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42 ちょっとお休み

 本日も午前中はメリノ君の訓練に付き合い、適度に運動した後、午後はお休みとなる。なので、いつもの書庫にやってきた。領主様はなかなかに太っ腹な人で、この書庫にある本は破損させなければ自由に読んでいいと言ってくれた。ただし損傷させたら弁償だが。裏があるんじゃないかと疑っちゃうほどの待遇だ。もしかしたら報酬とか意外と低いのかもしれない……そういや報酬の具体的な金額を聞いていないな。1か月拘束されるのだからそれなりの金額をほしいのだが、もしかしてものすごい低いのだろうか。そんなケチそうな人には見えなかったが。今度手の空いていそうなときに聞いてみよう。

 ……いや待て、もしかしたら、私たちの体が目当てなのかもしれない。いやん、あのスケベオヤジめ。


 興味のあるのはやはり魔法関連の本だろう。ここには冒険者ギルドより多くの魔法関連書物がある。ギルドで見た火と風以外に水や土などの属性の他、珍しいと言われているらしい空間魔法の本なども数は少ないがある。ちなみに空間魔法の代表的なものはアイテムボックスだ。……あれ? 私のスキルに〈アイテムボックス〉とあるのだがあれは空間魔法の一種だったのか。ならなぜスキルとして〈空間魔法〉となっていないのだろうか? アイテムボックスしか使えないからか?

 あと、光属性魔法関連の本も少ない。最初は空間魔法同様、珍しい能力だからかと思っていたが、これは珍しいうえ、回復魔法同様【教会】の管轄らしいのでさらに少ない。

 というか、一部の書物では回復魔法は光魔法の一部のように扱っている。これもよく分からない。私のスキルには〈回復魔法〉となっているが、光魔法を覚えたらどうなるのだろうか? なお、回復魔法を含む光魔法を覚えたのがばれたら【教会】から勧誘が来るらしい。私は本当に大丈夫なんだろうな。この前、回復魔法を使ったところを教会関係者にばっちり見られているが……

 他には、金属関係の魔法も土属性に含まれるとか、(かみなり)の魔法は風属性に含まれるとか。

 ……正直、細かく分けるのが面倒なだけだったんじゃないか、とか思う。


 以前に見た入門編にも書いてあったが、やはりこの世界には『魔力』と呼ばれる謎パワーがあるらしい。それは大なり小なり誰しもが持っているもので、それを、こう、いい感じに練り上げて濃度を高め、体外へ放出、物理現象へ変換したものが魔法と呼ばれるらしい。

 なお、杖などを使ったほうが魔法を使いやすいそうだ。杖がホースや漏斗みたいな役割をし、魔力の濃度を上げやすくしたり、魔力の放出方向を一直線にしたりする役割があるらしい。

 魔法を使えないのは、魔力の量が少なかったり、うまく魔法発動可能な濃度まで上げられなかったり、うまく体外へ放出できなかったり、うまく物理現象へ変換できなかったりと色々な理由がある。逆に、そう言ったことをうまくできる奴が、才能があるとして、魔法使いとして大成していくそうだ。


 ちなみにこの世界、火をおこしたり、少量の水を出したりと『初級の魔法』を使える人間はそこそこいるそうだが、それ以上の攻撃などに使える魔法となると一気に数が減る。人口の5%もいないという報告もあるそうだ。


 私はどうだろう。回復魔法は使えるんだから、魔力の量は十分だと思う。以前にファイアボールとか使った時に威力は小さかったが一応使えたので、体外へ放出とか、物理現象への変換もうまくいっている……と思う。ならばなぜ回復魔法以外は威力が小さかったのか。やっぱり、往々にしてすべての事柄がそうであるように、魔法も反復練習が必要なのだろうか。今度森へ行った時にでも繰り返し魔法を使いまくってみるか。


