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08 冒険者ギルドへ

 町並みは、まんま転生前に想像していた中世ヨーロッパな感じだろう。情緒(じょうちょ)があっていいよね。ただ違う所もある。そこかしこに、猫耳や犬耳などを生やした人や、耳の長い……エルフだろうか? などの亜人(あじん)が当然のように歩いている。まあ、普通の人間が一番多いが、いかにも異世界って感じだ。うおー テンションあがるぜ。

 さて冒険者ギルドへ向かおう。……場所がわからないな。周りを見ても別に看板や案内板などはない。


「……どこかで正直に聞くか。」


 とりあえず、そこら辺の屋台で食べ物でも買って冒険者ギルドの位置を聞きつつ、銅貨の価値も確かめたいな。


「どこかいい所は……」


 いくつか屋台を見て回りつつ人のお金の受け渡しを横目で見てと――ふむ、屋台や店の文字も読めるな。おそらく書くこともできるだろう。なるほど、異世界だけどちゃんと言葉は通じるし、読み書きもできる。すごいな異世界。日本にいたころ英語で苦労していたのが嘘のようだぜ。


いくつ目かの屋台で結構いい匂いをさせている串焼肉を売っている店を見つけた。看板には――


「1本30フラムか。ここでいいか。――おっちゃん、1本いただきたいのだが」

「あいよ。1本ね。30フラムだ。……はい毎度。お釣りの大銅貨7枚ね。」


 小さい方の銀貨を1枚渡すと串焼肉1本とお釣りの大きい方の銅貨を7枚渡してきた。


「ありがとう。あと、冒険者ギルドの位置を訪ねたいのだが」

「ああ、それならこの大通りをまっすぐ行ってつきあたりを右に曲がったところにあるよ」


 大きな通りを指差しながらそう言ってくれた。


「そうか、ありがとう」


 そう言って屋台を離れる。

 串焼肉を食べながら――うまいなこれ。……そういやこっちに来てから初めての食事になるのか。空腹もいいスパイスになっている。

 とりあえず、お金の価値は大銅貨=10フラム=100円くらい、 銀貨=100フラム、大銀貨=1000フラムということが分かった。なら小さい方の銅貨は1フラムといったところか。金貨は10000フラムか。それ以上の硬貨の存在は不明だな。まあ、予想通りなら金貨1枚で10万円ぐらいの価値があるからそうそう必要になることもないだろう。


 その後、ようやく冒険者ギルドにやってきた。結構大きい建物の正面に両開きの扉があり、開きっぱなしとなっている。

 中に入ってみると、なるほどいかにもな感じだ。入ってすぐに広い空間。その奥に受付と(おぼ)しきカウンターが5つあり、さらにその横にはちょっと広めのカウンターが1つあった。こっちは買取専用との看板がある。あと、右手に酒場らしきものが併設(へいせつ)されている。おそらく飲み屋兼仲間との待ち合わせに使用するんだろう。今も何人か人がいるしな。

 とりあえず受付に行くか。……いま受付にいるのは2人。あとの3か所は人がいない。まあ、暇な時間帯なんだろう。さて2人といっても、若い女性と初老の男性だ。これは若い女性の受付一択ではないだろうか? しかも金髪巨乳。これはぜひお近づきになりたい。ムスコが逝ってしまったのでナニもできないんだけどね。


 受付へ行くと、金髪巨乳受付嬢が微笑みながら挨拶をしてくれた。たぶん初顔だと分かったんだろう。


「ようこそ冒険者ギルドへ。」

「すまない、冒険者登録をしたいのだが。」

「では、登録手数料が100フラムと、……こちらの用紙へ記入をお願いします。」


 そういって、紙を渡された。

 とりあえず先に銀貨1枚を渡してから、……なになに、氏名に年齢、性別は普通だな。あとは、使用武器とか魔法が使用できるか、スキルの有無などの項目だな。うん、冒険者っぽい。っぽいんだが、


「これは、すべて記入しなければだめなのか?」

「いえ、必須なのは名前のみです。それ以外の個所については記入しなくてもかまいません。ただ、パーティーを探す際の条件や、依頼主の要望があったりするので記載しておいたほうが何かと便利かと思います。」

「ふむ、そうか」


 とりあえず氏名、年齢、性別、種族のみ書いておくか。それ以外はいいや。特に今のところパーティーを組む予定もないしな。

 名前は斉藤――て違う!危うくまた間違えるところだったぜ。自分はノワール、18歳、狐人族の女性です。サンハイ!自分は女性です。……よし、間違えないようにと、書き書き。


「ではこれを」

「はい。では登録しますのでって、あら、亜人種の方だったんですね。」

「ああ、そうだが、何か問題でも?」

「いえ、フードで頭を隠していらっしゃったので。耳が頭の上についている亜人種の方はフードなどをかぶると耳をふさいでいるみたいになって嫌だ、と以前聞いたものですから」

「ああ」


 なるほど、と思いつつフードを取る。


「え、黒い? あの、狐人族で間違いないですか?」

「間違いないが?」

「そうですか。……それでは登録しますので少々お待ちください。」


 そういって奥へ行ってしまった。なんだったんだろうか?

