70 準備の買い物
主人公の装備などの説明回です。
私、ソレイユちゃん、ティーア、アリシアさん、カーマインさんの5名で短期のパーティーを作成する。今回はアリシアさんが成果を持ち帰るという意味もあり、彼女がリーダーとなっている。パーティー名は『高潔な乙女達』でギルドに登録する。命名はアリシアさんだ。複数形だからズがいるのじゃないかと思ったのだが、パトロンなので「いいパーティー名ですね」とヨイショしておく。
ギルド内でアリシアさんたちが離れた頃を狙ってギルドマスターがスススと寄ってきて小声で話しかけてきた。
「お嬢ちゃん達、あの貴族の子らとパーティーを組んで30階層まで行くんだって?」
「あ、ああ」
「冒険者は自己責任とはいえ、貴族のお嬢ちゃんだけは死なせないようにしてくれよ。面倒だからね」
「……分かった。もとより誰も死なせるつもりはないしな。」
貴族が死んだら面倒だというのは何となく分かる。
まあ、死んでも蘇生魔法使えるんですけどねー。まあ、私が死んだら蘇生も回復もできなくなってしまうが、よほど舐めプしなければ大丈夫だろう。レベル的に。そして私はやる気満々だ。あまり冒険されていないダンジョンの深階層で宝探しとか男……乙女心をくすぐられる。
まあ、回復のポーションとかは買っておいてもいいかもしれない。高価だからそんなに気軽に使えないだろうけど。
◇◇◇
さて武器防具に衣服類はパトロンであるメリノ君のお金で買うことになる。メリノ君から手形のようなものをもらいそれで買い物をしていく。それは、要はフーカ公爵が後で払うのでツケで買い物をするという証書だ。一応メリノ君が動かせるお金というのはそこまで多いわけではない(本人談)ので限度額というものを聞かされたが。あと、証書は未成年のメリノ君は発行できないのでメリノ君の母親が発行してくれたようだ。
ちなみにだがメリノ君の母親は王都の王城や行政区画で働くエリート官僚だそうだ。
私の装備は何と今回はフルプレートアーマーだ。といっても中世のガチの全身金属鎧ではなくゲームやアニメなんかに出てくるデザイン性重視の鎧だ。だから正確に言うとフルプレートではなく金属鎧と革鎧の合いの子みたいな感じだ。
まず肩装甲がパッドを入れたように大きくなっている。さらに関節には革が多用されておりガチ金属鎧よりは動きやすそうだ。腰部分なんかも革が多用され側面は複数の金属板を互い違いに重ね可動部分を確保している。下半身は何とスカート状だ。モ○ハンの女性用鎧にこんなのがあったと思う。無論革と金属を重ねてある程度の防御力を確保してある上に、股関節部の稼働も問題ないようだ。
脚甲の方も革を多用しており、つま先立ちができる程度の稼働が可能であった。
なお兜は頭飾りのようなものであったが、店にあった鎧は人間用であり、人間とは耳の位置が異なる私には合わなかった。なので兜は無しとなった。
武器は鎧とセットの両手剣だ。デザインを鎧と統一しているために非常に見た目が良い。一応武器としてもそれなりの性能だという。
色は白を基調に金の縁取りが入っておりオシャレなのだが、私的には黒の方が好きなので、黒色のデザインのものは無いかと尋ねたが、この鎧はここにある一着だけらしい。
なんでも女性の軍高官の式典用という非常に限定された用途に対し作成したらしいが、そもそも女性の軍の高官なんて数えるほどしかおらず、しかもそう言うのは皆貴族でお抱えの職人がいてオーダーメイドとなるため、どんな大店でも既製品である物は買わないらしい。
なので、今来ている王都でも有数の武器屋という所では作った後、店内のインテリア兼にぎやかし要員として飾られていたらしい。
作る前に気付けよと思わなくもない。
こうして私はこのオシャレな白い全身鎧を手に入れた。
この世界のいいところはこんな外から見れば非常に厨二クサい白い全身鎧の格好をしていても奇異の目で見られないところであろう。地球ではコスプレイベント以外でこんな恰好したら痛い目で見られるしな。
