表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/166

56 所持金半分って優しいよね

 とりあえずドラゴンの死体の近くで3人で固まって話をする。


「レベルじゅ……じゅうにまんですかぁ」

「さすがです。ノワール様!」


 なぜそこまで上がっているのか、ドラゴンは確かレベル200代だったから、ここまで上がるわけはないんだが。これはあれか、何か称号が関係しているのか。スキル関係なんてもうちゃんと見る気もおきないぐらい増えている。


 なお、ソレイユちゃんのレベルも48にまで上がっていた。

 ただ、ティーアの方はレベルが上がっていなかった。ドラゴンが死んだ際に死んでいたからだろうか。


「私がレベル48ですか……」

「……うーん、レベル上がってないのかぁ、残念ねぇ」


 ソレイユちゃんはなんだか信じられないという風な感じだ。

 一方、ティーアは一回死んだというのに何も得るものが無かったので非常に残念そうだ。


 ところで私のレベルって、すごいのは分かるのだが、どのくらい凄いのかが分からない。確か冒険者のAランクやAAランクの適正レベルが大体50以上だというのは聞いたことがあるのだが。それにティーアは魔族だから他の種族の方もどうなっているのか気になるしな。


「うーん、人族の方はよく分からないわねぇ。私がレベル高いのは高位魔族だからだし、……魔族が人族よりも強いっていうのもぉ寿命が長いからその分レベルが上だからだしぃ。まあそれでもレベル100を超えるのはほんの一握りねぇ。」

「私もよく分かりませんが、母から聞いた話では昔レベル200を超えた勇者がその圧倒的な力で魔王を倒したというお話があります。」


 なるほど……分からん。とりあえず勇者が200オーバーで魔王を倒す世界らしい。後、さっきのドラゴンも200オーバー

 比較対象が少なすぎて分からない。といっても勇者の600倍ということはこの世界でもトップレベルなんだろうことは想像がつく。これがお約束のチートってやつか。私Tueeeができるのか!?


「ところで二人の今後の事なんだが」

「「?」」


 ソレイユちゃんは奴隷の首輪が、ティーアは従魔の首輪がすでにない。主人である私が死んだ時点用済みとなって外れてしまったのだ。

 そのことを伝えるとソレイユちゃんは悲しそうにうつむいてしまった。ティーアの方はもう知っていたのかそこまで驚いていないようだが、少し微妙な表情をしている。


「それでだ、あー、もしよければなんだが……これからも一緒に行動しないか。いや、こういうのはよくないな…………ソレイユやティーアとこれからも一緒に行動したい。」


 そう言って頭を下げる。これは本心だ。なんだかんだ言ってこの3人で行動するのは楽しかった。契約があったとはいえすぐに逃してしまうのが惜しいほどに。

 下げていた頭を少し起き上がらせ、様子を伺うと


「……うぇ、あ、は、はいっ!!」


 ソレイユちゃんが大きく返事をしてくれた。そして、


「あらぁ、ご主人様がデレたわぁ♪」


 そう言ってティーアが勢いよく抱き着いてくる。さすがにこんな時まで振りほどくほど空気を読めなくはない。


「えっと、ソレイユちゃんはこれからも一緒にいるということでいいんだな。それとティーアは、」

「もう、いわせないでよぅ。契約切れたからさようならなんてさびしいじゃない」

「……一緒にいてくれるということでいいのかな?」

「もちろんよぉ。というか私がついていくわよぉ」

「…………ありがとう」


 本当にうれしかった。今までで一番緊張して、そして一番うれしい答えを聞いたんじゃないだろうかというぐらいに。

 ただし胸を愛撫しながら股間に手を伸ばすのはやめてほしい。

 ま、まあ今回くらいはいいか……美人におさわりしてもらえるとかよく考えるとおいしいシチュだし。


 さわさわさわ…………くちゅっ♡


「やめんか! ボケ――!」



 とりあえず、もう日も暮れてきたからここで野宿することにしよう。……あ、今までびっくりすることだらけだったから忘れていたけど裸だったわ。


 何か代えの服は……


「……え?」

「どうしたんですかぁ?」

「…………全消失(ロスト)してんじゃねぇかー!!」


 そう、アイテムボックス内に何も無かったのである。今まで貯めてきたお金も、服も、日用品やら、野宿用セット全て無くなっていた。

 おいおい、所持金半分で勘弁してくれよ。何で持ち物全部無くなるってなんだよ!


 まあ、死んでから再生されたわけで、体一つ以外はすべて失っているわけなのであるが。


 て言うか、私とティーアは裸なんですけど。この状態で所持品全部消失ってどうしろっちゅうねん!

 本当にどうしよう。服を手に入れるには町なり人の住んでいるところに行かなければいけないが、もちろん裸のまま行くわけにはいかない。そんなことすれば変質者として逮捕される。……そう言えば所持金も失ってたんだった。

 と、とりあえず、ソレイユちゃんに買ってきてもらうか? 一応、ソレイユちゃんにも多少のお金は持たせていた。そっちは失っていないので、私たちは街の外に隠れて、ソレイユちゃんだけで買ってきてもらうか?

