55 ふっかーつ!
シリアスさん「……あれ?」
チート君「シリアスの出番ねーから(笑)」
頭に石のような硬いものがぶつかったようで、めっちゃ痛い。声を上げて頭を手で押さえた。
学生の時にクラスメイトの悪ノリで胴上げされてそのまま地面に落とされたみたいに痛い。あれはやばかった。下手したら死ぬからね。みんなやめようね。
痛い。ということはどうやらまだ生きているようだ。いやさっきの感覚から言えば、意識を失ってそこから回復したような感じだろうか。
そしてそう言ったことを思い出してくると、だんだんと状況がクリアになってくる。
「ソレイユは! ティーアは! それとドラゴン!」
そうだ! 私はドラゴンのブレスか何かで殺されて……
そう思うと前を向いて目にしたのは――
――ティーアの右半分がドラゴンのブレスに貫かれるところだった。
「なっ――――のっやろっ!!」
即座に怒りが込み上げてくる。不思議と勝てないとは思わなかった。生き返る前に聞いた声、あれは事実であり現実だ。ならば、
立ち上がり、白く綺麗な腕を前に出す。ガントレットはブレスで焼失しており素肌が見える。まるで、風呂から上がったばかりと言わんばかりのみずみずしい肌だ。
「ドラゴン風情が調子に乗るなよ……【ダークネスバインド】」
地面から噴き出した漆黒の鎖が、ドラゴンを絡め捕る。
それは、先ほどのティーアの魔法とは違いドラゴンが咆哮を上げ拘束を解こうともがいているが、一向に解かれる気配は無い。
やがて、あきらめたのか動きが小さくなってくる。と同時にこちらに向かって口を開いた。
「ブレスか……貴様も死んでみろ【ライトニングスピア】!」
手のひらから閃光がほとばしる。
それはドラゴンの口腔から放たれたブレスとぶつかり――
――ブレスを散らした。
私から放たれた攻撃魔法がドラゴンのブレスを貫き、喉を貫き、後頭部を貫いた。
ドラゴンの喉から空が見える。
ドラゴンはまるで糸の切れた人形のように大きな音を立てて倒れた。
気配を探ってみるが死んだようだ。
拘束魔法は相手が死んだ時点で解けている。
「これが――」
これが死んでいる間に『何か』によって入力された力か……
レベル差が圧倒的に会ったドラゴンが一撃。いったい自分はどういう状態なのだろうか。
あー止め止め! それよりも――
あたりを見回す。ソレイユちゃんが倒れているのが確認できる。一応急いではいたのだがそれでも、ドラゴンに吹き飛ばされてから結構長い間放置してしまった。
あわてて駆け寄って抱き起す。
「大丈夫か!」
「……ぅあ」
頭から血を流しているし、腕も変な方向を向いている。口から吐血もしている。かなり重症だ。
「【エクスヒール】」
あわてて回復魔法をかける。
一拍後にソレイユちゃんが淡く光り徐々に回復していく様子が見て取れる。
「――あれ? ノワール様」
回復が終わり、目を開いたソレイユちゃんがこちらを見てくる。
ああ、よかった。
「あっ、ど、ドラゴンは!?」
「ああ、大丈夫だ」
そう言って、ドラゴンの死体の方に顔を向けると、ソレイユちゃんも同じ方向を見て、大きく目を見開いた。
おお、驚いているな。
「あ、あの、ど、ドラゴンが……」
「もう死んでいる。だから大丈夫だ。」
もう一度安心させるように抱きしめて優しい感じで声を出し答える。
「悪いがちょっとここで待っていてもらえるか。」
そう言って、ソレイユちゃんを立たせると、ティーアの死体のもとに行く。
「【リコネクト】【リジェネシス】」
私が魔法を唱えると無くなっていたティーアの半身がみるみる再生していく。
【蘇生】が一般的な蘇生魔法であるが、さすがに頭部を含む半身を消し飛ばされた状態では使用しても蘇生できないため、【再結合】で魂と体の結合を強固なものとし、【再創造】にて失った半身を再生させるという手段をとった。
初めて使用する魔法であるが、その原理、効果ともにすでに『知っている』ようだ。
やがてティーアの失った半身が完全に再生し、瞳が開かれる。
「……ん……あれ?」
意識も戻ったようだ。
感極まって抱き着いてしまった。さすがに目の前で死なれるのは心臓に悪い。もちろんソレイユちゃんの重症も非常に心配だったが、それ以上だ。
「ティーア……よかった……本当に……」
「……え? ご主人様…………ああ、ご主人様やわらかいですぅ。あぁすべすべ……(さわさわ)」
「うぉっ!」
いきなり胸と股間に手を伸ばし愛撫しだしたのであわてて飛び退る。
……そういやドラゴンのブレスで私の服は完全に吹っ飛んで、今真っ裸である。ティーアの方も半分失っているのでもうすでに衣服として機能していない。
まあつまり素っ裸の女二人が抱き合っていたということになるのだが。
うぉ、おっぱい丸出しじゃないか! 服の上からでもスゲェと思っていたが、じかに見るとまたひとしお…………ってそうじゃないだろ! 私!
「ティーア大丈夫か? 変なところなどないか?」
「へ? あ、はい……あれ、私死んだはずじゃぁ……」
「魔法で蘇生を行った。ただ半身が無くなってた上に初めて使うので何か異常はないかと思ったのだが、」
「蘇生ですかぁ? ご主人様ぁは蘇生魔法が使えたんですかぁ……それ以前にあのぉ、ご主人様はぁ死んだはずじゃぁ? それになんで後ろでドラゴンが倒れているんですかねぇ?」
「ああ――」
そこからは一応今までの経緯を説明したのだが、ひどく曖昧なものになった。まぁ、私自身なぜ生き返ったのかは明確な説明ができなかったからであるが。
ドラゴンを一撃で倒して、蘇生魔法も使えるようになっていたな。となるとレベルなんかが上がっているんじゃないだろうか。
〈鑑定眼〉発動
名前:ノワール
種族:狐人族
年齢:18歳
性別:女性
職業:Dランク冒険者
レベル:120021
スキル:鑑定眼Lv10
全状態異常無効化Lv10
気配察知Lv10
微調整Lv10、
肉体強化Lv10
腕力強化Lv10
脚力強化Lv10
攻撃力上昇Lv10
防御力上昇Lv10
魔法攻撃力上昇Lv10
魔法防御力上昇Lv10
体力上昇Lv10
魔力上昇Lv10
剣技Lv.10
棒技Lv10
槍技Lv10
盾技Lv10
拳技Lv10
銃技Lv10
火魔法Lv10
水魔法Lv10
風魔法Lv10
土魔法Lv10
光魔法Lv10
闇魔法Lv10
空間魔法Lv10
錬金術Lv10
鍛冶Lv10
細工師Lv10
魔道具技師Lv10
獣化Lv-
称号:レベルアクセル
スキルコレクター
ドラゴンスレイヤー
勇者王
妖狐
精霊王
聖女
「……ゥヒョゥ!!」
「ど、どうしたんですか! ノワール様!」
変な声出た……
いつの間にか近くに来ていたソレイユちゃんがあわてて聞いてくるし、ティーアもびっくりしたような顔でこちらを見ている。
最初からチートかと思ったか、残念! 今からだったのだ。