44 ちょっとお休み 3
すみません結構間が空いてしまいました。
「おや?」
練兵場で、いつも通りメリノ君の剣の相手をしていたら雨が降ってきた。しかも短時間でどしゃ降りになった。こちらの世界にもゲリラ豪雨はあるのか。
うひゃ、こりゃまずい。
すぐに、メリノ君を連れて屋敷に戻った。
服がびしょびしょだ。しかも走ってきたので泥も跳ねている。
「まぁ! メリノ様その恰好では風邪をひいてしまいます。すぐにお風呂へ。私は着替えを用意してきます。あなた、メリノ様をお風呂へ連れて行ってあげて」
おばちゃんメイドさんの一人がやってきて矢継ぎ早に指示を飛ばす。え? 私が風呂に入れんの? まあいいんだけど。ずっと独身で子供とかいなかったから子供と一緒に風呂に入ったことなんてないぞ。体とか洗ってやればいいのか? まあいいや
「分かった、じゃあ行きましょうか、メリノ様」
「う、うん」
風呂の位置は知っている。というか、家主が入った後ではあるが、この家の使用人や私たちも入ることを許可されている。なんと福利厚生に富んだ家主様であろうか。
「あ、あの」
メリノ君が声をかけてきた。なんだろうか。とりあえずメリノ君の服を脱がそう。濡れたままだと寒いもんな。
屈んでボタンをはずして――――……
「あ、あ、あの、い、い、いいです! じ、自分でできます」
「そうか」
まあ、服を脱ぐくらい自分でできるだろう。ちょっと過保護だったか。じゃあ、ちゃっちゃと入ってしまおう。
メリノ君は自分でできるとのことだったので、自分の服を脱いでいく。あ、私の替えの服は持ってきてくれるんだろうか?
パサリ、パサリ――……
「――っ!! あ、あの、な、なな、なにを」
「ん? 何をやっているのです? さっさと脱いでください、お風呂に入るんでしょう?」
「い、い、いや、あ、あの、ひ、ひひ、一人で入れるから……」
……ああ、そう言えばメリノ君てもう11歳だっけ。そのくらいになると、風呂ぐらい一人で入れるのか。心情としてはパパと一緒にお風呂とか入りたくなーい。って所か? でも、お貴族様って風呂場にメイドとか侍らして体を洗わせたり、風呂から上がったら自分は立ってるだけで、メイドさんが勝手に体を拭いてくれてバスローブまで羽織らせてくれるらしいじゃん。メイドに裸とか見られても別に気にしなさそうじゃん。そういうのはしないのだろうか。
「一緒に入った方が効率がいいでしょう。体洗ってあげますよ?」
「い、いい、いや、いいから」
ちょっと強情だな。私はティーアと違って11歳の男の子に興奮する趣味は無いぞ。
「はいはい、いいですから、はい、ばんざーい」
「ば、ばんざーい?」
スポーン!
もう私が服を脱がしてしまう。あとズボンもね。
「い、いい、いいから、じ、自分で脱げるから!」
「さっさと脱がないと風邪ひきますよ! いいから!」
ストン!
おお、華奢な女の子っぽい外見でも、ちゃんとお○ん○んついてるんだな。すぐに手で隠してしまったが、……隙間から見えてますよ。やっぱりこのぐらいの子は他人に裸を見られるのは恥ずかしいのだろうか。思春期はもう少し後だからこの場合なんて言うんだろう。まあいいや
私も残っていた下着を脱いでしまう。
うむ、ちらちらと視線を感じるな。視線の主は顔が真っ赤だ。
……そうか! 今、私女だった! ……女の人の裸とか見るのが珍しいのか。でも11歳ということは、それこそ数年前ぐらいまで誰かと一緒に風呂に入っていたんじゃないのか? もしかしたら今も誰かと一緒に入っているかもしれない。……そんなに珍しいのだろうか? だが、悪いが心は益荒男な私だ、いくらナイスバディー女になっていようと11歳の男の子に裸を見られたところでなんともない。
「早く入りますよ。こんなところで裸のままじっとしてたら風邪をひきます」
「あ、あの、ちょ、ちょっと」
手を引いて風呂に入っていく。この風呂、魔道具で沸かしているらしく、夕方から夜にかけていつでも入れるようになっている。今昼前だけど雨が降っているのを見て誰かが沸かしてくれたのだろう。
ただ、この屋敷、この一か所しか風呂がないので入っている場合は出入り口に立札をかけて入ってますよーと示す必要がある。ちなみに立札は、この家の貴族様用と執事たち男用、メイドたち女用と3種類ある。なので、メイドさんが入っているところに間違えて入って行って「キャ――――!!」とか言われる心配もない……いま女だから別にそんなこと言われないし、堂々と女湯に入れるのだが。
今は、メリノ君が入っているので貴族様用の立札を立てかけてある。貴族様のおこぼれおいしいです。一番風呂じゃないか?