 なんかそれでいい気がしてきた。そうしよう。



 結局その日は、ドラゴンの死体をアイテムボックスにしまい、土魔法で周囲に獣除けの壁を作り、火魔法で暖をとる。このあたりの気候は穏やかとは言え裸でいると思うと少々肌寒い。

 ティーアも裸だし……息子がいればさぞかし立派にそそり立っていたかもしれない。私が胸と股間をガン見していると、「ご主人様ってたまに男の人みたいな視線を向けてくるわよね」と言われた。……な、なぜだ。仁王立ちでポーカーフェイスに視線だけ胸にやっていたのに。


 くそぅ、持ち物全部なくなるとか……お金とか結構あったのに。それに結構したオーダーメイドの服もまだ数日しか着ていないのに……

 あ、食料もない……夕食と朝食抜きで行動か……つらいな。



 ◇◇◇



 翌朝、こちらに何かが近づいてくる。かなりの集団だ。最初は旅の商人か何かだろうかと思ったんだが、それにしては移動速度が速い。どうやら全員馬に乗っているようだ。

 やばいよ、真っ裸でいるところなんて見られたらもうお嫁にいけないっ! は冗談として、さすがに変質者から悲鳴を上げての逃走コースだろう。

ど、どどどうにか……そ、そうだひかり、光魔法――



「ノワール殿たちですか!」


 やってきたのは、10人程の騎馬の集団だった。馬に乗って鎧を着た集団がすぐそばに来て、声をかけてくる。


「あ、ああ、そうだがあなた方は?」

「は、自分たちはこの先にあるスーミンの街に駐留する騎士団です。フーカ公爵のご子息とその従者より、この付近にグランドドラゴンが出没したとの情報を受け偵察に来ました。その際、護衛をしていたノワール殿とその奴隷2名を探すようにとも言われております」


 なんとメリノ君が捜索隊を出してくれたらしい。ただ、今はありがた迷惑だ。なんせこちら3名中2名は裸だ。

 ではなぜ普通に会話しているのかというと、幻覚を見せる魔法をかけているからだ。つまりこの捜索隊の騎士様方から見れば私たちは普通に服を着ているように見えるわけだ。ただしあくまで幻覚、触られたりしたらばれるし、そもそも私自身服を着ているという感覚が無い。ボディーペイントをしている人とかコートの下はマッパの変態とかと同じだ。

 いつばれるかヒヤヒヤものである。


「途中で馬車から落ちたとのことですが大丈夫ですか?」

「あ、ああ、大丈夫だ心配してくれてありがとう」


 感謝の気持ちを込めてにっこりとほほ笑んだのだが……話している人の頬が赤いぞ。後ろにいる人たちもなんだかこっちを見ているし、もしやばれたのでは……


「そ、それは何よりです。それでグランドドラゴンの方はどうなったかご存知ですか?」

「いや、私たちは逃げるのに必死だったのでそこまでは……どこかに行ったようだが」

「そうでしたか、では街までお送りします」


 そう言って3騎の騎馬をこちらに寄越す。おそらく騎士と2人乗りで帰れということだろう。後の7名は周辺を偵察してグランドドラゴンの脅威が差し迫ったものであるかどうか確認するらしい。


 おいおい密着したらばれるって。


 なお、グランドドラゴンの方はさすがに倒したとか言うと何かと詮索されそうだったのでごまかした。


「いや、申し出は有難いがドラゴンの確認を先にした方がいいのではないのか? さすがにあれを放っておくのはまずいだろう。我々は徒歩で向かうよ」

「し、しかし女性3人で向かうとなると……見たところ2人は丸腰のようですし、さすがに危ないのでは」


 股間の方とか見るなよ! 訴えるぞ!


「大丈夫だ。公爵子息の護衛を任されていたんだぞ。これでも腕に自信はあるんだ。」

「わ、分かりました。徒歩でしたら2時間程度かかりますが…………ありがとうございます。」


 どうやらわかってもらえたようだ。いくら偵察だけといってもグランドドラゴン相手だと3人減るのも心細いんだろう。

 騎士隊の人たちとは結局その場で別れて、私たちは徒歩で向かうことになった。騎士の人にメリノ君たちの泊まっているところを聞いておくのも忘れない。


「じゃあ、あなた方も頑張って」

「はい!」


 騎士隊の人たちはドラゴンの痕跡の残っているであろう方角へ向かって行った。



「ふぅ、行ったか? ばれてないよな?」

「だ、大丈夫だと思います」

「大丈夫よぉ、この幻影、すごく高度なものみたいだもの。触られたりしない限りばれないわよ。というか、これなら街の中に入っても大丈夫なんじゃないかしらぁ?」


 嫌だよ! 何言ってんだよこいつ。


「さすがに街の中はマズイ。予定通り、一度ソレイユちゃんだけ入って服を買ってきてから全員で入るぞ」

「はぁーい」


 所持金をほぼすべて失ってしまった。ソレイユちゃんに持たせているお金も2人分の服を買ったらもうほとんど残らないだろう。

 ……どうしよう。また稼ぐしかないのか。こんなことならメリノ君の教育の報酬は王都に着いてからもらうことにしておけばよかった……


 私たち3人は街の方へと歩いていくのであった。裸で……


所持品すべて(お金から衣服まですべて)無くす代わりに生き返ります。という選択肢があった場合皆さんどうするんでしょうね。


王都にはいつ着くんでしょうね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