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50 王都へ 2

 …………なんだあれは?


 斜め前方の森の中から、武器を掲げた集団がこちらに向かって走ってくる。数は10人。


 「……あれはなんだ」

 「多分盗賊ですかね?」


 コラット君が答えてくれるんだが、

 ……いやいや、まさか、さすがにあんなあからさまなのはいないだろう。アホかと言いたくなる。


 一応盗賊については確認済みだ。街から離れた街道などに現れて商人などを襲って金品強奪など、場合によっては命も奪う集団だ。まあこの辺は聞かなくてもわかるな。ただ盗賊の場合、正当防衛だけでなく先制攻撃で殺してしまっても問題ないらしい。

 おい、先制攻撃して間違いだったらどうすんだ? どうやらこの世界には過剰防衛という言葉は無いらしい。

 後、大物の場合はギルドによって懸賞金がかかる場合があるので、排除または拘束できたと証明できればお金が手に入るらしい。


 ただ、目の前から来る集団は普通におかしい。

 まず、なぜわざわざこちらに知らせるように奇声を上げながら向かってくるのか。

 さらに、こちらは騎兵が5人とこの時点で歩兵10人でどうにかなるわけがない。さらにその後ろに馬車が3台もいるのだから普通護衛がいると考えるべきだろう。

 あと、盗賊って金目のものとか盗っていくんだろう。食料を寄越せとはどういう事か?


 案の定、


「ひぎゃぁ!!」

「たすけてー!」


 領軍の騎兵5人にあっという間に蹴散らされている。

 先頭の5人がまず切り捨てられた。すると残った5人はそれを見て一気に逃げに回った。

 だがしかし回り込まれてしまった!


 回り込んだ騎兵にさらに2名が切り捨てられた時点で、残った3名がその場で立ち止まって武器を捨てた。


 一応、伏兵とかあるかも知れないと思って〈気配察知〉を使っていたんだが、あの10人だけだったようだ。


「た、助けてください!」

「お、おれたちだってこんなことはしたくなかったんだ!」


 口々に命乞いを始める。

 3人が我先にと話すものだから聞き取りづらい。

 ただまあ、何となく聞こえたことを整理すると、「自分たちは農民である」「3日前に見たこともないような大きな魔物に襲われた」「村人は自分たち以外全員その魔物に食われた」「3日間森を逃げ回った」「腹が減って限界だったので野盗まがいのことをしてしまった」というようなことだった。


 言いたいことを言い終えたのか、盗賊(元農民)たちはこちらを伺うように見てくる。と、騎兵の人たちが馬を降り3人に向かっていく。


「そうか、事情は分かった。だがこちらはフーカ公爵のご子息が乗られている馬車だ。それを襲ったのだ、覚悟せよ!」


 今回の護衛の指揮を任されている領軍の隊長さんがそう言うと他の領軍の人が残った3人を切りつける。


「ま、待って――ギャッ!!」

「た、たす――ガッ!!」


 結局残った3人もその場で切り殺されてしまった。


「いいのか? 農民だったみたいだが」

「大丈夫ですよ――」


 コラット君に聞くと武器を構えて向ってきた時点で正当防衛成立らしい。しかも襲ったのは貴族の馬車。もし捕まえてしかるべきところに突き出しても、死刑か、もしくは事情を考慮されたとしても奴隷落ちは確実だろうと。

 すげえなファンタジー。容赦ないぜ。


 合わせて10人の死体がそこらに散乱しているわけだが、なんというか見ていると「うわぁ……」って気分になってきて、胃のあたりがムカムカしてくる。人間の死体にはまだ耐性がついていないということだろうか。まあ、人が死ぬところなんて間近ではっきりと見たのはこれが初めてだ。しかも、血や臓物をまき散らしているしな。結構くるものがある。ゴブリンやオークなど二足歩行の魔物は大丈夫だったんだがな。

 ティーアは特になんともない感じだ。普通に目の前の光景を見ている。

 ソレイユちゃんは少し顔が青く表情も少しこわばっている。やっぱり慣れないんだろうか。特に悲鳴とかは上げていなかったが。


 その後、襲ってきた10人の死体の焼却を手伝わされた。放っておくとゾンビとかになるらしい。

 ゾンビ……やっぱりいるんだな。


 メリノ君は馬車から出てこなかった。まぁ、人の死体とか11歳の子供に見せるもんじゃないしね。メリノ君の馬車の中にいるメイドさんと護衛の隊長さんが死体の焼却作業をしているのと反対側の窓で何かやり取りをしていた。


 盗賊が襲ってきた時点でメイドさんが馬車の窓のカーテンを閉めており、メリノ君には見せないようにしていた。今もカーテンは閉まったままだ。


 とりあえず焼却も終わって再度隊列を整えて出発しようとすると――


「グガアァァァァ――――!!」


 盗賊たちが出てきた森の中から何かの大きな鳴き声が聞こえてきた。

 非常に大きな鳴き声で木がビリビリと揺れて鳥が一斉に飛び立っていく。さらに森の奥の方で大きな土煙が立つ


「な、なんだ!?」


 領軍の人たちの乗っている馬や馬車の馬がビビッて足を止めてしまう。

 こちらが混乱している最中にも、メキメキバキバキと木の倒れる音が聞こえる。同時に土煙がこちらに向かってきていた。


「魔物か!」

「こっちへ向かってくるぞ!」

「かなり大きいな……逃げるぞ!」


 領軍の人が森の方をにらみながらそんなことを言い、隊長さんがすぐに判断を下す。

 馬車の御者にも命令を出し馬を走らせる。馬車の方はそこまで速度は出ないが、こっちに向かってきている正体不明の相手との距離を考えれば、とりあえず進行方向からは逃げられるだろう。


 ……と、思っていたらなぜか木々を巻き上げながら土煙を上げているヤツの移動方向が変わった。

結構こちらからは距離があるんだが、土煙からかなりの大きさと考えられる。巨体だからかスピードも速い。

 進行方向とスピードからこのまま道を進んで行く場合、相手はこちらの前を通過することになる。通過だけならいいんだが、ここは道があるので森が途切れている。私たちに気付かれる可能性もある。


「魔物が向きを変えました!」

「なに!?」


 領軍の人たちの間では魔物で決定みたいだが。〈気配察知〉の範囲を拡大して相手の情報を探ってみる。


「……やばい」


 口に出してしまうほどやばい相手だということがひしひしと伝わってきた。大きさもデカい。以前戦ったアイアンリザードの倍以上の体格がある。


「スピードを上げろぉ!!」


 領軍の隊長さんが声を上げて馬に鞭を入れる。馬車も加速する。もはや壊れるんじゃないかってくらい振動している。それでもギリギリ進行方向から逃げられるかという所だ。


「きゃぁぁぁ!」


 ソマリちゃんが悲鳴を上げている。馬車でこのスピードはさすがに怖いんだろう。私も怖い、というかお尻痛い……


 土煙も結構接近してきていて木の破片がこっちにまで飛んでくる。


 ドパァァァン!!


 ヤツが森から姿を現した。


一応、以前のアイアンリザード戦で人が死んでいるのは見ていますが、あの時は戦闘中ということでそこまで注意を払っていなかったということと、今回は落ち着いた状態でさらに以前よりも近い距離で人が人に殺されたということで、主人公が気分悪そうにしてます。

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