ!!」


 ウィルズは苦悶の表情を浮かべるが、――この程度で許すわけねぇだろ!!

 そのまま砕けた腕をつかみ、地面に叩きつける。


 大きな音と共に地面がひび割れ、掴んだ相手の腕が折れたところから裂け、血が飛び散る。


 そのままウィルズは意識を失い、私は勝利した。


 ぉっしゃぁ――!!

主人公さん多少手こずってますけど一応理由があります。

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