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73 貴族と王都のダンジョン 2

「おお~」

「わぁ、結構雰囲気が違いますね。ノワール様」


 ようやく着いた6階層。アリシアさんたちは前にダンジョンに潜った際に、見るだけ見て帰って来たそうだが、私たちはここを見るのは初めてだ。


 石造りの回廊が伸びている。5層までは岩肌がむき出しの所だったから、いきなり室内に入ったみたいだ。

 窓やランプなどないくせになぜか明るいのだが。


 そんな目新しさもあったのだが数時間もすると飽きてくる。1~5階層と同じくそれなりの広さはあるのだが、やはり石造りのためだろうか室内のような圧迫感がある。



 と思っていたが、思ったよりは退屈しなさそうだった。

 さっきから〈気配察知〉に引っかかるものがある。おそらく人間だろうが、それらは一定の距離を保って付いてくる。

 まあ、ここはダンジョンだし、いまだに低階層だ。他の冒険者たちという可能性が大だろう。というか最初は私もそうだと思って無視していた。


 だが本当に一定に距離を保っているのだ。同じ角を曲がり、小休止をはさめば向こうも止まる。

 おやこれは? と思っていると、前からお客さんが来た。


「この階層初めての魔物ですわね。」

「お嬢様、油断なさらないように」


 アリシアさんとカーマインさんが即座に武器を構える。前にいるのはコモドオオトカゲのような魔物だ。少し違うのは背中に石が張り付いたみたいになっている点だろうか。鑑定してみると『岩トカゲ』というらしい。岩トカゲ……英語で言うとロックリザード……。でも違う生き物らしい。まあ見た目から大きさまで何もかも違うのは見ればわかるが。


「行きますわよ! てぁ!」


 キィン! という音を立ててレイピアが弾かれる。


「あ、あれ? てぁ!」


 また、同じように攻撃を繰り出すが、魔物も先ほどと同じように背中で受ける。そして甲高い音をさせて攻撃が弾かれる。


「え? あれ?」

「ププー、お嬢様大丈夫ですか? 攻撃しょぼいですね。」

「カーマイン! 何笑っているの!」


 岩トカゲの本領はその防御力の高さだ。特に岩のようになった背中の防御力が高い。


「あ、あの、私も参加しましょうか?」


 ソレイユちゃんが、後ろから声をかけるが、アリシアさんは手出し無用だとばかりに手で制す。


「この程度私1人で十分ですわよ」

「攻撃、二度も弾かれましたけどね~」

「うるさいですわよ、カーマイン! ほら、あなたも攻撃しなさい」

「一人で十分なのではなかったのですか?」

「だから、うるさいですわよ! 行きますわよ。はぁっ!」


 仕切り直しとばかりに、レイピアを上段から振り下す(・・・・・・・・)

 レイピアは鈍い音と共に、岩トカゲの体に食い込み、


「あ、あら? このっ!」

「ギィィィィ!!」


 レイピアは岩トカゲの体に食い込んだまま抜けなくなってしまったようだ。岩トカゲの方も体に食い込んだ剣の痛さに暴れまわろうとしている。今のところはアリシアさんが力で押さえつけているようだが、変な方向に動かれると剣が折れるかもしれない。


「ちょっ、ちょっと待ちなさい! こらぁ、暴れるな! カーマイン、助けなさい!」

「分かりましたから、ちょっと待ってくださいね。」


 そう言うと、アリシアさんがレイピアを食いこませたまま、何とか押さえつけている岩トカゲの正面に回り、頭部をメイスで殴る。


 ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ!


 2発ほど殴ったら、岩トカゲは暴れるのをやめ、さらに1発殴りつけると、岩トカゲは死んだらしく、黒い霧となって霧散してしまった。ぴぴるぴるぴる~


「キャッ!」


 アリシアさんは力をかけて押さえつけていたものが急に無くなったのでバランスを崩していた。


 ◇◇◇


 硬質な音を立てて、レイピアの攻撃が弾かれる。


「カーマイン! カーマインンンンッ!!」

「はいはい、少し待ってください」


 出てきたのはゴーレムだ。といっても以前ティーアの居た遺跡にあったような馬鹿デカイ奴ではなくて、成人男性程度の大きさのものが一体だけだ。

 ゴーレムというのは、パワーと防御力は凄いがスピードはほとんどないため、よほどステータスに差がある場合を除き複数人で囲んでボコにすれば基本何とかなる。

 実際今もアリシアさんがゴーレムの気を引き、カーマインさんがその隙にゴーレムをメイスで削って行っている。


「あら、もう一匹来たわねぇ」

「そうですね、では私たちはあちらを」


 アリシアさんたちの戦っている後ろから、もう一体のゴーレムがやってくる。別に群れていたとかではなく偶々(たまたま)だろう。

 後から来たもう一体の方は、ソレイユちゃんとティーアが対応する。といっても、レベル的にはソレイユちゃん1人でも問題ないのだが。


 ……暇だ。私の出番がない。まあ、まだ低階層だし。

この辺りなら、敵がよほど大量に出てこない限り、私の出番はないだろうが。


 この階層は岩っぽい魔物が多い。イコール防御力高めということだ。レベルと武器があればそこまででもないのだが。

 実際カーマインさんも問題なくゴーレムや岩トカゲを倒せていたし、アリシアさんだって、レイピアの疲労を無視して力いっぱい叩きつければ多分倒せる程度だ。


 といってもアリシアさんはレベルが低い上、レイピアをちゃんとした使い方で使っているため攻撃が通らず手こずっているが。

 アリシアさんのあのレイピア捌きは、メリノ君みたいに人から指導を受けて培った物だろう。動き方や力加減が人間を相手にする時と同じだ。人型の魔物ならまだいいが、格上の人型から離れた魔物等に遭遇したらどうするのだろうか。



 その後は特に何事もなく――まあ、アリシアさんの攻撃が通りにくかったがカーマインさんと連携すれば問題なく敵を倒しながら――セーフティーエリアについて夜営となった。

 昼間はあまり冒険者とすれ違わなかったが、夜が近くなるとセーフティーエリアにはなかなかの数の冒険者グループがやって来た。やはり1階層ごとが広いため、数がいてもあまりすれ違ったりしないのだろう。

 まあ、1~5階層まではここの比じゃないほどの冒険者がいるためそれなりにすれ違っていたが。


 そう言えば魔物の対応で忘れていたが途中で〈気配察知〉に引っかかっていた人たちは一体なんだったのだろう。まさか本当に行き先がたまたま同じ人たちだったのだろうか?


 そうして本日もあらかじめセットされたテントを出し、見張りの順を決めて食事をとった。


「このお肉、わりと美味しいですわね。」

「まあ、今は出来合いだからな。それが尽きたら、料理をしなくちゃならないが」

「以前食べた保存食はあまりおいしくなかったですからね。」


 そうして次の朝になったら、テントをしまって出発――


「ちょっと待ちなさい!」

「はい? 何だ?」


 アリシアさんに呼び止められ、そうしてお肌をプルンプル~ンにメイクした後出発となった。

いまさらですが「武器ランク」の補足説明

 A:人間では作れない聖剣や魔剣

 B:超一級品

 C:非常に良い品

 D:一般的に出回っている品

 E:なまくら、安物

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