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59 王都のギルド

 外から見たときもそうだったが、王都というだけあって非常に大きな都市だった。外壁も高く、産業革命も起きていないような文明で、よくこんなものを作ったなという感じだ。

 王都へと入った後も人の多さにびっくりした。


 日本の大通りなんかと比べても遜色のないほどにぎわっている。ただこっちは歩道と車道がわかれてなかったり、露店があちこちに出ていたりで日本と比べると、雑多な感じがする。人の往来も結構向きがバラバラでそれがさらに拍車をかけているのだろう。


 ちなみに王都は非常に大きいのだが、形が円を二つくっつけた、例えるとひょうたん又は8の字のような特殊な形をしている。

 なぜこんな形なのかというと、元々円の一つが王都、もう一つの円は別の都市だったからだ。

 そのもう一つの都市というのが『迷宮都市』、今では『デザルクの迷宮』と名付けられた迷宮を中心として発展した都市である。

 王都、そして迷宮都市がそれぞれ発展し大きくなっていき、それぞれの端がくっついてしまって今の形になっている。


 迷宮がある都市がくっついてしまって大丈夫か。遷都も考えるべきではという意見なども、一時的に出たらしいのだが、すでにその時には王都がかなり大きくなって現実的ではなかったこと。ダンジョンという利益を生み出す存在が近くにある方が便利な場合もあるということでくっついたままらしい。


 王都の中心にひときわ大きなお城が立っている。王城らしい。そしてその周り各関係省庁のような国の運営に必要な機関の建物、そしてさらにその外側に貴族街があるらしい。そしてそれを囲うように外側に第1城壁。その外側に平民の暮らす町があり。それを囲うように第2城壁がある。ちなみに第2城壁の一部が迷宮都市とくっついている。


 メリノ君とは第2城壁を入ったところで別れた。

 冒険者ギルドは、平民区画の一番内側、第1城壁に近い所にあるらしい。



閑話休題


 私たちは王都の冒険者ギルドへ着き、受付へ並ぶ。

 メリノ君の護衛依頼完了の報告をするためだ。

 王都という人が多そうなところの割には列は短くすぐにはけてしまって、自分たちの番がやってくる。


「依頼完了の報告をしたいのだが」


 受付に座っていたのはメガネをかけた若い男性だった。いかにも事務仕事が得意ですといった感じだ。他の受付もいるのは男性ばかりで女性はいなかった。何でいないんだろう。普通受付って言ったら美人受付嬢だろ。


「はい、では完了の証明になるものと、ギルドカードをお願いします。」

「ああ…………ない」


 しまった。ギルドカードも無くなっているのだった。


「す、すまないギルドカードを紛失したのだが、再発行してもらえないだろうか」

「は? あ、はい、再発行には5000フラムかかりますが、よろしいですか。」

「うっ……ああ、えっと、任務完了の報酬から引いてもらうことは出来るだろうか?」


 お金が無い! 切実に!


「はい、可能です。」


 よかった。だめだったら借金とかしなきゃならなかったぞ。この世界の借金制度ってどうなっているのか知らないが、利子の限度とか無いからトイチとか普通にありそうだ。


 まずは、領軍の人からもらった証明書を受付のメガネ君に渡す。そうして、記入用紙を渡されたのでそちらを記入する。これは最初に書いたものとは違って紛失した際のギルドカードの情報(名前、レベル、ランク)とどの支部又は街で登録したのかを記載するだけだった。


「えーと、ノワールさんですね。少々お待ちください」


 そう言って一度引っ込んで、奥で分厚いファイルを確認し戻ってくる。


「ではこちらの板に手を乗せてください」


 そうしてから黒い板をこちらに差し出してくる。これはいつも通り、ここに手を乗せると乗せた者の魔力を読み取ってギルドカードが記載されるという謎道具だ。これで再発行までできるのか。便利だな。


 そこに手を置こうとし………あれ、私のレベルって今のレベルが表示されるんだよな。それって大丈夫なのか? と思う。


「……えっと、これってレベルは勝手に読み取ってくれるんだよな?」

「は? えーと、そうですね」 


 メガネ君が何言ってんだこいつ? といった顔で見てくる。まあそうだよな。というか更新とかで何回もやったから知っているけどね。

 レベル表示というのは存外重要だ。冒険者というのは強ければその分良い依頼が舞い込んでくるし、依頼主側も安心する。次のランクに上がる際もレベルが一つの指標となっている。まあ強いことは強いが素行の悪い奴というのもいるんだが。


 しかし私はどうだろうかレベル10万オーバーというのは表示されても大丈夫なのか。一応ギルドカードに表示されるだけで、周囲に公表されるわけではないので、いざとなったら目の前のメガネ君を口止めしておけばいい。

 そう思い、黒い板に手を乗せる。


 少しした後、黒い板につながれた同じく謎道具からシャコン! とギルドカードが排出される。


「はい、再発行されました。では……あれ?」


 ん? どうしたやっぱりまずかったか。口止めが必要か?