 あと、フードを取った際に何人かいた冒険者らしき人がこっちを見てきた。なんだろう、テリアさんの言うとおり女だからなめられているのかな?

 などと思っていたらすぐに受付嬢が戻ってきた。そしてA4用紙ぐらいの黒い板を取り出して目の前に置いた。


「こちらに手を置いてください。」

「こうか?」


 板に手を置く。よく分からんな、何のための行為だろう。指紋でもとるのか?

 すると何か手のひらから板のほうに移動するような感覚があった。


「はい、もういいですよ。ではこちらがギルドカードとなります。」


 と言って、名刺大のカードを渡された。そこには名前とレベル、あとFランク冒険者の文字が記載されていた。……ん?


「すまない、レベルは教えた覚えがないのだが、どうして記載してあるんだ?」

「……この板がレベルの計測と魔力登録を行ってくれるからですよ。」


 そう言って、先ほどの黒い板を指した。


「こちらのカードは冒険者ギルドに登録した証明とともに身分証ともなります。あなた個人の魔力を登録してありますので他人には使えません。また、失くされますと再発行に5000フラムかかりますので失くさないようにしてください。」


 ああ、なるほど。異世界おなじみ謎技術ってやつか。この辺は考えても仕方ないんだろう。あと、レベルのことを言う際に受付嬢さんが微妙な表情になっている。たぶんレベルが低いんで冒険者としてやっていけるかどうか気にしてるんだろう。


「では次に冒険者ギルドについてですが――」


 そのあとは、冒険者ギルドについての詳しい説明を受けた。

ランクの説明につては、この街に来る途中に聞いていた内容と変わりなかったため少し退屈だった。その後は依頼についてだが、依頼は左手の壁一面にでかでかとあるボードに依頼用紙が張り付けてあり、依頼用紙に推奨ランクも記入してあるが必ずしも推奨ランクの依頼を受けないといけないということはないらしい。ただ、推奨ランクは依頼主とギルドが決めたもので、あまり上のランクの依頼を受けるのは無謀(むぼう)、下のランクを受けるのは、下のランクの冒険者の仕事を奪うことになるため他の冒険者に(にら)まれることになる。結局、推奨ランクの依頼を受けるのが一番いいとのことだ。

 あと成人していれば、5つ依頼を達成するだけでFランクからEランクへすぐ上がれるらしい。ただその際に、それとなくレベルを上げておいた方がいいといわれた。まあ、いまLv3ですからね。しょうがないよね。

 そのほかにはギルドは冒険者同士の揉め事には介入しないとか……まあ、この辺は予想通りだろう。あとは、こまごまとした注意事項だが、正直いっぺんに言われても覚えきれない。そもそも、普通にしていれば、あまり関係ない事柄だったので右から左へと聞き流していた。


「それでは改めて、ようこそフォルオレン冒険者ギルドへ」


 説明が終わって歓迎だろう言葉が投げかけられた。


 さて、とりあえずどうするか。もうおそらく昼も過ぎているだろう。なら今日はもう、宿などを探してさっさと寝てしまったほうがいいだろう。

 そう考えると、フードをかぶり直すと冒険者ギルドを出て行った。


 そのすぐ後、


「その前に服を買っておいたほうがいいよな。」


 そういえば忘れていたが、今マント一枚の中はワンピースを着ているだけだった。下着すら着ていなかった。男なら完全に変質者じゃないだろうか。


「……とりあえずは下着か……下着か……」


 女性用下着なんかどうやって買えばいいんだ? 買ったことないぞ? それに服もそうだ、日本にいたころは適当に選んでておしゃれとは無縁だった。まあ、別におしゃれをするわけではないからそっちはいいか。冒険者だし動きやすい服装のほうがいいだろう。……冒険者といえば、防具はどうしよう? 武器はゴブリンのところで拾ったショートソードがあるからいいけど……。ギルドにいた人たちも革鎧や金属板みたいなものを胸や腕、脚につけていた。なんだかああいうのって高そうだな。所持金足りるかな?

