72 貴族と王都のダンジョン
本日2話目ですね。前話と同じ時間に投稿しています。
サブタイがちょっと微妙ですので後で修正するかも?
「おう、お嬢ちゃん達、久しぶりだな。どうしたんだ、今日は随分と立派な鎧を着こんでるじゃないか。」
ダンジョンの入り口受付にいた受付のおっちゃん――40歳ぐらいと思われるタンクトップ一枚のムキムキのおっちゃん――が声をかけてきた。このおっちゃんは若いころは冒険者としてダンジョンでブイブイいわせていたらしい。その後、引退してギルド員として受付の仕事をやっているという。(本人談)
このおっちゃんとは以前、日帰りでダンジョンに潜る時やギルドの方でもたまに会っていた。毎回日帰りということと女性3人組ということですぐに名前を憶えられて、2回目以降会ったら気軽に声をかけてくれる。
「いや今回はね――」
そう言いつつ、用紙に必要事項を記入していく。
「ほう、『高潔な乙女達』ねぇ。パーティー名が決まったんだな、おめでとう。そっちのが新パーティーメンバーか?」
「ええ、そうですわ。私はアリシア――
「はい、こちらのノワールさんたちとパーティーを組ませてもらっております。」
「ちょっと、カーマイン!」
「お、おう、そうかい。それにしても女性5人組みとはまた珍しいパーティーになったもんだ。それに…………40階層。本気か?」
一応用紙には40階層まで潜るということを書いたのだが非常に驚いた表情をしている。
「パトロンが見つかったんだ。それで装備も揃えられたしな。」
そう言って剣などの装備を見せるように示す。
「ほう、いいねぇ。向上心のあるやつは歓迎だぜ。最近の若い奴は手堅く稼ごうとして深階層まで行こうとしねぇ。まったく嘆かわしいぜ。」
「そうなのか」
聞けば、最近は30階層以下に行く者はいなかったそうで、かなり久しぶりなのだそうだ。低階層や中階層程度に行って手堅く稼ごうというやつばっかりになってしまったと少し寂しそうにしていた。
そんな話をしながら、いつも通りギルドカードを見せる。顔見知りだが、一応ギルドカードで確認することはここの規則で決まっている。
「ほう! ゴールドカードか、久しぶりに見たぜ」
「見たことがあるのか?」
「ああ、あれは俺が若いころだったかな――」
なんでも冒険者をやっていた10代の頃に、エルフの戦士の一団がダンジョンに腕試しに来たことがあったらしい。その戦士の一団を率いていたパーティーリーダーがこのゴールドカードを持っていたそうで、おっちゃんはその時にちらっと見たらしい。
「――結局そのパーティーは戻ってこなかったんだけどな。」
なんでも当時のレコードを更新するために来た一団だったらしく、深階層へ挑戦したらしい。だが戻ってはこなかったという。
「嬢ちゃんたちも無理はすんなよ。やばいと思ったら引くことも大事だぜ」
「ああ、分かっている。私だって死にたくはないからな」
「ははは、ちがいねぇ」
「ティーアちゃんにソレイユちゃんと……相変わらずすげえレベルだな二人とも」
「フフフ……」
「あ、ありがとうございます」
「それに、アリシアちゃんにカーマインちゃんか……」
「カ、カーマインちゃん!?」
どうやらカーマインさんの方はちゃん付けされるのに慣れていなかったようだ。思ったより驚いて赤くなっている。
しかし、おっちゃんの方は渋い顔で、
「おいおい、二人の方はこのレベルじゃぁ……」
「分かっている。途中でレベル上げもしながら潜っていく予定だ。なに、危なくなったらとっとと逃げるよ」
「うーむ、まあ、さっきも言ったが無理はすんなよ。お嬢ちゃん達もいっぱしの冒険者なんだしこれ以上は言わないが」
「ああ、心配してくれてありがとう」
そう言って受付での手続きを終えて、いざ出発となった。
◇◇◇
「アリシアさんたちのレベル上げも兼ねているので、低階層はアリシアさんたちを先頭に行きます。」
「ええ、構いませんわ。」
アリシアさんたちのレベル上げも兼ねて、低階層の魔物はアリシアさんたちの任せることにした。そのためアリシアさんとカーマインさんが一番前、その後ろがティーアとソレイユちゃん、そして最後が私となっている。私が最後なのは決して逃げやすいようではない。他のメンバーはレベル上げの必要があるが、おそらく私はこれ以上レベル上げする必要ないだろうと思い、支援係に回った結果だ。あとは後方からの不意打ちに対するためだろうか。
なぜ私は支援係なのに前衛装備なのか? カッコいいからだ。全身鎧という、この中で一番前衛らしい装備でもだ。
5階層までを1日半で踏破した。最短ルートで行ったためで、魔物との会敵も10回ほどでアリシアさんたちが問題なく対処した。ネズミと蛇の魔物で非常に弱いが、意外とすばやくて苦労したみたいだ。
3階層以下は私は初めて来たが、1,2階層と変わらなかった。冒険者の数もそこそこで魔物の数も少なかった。
運がよかったのは最初に会ったネズミの魔物が【げっ歯類の牙】というドロップ品を落としたことだろう。非常に小さく売値も安いが、ドロップ品は落ちない時の方が多いので、幸先のいいスタートとなった。
全身鎧による行軍は思っていたほどではない。レベルやスキルの恩恵だろう。肉体的な疲労は特にない。1日以上同じような景色の中を延々と歩き続けたのだから、精神的には少し疲労したが。
夜営は5人は入る大きめのテントをセットしたままアイテムボックスに放り込んでおいたためテント設営とかの手間もなし。アイテムボックスの時間停止により食事もできたてのものを食べた。
ムフフ、ブルジョワ~。
◇◇◇
「まぁ! 女性なのですからノーメイクなど見せられませんわ」
「いや、私たちは冒険者だし……最低限のことはやっていますよ」
「わ、私は元奴隷ですし……お化粧とかは……」
「あら、私はいつもしてるわよ?」
え!? 初耳だよ。ティーア何時の間にメイクとかしてたの?
ティーアはリリスという種族特性上外見は重要ということで、今までもちゃんと自分でやっていたらしい。
アリシアさんに朝起きて出発する前に、基礎化粧品によるお肌のケア講座を受けることとなってしまった。
いやさすがに、最低限のケアは本当にやっていたんだよ。ただ冒険者だからそれほど必要性を感じなかっただけで。それに私、自分で言うのもなんだがすっぴんでもイケメンだし~……イケウーメンというのかな。
さすがに口紅やらアイラインやらのガチメイクはやらない。ダンジョンでそんなことして何になるのか。
アリシアさんとカーマインさんにより、私とソレイユちゃんがお肌をプルンプル~ンにされてしまった。
「毎朝この程度はやってほしいですわね」
「は、はぁ……」
そうして私たちは出発する。
主人公たち5人とも1人称が私なのでセリフが続くと分かりにくい……
(一応、アリシアさんは「わたくし」なんですがルビ振るの忘れたorz)
追記)時系列を修正(エルフのパーティーが来たのは48階層レコードの前なので48層の記載を削除)