ティーアの方はワンピースというよりチャイナ服のような上下一体の服だ。といってもスカートの両側に大きなスリットが入っており、スカートというよりは前垂れみたいになっている。胸のあたりにもなぜか切れ込みがあり谷間が見えてしまっている。セクシーではあるのだが、それは普段着としてもどうだろうという服装だ。
お前何処に行く気だよという服装だが、靴はさすがにハイヒールではなくブーツだ。
防具はネックレス型の魔道具を買っていた。見た目はちょっとしたアクセサリーなのだが、薄い防御膜を張ってくれるそうだ。といっても小石の投擲ぐらいしか防げない程度の防御力らしいが。これは戦闘時というよりは、平時に肌の露出が多いので変なところで傷を負わないようにするためだとか。
武器はもちろん鞭だった。
ソレイユちゃんは特に何もない。今までの武器があるからだが。特に追加で購入する気もないという。
あれ? 私達、金使い荒くね? フルプレートアーマーとか魔道具って高いんだよ? まあ、あれだ。メリノ君にはダンジョン産のお土産をたくさん持って帰ろう。30階層以降は貴族も欲しがるようなものがあるというし、最下層レコードである48階層以降も私なら行けると思う。そうすれば、それこそ貴族ですらめったに手に入らないものも出てくるだろう。そういったものをお土産に持っていけばいい。
と、私はとらぬ狸の皮算用を始めていた。
そのほかとしては、ダンジョン内での夜営用品や食料などの買い付けも行った。これについてはアリシアさんも同行したのだが、
「私はアイテムボックス持ちなので大きな荷物であっても問題ないですよ。」
「アイテムボックス持ちなんて珍しいですね」
「あら、そうですの。ならポーターはいらないのかしら?」
カーマインさんは珍しいことを知っていたが、アリシアさんはそっけなかった。
私もアイテムボックス持ちが珍しいなんて設定があるのをたまに忘れそうになる。
「潜っている1~2か月分の荷物ぐらいは問題なく持てますので、ポーターは雇う必要が無いですね」
「すごい容量ですね」
「カーマイン、そんなにすごいの? アイテムボックス持ちなら家にも2人程雇っていたじゃない」
「お嬢様、逆です。伯爵家でも2人しかいない珍しい能力なんですよ。しかも容量もそこまででもなかったですし」
その2人はそれぞれ馬車1台分とタンス1個分程度の容量だったらしいが。一応それでも珍しい能力なので、その能力目当てで雇われていたようだ。
それに対するアリシアさんの反応は「ふーん」だった。
逆に私としては、容量はともかく家に2人ってどの程度珍しいのかわからなくなってくるが。
食料や水などについて、アイテムボックス内は時間が止まっていると推測されるため、生野菜などの生鮮食品なども買うことができる。あと、屋台などで売っている作りたてのの食べ物なども大量購入しておいた。
夜営に使うテントその他の用品やら、寝具、調理器具に火を起こすための薪も忘れない。火種は火魔法であれば私やソレイユちゃんが使えるので問題ない。
なお、地下空間で火を起こしても大丈夫かとも思ったが、今までそういったことで問題が起きたことはないらしい。
以前に初心者がセーフティーゾーンで食事の準備中に煙を充満させたことがあったらしいが、2~3時間後には綺麗に煙はどこかに行ってしまったそうだ。
また一部冒険者は火魔法を使って敵を大量に燃やした際もやはり特に煙がたまるということも息苦しくなるということもなかったらしい。
このことから、ダンジョンは独自の換気システムがあるのではと考えられているのだとか。
そうして必要なものをどんどんと購入していった。
無論、人の金なので記録を付けることは忘れない。面倒だがすべて貧乏が悪いのだ。
地図も忘れてはならない。一応最下層レコードは48階層だが、実用性に問題ない程度にマッピングできているのは40階層までらしい。しかも30階層以下の地図がすごく高価だ。その階層まで行ける人が少ないし、マッピングすら命がけなのだからしょうがないのかもしれないが。
私達? もちろん40階層の地図まで買いましたよ。
まだダンジョンにもぐりません……遠足の前の日に眠れない。旅行は準備が楽しいとかそういうのです。