 うんうんうなりながら目当ての店を探して街を歩いていて、最初に女性用下着を売っている店を見つけたんだが……


「こりゃだめだ。」


 ピンクのフリフリだった。日本ほど質がいいものではないが、それでも完全に女性の空間だ。男子禁制。もう早々に諦めて店員さんにお任せしてしまった。とりあえず5日分の下着。冒険者をやっているので動きやすいものがいい。と言ったらすぐ持ってきてくれた。ああそういえばブラジャーなんてものもありましたね。じゃあそれも同じだけお願いします。

 採寸する際にマントを脱いだんだが、狐人族だと分かると驚かれた。なんでだろう?

 とりあえず下着は店員さんのおすすめを購入できた。亜人種用らしくショーツにはシッポを通す穴が開いていた。なるほどこういう構造になっているのか。フムフム。そういや、ブラジャーのつけ方なんて知らないな。と言ったら驚かれたが、その後店員さんが丁寧に教えてくれた。自分で自分にブラつけるとか……。まああれだ、いつの日か彼女のブラをやさしく外してやるための知識と思えば…………無いな。


 次は服屋だ。幸い下着店のすぐ隣にあった。

 服も女性用なんてわからないので同じように店員さんにお任せしてしまった。同じく5日分、動きやすいものを店員さんに選んでもらった。……動きやすいものといったのになぜスカートを選ぶんだろうか? ズボンとか無いの? ある? じゃあそっちにしてよ。――後で知ったことだが完全に店のチョイスを間違えていたようだ。ようは、冒険者用の実用的な服屋ではなく女性用のちょっとおしゃれな服屋に行ってしまっていた。ちなみに下着のほうもおしゃれな下着専門店だったようだ。つまりこの周辺が、冒険者とは関係ない女性向けの店の集合地帯だったらしい。

 

 洗面用具なんかも購入しておいた。タオルとか必要だしね。ただ、この世界にも歯ブラシはあったのがびっくりだ。といっても、日本みたいに大量生産使い捨てじゃなくて、結構お高いものだが。持ち手は木でできておりブラシ部分は植物の繊維をばらしたような感じだった。あとは、長期の依頼用に水筒なんかも必要だな。あとは――

 そのほか、冒険者として必要なものをうんうんと考えながら歩き回っていたら、結構な量の買い物をしてしまった。


 これで最低限の買い物は終了したわけで、あとは宿屋だ。だがそこも抜かりない、買い物をした店で女性におすすめの宿を聞いておいたのだ。

 おすすめは門より冒険者ギルド側に近い通りにある『小ウサギ亭』という宿屋だ。大通りに近いため治安が比較的良いらしい。あと、ウサギってこっちの世界にもいるんだな。

 宿の中に入るとカウンターに誰もいなかったので、


「すまない、誰かいないだろうか」

「あ、はーい」


 奥に向かって声をかけると、返事があり恰幅(かっぷく)のいいおばちゃんが小走りでやってきた。小ウサギって感じじゃないな。


「すまない、泊まりたいんだが」

「はいよ、1人かい。何泊だい?」

「とりあえず5泊したい」

「5泊なら素泊まりで2500フラム、朝夕の食事有で3000フラムだけどどうする?」

「食事有で」

「はいよ、部屋は2階の奥、鍵はこれね。朝食と夕食は言ってくれれば作るから。」


 そんなやり取りをした後、自分に割り当てられた部屋に行く。部屋にはベッドと机、椅子がそれぞれ置いてある。日本のホテルを知っている身からすれば多少質素だがまあこんなもんだろう。

 今日の買い物と宿代で、ゴブリンのところから持ってきたお金がほとんど無くなってしまった。防具の金額がどの程度なのか知らないが、おそらく買う金はないだろう。明日から、依頼を受けて稼いでいかないとな。

 そう思いながら、夕食をとるため1階へ降りて行ったら、結構にぎわっていた。やはり女性にお勧めだけあって女性の姿が結構あるな。

カウンターに座りながら、さっきのおばちゃんに食事を注文する。

 そういや、何気に異世界に来てから初めてのちゃんとした食事だなとか思いながら、食事をとっていたらあっという間に平らげてしまった。思ったより腹が減っていたようだ。味付けが少々薄かったがうまかった。うむ、満腹になったのでもうさっさと寝てしまうか。……まて、風呂はどうする。この体だ。堂々と女湯へ入れるかもしれん。へへへ。

 ……宿屋のおばちゃんに聞いたらそんなもの貴族や金持ちしか入らないといっていた。平民はタライに水はって体を拭くのだそうだ……お、女湯が……


 そうして異世界2日目は過ぎて行った。


お金の話は作中に出てくるとおりです。

10円=1フラム=銅貨ぐらいを考えています。

銅貨→大銅貨→銀貨→大銀貨→金貨→大金貨→白金貨(10枚で次の硬貨に上がります)

大金貨、白金貨は王族や貴族の貯蓄用や大物取引用で一般流通はしていないという設定です。


あと作者は男ですので女性用下着とか服とかよくわかりません。

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