「ほら、体を洗うのでじっとして」
「あ、あの、じ、じ、自分でできるから!」
ちなみにこの世界、ちゃんと石鹸もある。シャンプーとかリンスはないが。
一応一番風呂をいただいたので、前も後ろも、お○ん○んもちゃんと洗わせていただきました。11歳の子供のおち○ち○なんてかわいいもんだ。おっさんのだったら全力で拒否るけどな! あぁ、私も美人なお姉さんと一緒にお風呂に入ってみたかったなぁ。
かわええのぅ。かわええのぅ。……決して私はホモではない。あれだ、父性とか言うやつだ。前世で家庭持ちの同僚が子供の写真を持ち歩いている気持ちが少しわかった気がする。
メリノ君を洗ってから自分を洗っていざ湯船に。髪とシッポを洗うのが面倒でした。
ふと水面に映った自分の姿を見る。
可愛い女性だ。長い黒髪に整った顔。頭に生えた耳も可愛い要素だ。少し視線を下げれば綺麗に形を保った女性特有の二つの膨らみが存在感を放っている。てっぺんはきれいなピンク色。そしてそのさらに下。キュッとしまった腰が女性特有の曲線を描き――
そんな魅力的な女性なのに少しもチンピクしない。まあ無いんですけど。
『可愛い女の子だと思った? 残念、私でした』と言われているみたいだ。チクショウめぇ
「ほら、ちゃんと肩までつかって」
「い、い、いいから、ひ、ひ、一人で入れるから!」
「だめですよ、すぐ逃げようとするじゃないですか」
「うぅ……」
そわそわして、すぐに上がってしまいそうだったので、がっちり後ろからホールドしてやる。メリノ君を抱きかかえている感じだ。ふ~、やっぱ一番風呂はいいわ。生き返るね。
あ、ちゃんと髪の毛はまとめてあるぞ。髪の長い人は髪をまとめて湯船にはつけないと聞いたことがあるからな。抜け毛の心配でもしているのだろうか。……シッポがばっちり湯船の中につかっちゃってるんだけどこれは良いんだろうか? こう、抜け毛の心配とか。
「うぅ……」
何かメリノ君が唸っているぞ? 顔が赤いがこの短時間でのぼせたわけではあるまい、やはり思春期に差し掛かっているからだろうか。他人に裸を見られるのは恥ずかしいとかだろう。貴族なんだから、どうせ今後もこんなことあるし今のうちに慣れておいた方がいいんじゃないか?
湯船につかって数を数えているときだ、脱衣所の方から人の気配が、
「すいませんメリノ様、お着替えをお持ちしました。こちらに置いておきますね」
おばちゃんメイドさんだった。
「あぅ、は、はい!」
「ああ、すまないが、私の着替えも頼む!」
「なっ! あなた、メリノ様と一緒に入っているのですか!」
「ああ、そうだが、何か問題があったか?」
「…………いいえ、ではあなたの着替えも持ってきます。」
扉越しにおばちゃんとのやり取り。なんだかしぶしぶといった感じだったが、すぐに私の着替えも持ってきてくれた。
いやー、至れり尽くせりだね。
風呂から上がって体を拭いてやっている間もずっと顔が赤かった。うん、可愛いな。男だけど……日本で子供がいたらこんな感じだったんだろうか。子供どころか結婚すらしていなかったけどな! 彼女すらいなかったけどな!
それにしても貴族なんて肩書で威張り散らして、メイドに手を出して孕ませたりするのかと思ってたが、ここの人たちはいい人たちばっかりだな。長男君はよく知らないが。
広い脱衣所にはメリノ君の着替えと私の着替えが置かれていた。雨に濡れた服は無くなっていたので、多分さっきのおばちゃんメイドさんが持って行ってくれたのだろう。
「はい、拭けましたよ。じゃあ服を着ましょうか」
「じ、じ、じぶんで、着れるから!」
「そうですか、では」
自分で着るそうなので、私は自分の服を着ていく、雨に濡れた奴と同じデザインのメイド服だ。こういうのって作業着と同じ扱いだから何着も同じものがあるんだろうな。しかし、下着のデザインまで同じっていうのはどういう事だろう。
「着替え終わりましたか?」
「う、うん」
「じゃあ行きましょうか」
本当ならここで、コーヒー牛乳の一杯でもほしい所だがこの世界にはそんなものはない。風呂で流した汗は、水でも飲んで補うしかない。うーん、せめて牛乳だけでもほしいな。こっちの世界に牛乳を飲む習慣ってあるのかな。今度調べてみよう。
相変わらず、メリノ君の顔は赤いままだ。慣れればいいのに。ちなみに私はもう慣れた。もう女湯に入ったぐらいでは動じないぞ。本当だぞ。ちょっとチラチラと視線が行くがその程度だ。うん、問題ない。ティーアとかと一緒に入ったときはガン見したけど、うん、問題ないな。
「ぼ、僕もう部屋にも、戻るから!」
「あっ、メリノ様」
脱衣所から出るとメリノ君はすぐに走り去って行ってしまった。
ショタになって血縁関係のないお姉ちゃんと一緒にお風呂入りたい(;ω;)