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62 ダンジョン 2

 ダンジョンの入り口は思ったより広く、3車線の道路ぐらいあった。そこを階段が地下に向かって伸びている。3階分ほどの高さを降りていくと、いきなりホールみたいな巨大な空間があった。明かりは松明やランプではなく天井全体が光っており、蛍光灯のような白い明りが周囲を照らしていた。


 この空間には結構な人がいる。

 持ち物を確認している人や、どういうルートで行くか相談している人たち、今帰ってきたばかりといった感じで座り込んでいる人等

 その他に、統一された鎧に身を固めた人たちが数十人一か所に集まっていた。あれは軍人だろうか。ここに軍人がいるのは魔物が外に出ないように見張っているのかな。

 あと露天商の人たちがいた。地面に小奇麗な布を引いて食料や野営品などを売っている。おそらく買い忘れてダンジョンに入ってきた人たちを対象に商売をやっているのだろう。


 そしてこのホールみたいな大部屋の先には、3つの通路がある。


「いきなり通路が3つあるんだが。」

「最初だしどれでもいいんじゃないかしらぁ」

「地図を買っておいた方が良かったかもしれませんね」


 うーん、ソレイユちゃんのいう通り、地図を買ってから入った方がよかっただろうか。まあいいやと思ってそのまま入っちゃったからな。

 あ、この部屋にある露店に売ってないかな


「すまない、1階層の地図は無いだろうか?」

「へい! ありますよ。100フラムになります。」


 地図としては安いほうなのだろうか?

 最初に声をかけた露店では5階層までの地図は基本100フラムで売っているそうだ。6階層以降は徐々に高くなっていくらしい。

 ちなみに記載内容の詳細さなどにより店によって多少値段が上下するらしい。

 まあ、100フラムぐらいならまだある。

 1、2階層の地図を買い、銀貨2枚を渡す。ああ、残りのお金がさらに心もとなく……


 買った地図はわりと詳細で2階層への階段までの道のほか、分かれ道や、行き止まりの道、部屋のような空間になっているところに、セーフティーゾーンという魔物があまり近寄らないところまで記入してある。縮尺は不明だが、これだけ書いてあれば十分だ。

 あと、正面の3つの通路だがどこから行っても2階層への階段へは通じているようだ。分かれ道の多い少ないはあるが。


 とりあえず最初だし、真ん中の道を行くことになった。

 3人が横になっても歩ける程度のわりと広めの通路なのだが、横に広がるのはマナー違反かと思い、ソレイユちゃん、ティーア、私という順で進んで行く。

 1階層ということと、弱い魔物しか出ないので、一応武装しているがレベルの低いソレイユちゃんを前にして、私は後ろも警戒ということで一番後ろに。だがおそらく、1階層ではティーアと私の出番はないだろうと思っている。