 そう思っていたら受付のメガネ君は「少々お待ちください」と言って受付の椅子から離れて行ってしまった。そして、隣の受付にあったカード更新の魔道具を持って戻ってきた。


「お待たせしました。もう一度こちらに手を乗せていただいたいいでしょうか。」


 そう言って隣の受付にあった同じ道具を持ってきて差し出す。

 言われた通り手を乗せる。するとさっきと同じように少ししてからカードが排出される。


「……あれ? おっかしーな……あの、失礼ですがあなたのレベルはいくつですか?」

「へ? ああ、レベル……レベルね……じゅ、12だ。」

「……いや、紛失したときに35レベルだと書いてあるんですけど。こちらにも記録がありますし」


 そう言ってさっき見ていたファイルから取り出した紙に目を落とす。

 え? ギルドカードの情報ってどのギルドにも行き渡っているの? この謎道具はインターネットみたいなものにもつながっているのだろうか。本部でデータを一括管理しているとか……それはそれですごいな。あくまで想像だけど。

 ただし、ここではそれが裏目に出た。


 メガネ君が怪しいものを見る目でこちらを見てくる。しばらく見ていたメガネ君が根負けしたのか、また「少々お待ちください」と言って席を立ってしまった。



 言葉の通り少ししてからだろうか、


「おうおう、お前さんか。少しいいかな?」


 身だしなみを整えた小柄な老人がいきなりやってきてこちらに声をかけてきた。

 誰だこいつ?


「ああ、ワシはここのギルドマスターじゃよ。」


 おう、ギルドマスターだったか。

 ギルドマスターがちょっと付いてきてくれと言って移動を始めたので、付いていくべきか悩んだが、まあ別にいいだろうと思いついていく。さっきのメガネ君が私たちのやり取りを報告したのだろうか。

 そうして私たちは、ギルドの一室に移動する。


「おや? そちらの二人は」


 私の後に続いていたソレイユちゃんとティーアを見てギルドマスターが問う。


「私のパーティーメンバーだ。」


 もう奴隷と従魔というくくりではなくなったからね。パーティーメンバー……いい響きだ。仲間って感じがする。まあ今までも仲間みたいなものだったのだが。

 2人には近いうちに冒険者登録もさせておいた方がいいのか。

 ただし今日やると、私の事も相まって、変に注目されるから日を置いてか、別の所でやった方がいいだろう。


「そうか、話を聞かれてもいいのか」

「問題ない」


 会議室にあったソファーをすすめられたので私たち三人が掛けると、その対面にギルドマスターが座る。そして差し出されたのは私のギルドカードだ。記載は名前とレベルと冒険者ランク。名前と冒険者ランクは以前から変わっていないがレベルの欄が「-」になっている。


「これなんじゃが、」


 どうやらあの道具で測れるのはレベル99までらしい。レベル欄が「-」になるのは、道具が壊れたか、そうでなければレベル100以上の場合だそうだ。

 で、おぬしは一体いくらだと聞かれたので、答えないとダメか? と返したら別に答えなくても問題ないらしい。

 レベルも冒険者の商売道具の一つだという認識なので、根掘り葉掘り聞くのはマナー違反だということは知っているが。

 とりあえずレベル100以上であるのは事実だという事だけ伝えておいた。


「もったいないのう」


 レベル100。それは現在人間種の中では長命なエルフの戦士のさらにほんの一部――数える程度がその境地に至っているらしい。そしてそれらの人物はすべて国の元で働いており、さらに高い地位にいるらしい。まあ、つまり軍の高官やら近衛兵とかになっているわけだ。


 人間や獣人などでレベル100越えであるならば、国からお声がかかり、高い地位を与えられるのは間違いないだろうとのことだ。まあ結局のところ高レベル者を国で囲い込もうという魂胆だが。


「でじゃ、おぬしDランクという事じゃが、さすがにレベル100以上の者がDランクというわけにもいかん。近々ランクアップの審査が行うつもりじゃが……審査には時間がかかるので、おぬしにはしばらくこの王都にいてもらいたい」


 予定としては1か月程度はかかるということだが、まあその程度なら問題はないので了承する。一応本人が知られたくないようなので国の方には知らせず、ギルド内で審査に携わる者には口外しないようにすると言ってくれた。

 わりと良い人のようだ。まあ、変な人がギルドマスターになったりはしないだろうが。


 ああそれと、あれも聞いておかないと


「それと聞きたいのだが、手軽に金を稼げる手段というのは無いだろうか?」

「なんじゃ、金に困っておるのか?」


 とりあえず、ここへ来る途中グランドドラゴンに出くわしたことを出来事を話した。無論、こちらでも退治したわけではなく逃げ出した際に所持品を落としたことにしておく。


「ああ、あの件か。災難じゃったな。まあ、冒険者が金を稼ぐ手段というと依頼をこなすことなんじゃが、ここにはもう一つ手段がある。」

「ほう、それは?」

「迷宮じゃよ。」


8話で説明していますが1フラム=約10円です。身分証の再発行が約5万円というのは高いのでしょうか?


あと、次回か次々回からダンジョン編にはいるかと思います。(別に章は区切ってないけれど)

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