 通路は洞窟のように岩肌が露出しており、昔ちょっと見学に行った炭鉱の坑道みたいな感じだ。

ただ、ここも天井から突き出した岩が光っており、地下空間だということをあまり感じさせない。近くを同じように冒険者が歩いているというのも一因かもしれないが。


 そうして数十分ほど歩いていると、地図にもある最初の部屋に到着した。なおここまで特に魔物には会っていない。

 部屋の中にはすでに5人組の冒険者がいて蛇のような魔物と戦っていた。といっても、魔物側はせいぜい1m程度の蛇が1匹だけなのですぐに決着がついてしまったが。


 見ていると、冒険者が倒した蛇はすぐに黒い霧になって霧散してしまい、その場所には小さな石が落ちていた。あれが魔石だろう。冒険者が拾っている。

 そうして魔石を拾った冒険者たちはさっさと先へと進んで行った。


 こういった広い部屋に魔物が出るのだろうか。出るとしたらどういった方法で出てくるのだろう。ゲームみたいにいきなり現れたりするのだろうか。

 少しこの部屋にとどまってみるが何事もなかった。なおその間に、4組ほどの冒険者がこの部屋を通って行った。


 うーん、出ないな。やっぱり先に進むべきかと思っていたら突然黒い霧が集まってきて徐々に密度を増していく。

 お、これは。と思い眺めているとその黒い霧――もはや濃すぎて黒い塊となっている――は魔物の形をとっていった。

 といってもさっきと同じ蛇の魔物だが。


「おお、ダンジョンの魔物ってこうやって出てくるのか」


 と感心していると、近くに現れた蛇の魔物がこちらにいきなり飛びかかってきた。そしてソレイユちゃんの一突きで霧散した。


「ノワール様、魔石です。」


 そう言ってソレイユちゃんが、倒した蛇の魔物がいたところに落ちた小指の先ほどの大きさの魔石を拾ってくる。

 小っちゃい。これがどれくらいの値がするのか知らないが、一階層の一番目の部屋で出る魔物だ。たぶん安いだろう。


「魔物が出るまで待っているってのは効率が悪いな。先に進むか」

「そうねぇ。一階層なんて魔物より人間の方が多いんじゃないかしらぁ」


 ティーアも似たような意見だろう。一階層なんて雑魚しか出ない上に、すべての冒険者はここを通るんだから、魔物の方が狩られる側になっているんだろうな。

 ヒャッハー! 魔物だー! 殺せー! みたいな。


 なので先へ進んで行く。

 どんどん行く。


 そうして本日の探索は終わった。結果としては1階層を適当に回り、蛇の魔物3匹に猫ぐらいの大きさのネズミの魔物2匹の計5匹が戦果となった。すべてソレイユちゃんが仕留めている。思った通り私とティーアの出番はない。

 なお、日帰りだったので行ったのは1階層のみである。



 戻ってきたことを報告するための受付に並ぶ。そんなに人は並んでいなかったすぐに私たちの番となった。ここで帰ってきたことを報告する。

 一応帰還予定は明日としていたので「お早いお帰りですね」とは言われた。

 報告しなくても罰則はないが、入退場を管理することで、迷宮内の人間の数をおおよそ把握するため、注意は受けることになる。


 受付の横では魔石や素材の買取も行っている。ギルドの出張所らしい。確か、ダンジョンの周りにある店でも買取を行っていたはずだ。どっちがいいのだろうかと思ったが、そう言った店は当たりはずれがあるらしい。なので、とりあえず初心者はギルドで買い取ってもらうのが確実だとか。これがベテランになってくると、高く買い取ってくれる店を選別出来たり、お得意の店ができたりするらしいのだが。


「こちら魔石5個で400フラムとなります。」


 これは安い。

 いや、蛇やネズミが5匹だけだったのでむしろ高いと思うべきかもしれないが、1日の稼ぎとしては正直しょぼい。

 3人でこれだからなおさらだ。安宿に1泊素泊まりがギリだ。食費他を考えれば赤字である。


 結局その日は1日ダンジョンにいて3人で400フラムとなった。



2日目


 今回は、少し急ぎ足で2階層まで進出してみた。2階層も同じく坑道のような作りだったが1階層よりは少し広いように感じた。

 得られた戦果は同じく蛇やネズミなどに加えて、2階層で新たに出てきた野犬のような魔物など計8匹を倒して700フラムとなった。



3日目


 今度はあまり人が通らなさそうな地図で言う端の方の道を通ってみた。人が来ない場所イコール魔物が残っているのではないかという考えだ。どうやらその考えは当たりだったらしく1階層のみで12匹の魔物と出会うことができた。

 本日の成果、950フラム。


 いまだ1000フラムを超えられない…………



「やってられっか――!!」

「そうねぇ」

「そろそろ所持金が心許なくなってきました」


 もともと心許無かった所持金であったが、ここ3日の赤字補填ですでに底をつきそうである。

 なんだよあの王都のギルド長! ダンジョンで金が稼げるみたいなこと言ってたじゃないか!

 稼げるどころかマイナスだよ。心許ない貯金を食いつぶしている状態だ。


 くそっ! こっちの世界でも金かよ。マネーイズパワーかよ。


「通常の依頼を受けている方が儲かるんじゃないだろうか」


 そう思ってしまう。実際にフォルオレンの街ではお金に困ったことはなかった。まああれは財宝を見つけたとかイレギュラーが重なった結果と言えなくもないが。


「あ、ノワール様、あれ」


 ソレイユちゃんが何か見つけたようで、そちらを見てみると酒場の前にウエイトレス募集の看板があった。

 『ウエイトレス業務/日給800フラム/賄い付き/若くて健康な女性募集』


 …………これウエイトレスの方が稼げるんじゃないか?


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