 あと魔道具に関しても、いろいろと書籍を発見した。魔道具には、魔力を供給するための魔石と、魔法術式を刻み込んだプレートと呼ばれるものが必須らしい。現代技術に関して言えば、魔石がバッテリー、プレートが電子回路を刻んだ基板といったところだろうか。私は電気工学にはそこまで詳しいわけではないが、単純なものなら作れてしまいそうだ。ただ、プレートの方は金属に特殊な加工を施したものを使用しその上に魔道具を作る専門の人が、魔法式を書き込むそうだが、元になるプレートは出来合いのものを買うしかない。金属加工とか知識も設備もないしな。また、それらを組み合わせて作られた魔道具というものは、たとえどれだけ効果がしょぼくても非常に高価になるそうだ。これは魔石やプレートが高価なうえ、魔道具を作れる人が非常に限られているために人件費まで高いという理由からだ。

 これはあれだな、魔道具みたいな効果があるただの道具を売る、いわゆる発明チートとかやらかしてもいいんじゃないか。お金を稼ぐために。

 ……まぁ、そんなに深い知識とか無いんですけどね~。

 王道はポンプ? ……この街、上下水道は一応存在する。魔法を併用して造られているらしい。(現代のように蛇口をひねればとはいかないが) 

火薬とか? 材料は分かるけど作り方知らない……

 まあ、こんな具合である。



 一方ソレイユちゃんはそのメイドレベルを着実にあげていっている。私たちがお世話になっている。3人部屋は彼女が掃除しているのだが、もうピッカピカである。夕方、部屋に帰ってきたときなど、ベッドのシーツは皺ひとつなく、ピンと張られ、窓はそこに何もないかのようにピカピカに磨かれ、床には埃一つ落ちていない。これはもう、ソレイユちゃんを専用メイドとして正式に雇ってしまうレベル。魔物退治とか別にやらなくていい。だからいつもメイド姿でいてほしい。心の清涼剤である。


 ティーアは、ずっと領軍の指導の方を任せてしまっている。今日も、景気の良い鞭の音と、男たちの喘ぎ声……悲鳴が響き渡っていた。レベル差から依頼の1か月以内にティーアの方がお役御免になることはまずないだろう。それよりも、領軍内にマゾを大量覚醒させてしまわないかの方がよっぽど気になる。ファッションマゾ程度ならともかく、真性に目覚めてしまったら、こちらとしても責任が取れない。それにしても、ティーアは嬉々として鞭を振るっていたが、自身がマゾではなかったのだろうか、いまいち彼女のキャラがつかめない。


◇◇◇


 少し前に行った遺跡の中にある財宝類の査定が終了したらしい。時価十数億フラムのお宝だったらしい。これを遺跡に潜った私と3人組冒険者、学者先生の5名で分けるので1人当たりの額も相当大きくなる。ちなみにソレイユちゃんは奴隷、ティーアは使い魔という区分のため分け前の人数に含まれていない。3人組冒険者は彼女たちにも分け前をと言ってくれたらしいが、今までの慣例とか前例云々とかそう言うのがあるので無理だったらしい。3人組いい奴だな。今度、食事でも奢ってやろう……まあそんな必要もないのだが。

 なんて言ったって、この分け前が入ってくれば私たちは大金持ちである。働かなくても豪遊しなければ一生食っていける額である。まあ、3人組は冒険者をやめる気はないらしいし、学者先生は今後の研究資金にするらしいが。


 こんな大金持っていたって、俺ら学もないからどっかで騙されたりしてスカピンにされる可能性もあるからな。手に職を持っておいた方がいいさ。とは3人組の談である。


 なお遺跡は現在も調査中であり、財宝類も歴史的価値とか言うので同じく調査中。なので、財宝類はそのまま貰うことは出来ず、それに代わるお金を貰うということになる。



「おい、お嬢ちゃん。なんだその恰好は?」

「ノワールさん、冒険者をやめてどこかに就職したんですか?」

「姉さん、メイド服も似合ってます。美人っす。」

「え? マジかよ」「そんな!?」「俺のパーティーに入ってもらいたかったのに……」「メイドってことはもうお手付きになってるんじゃ」「やべぇよ」「黒の天使様が……そんな」「NTR萌える」「メイドさんハァハァ」


 午後の暇な時に、ギルドに分け前をもらいに行ったら、色々と言われた。着替えるのが面倒だからとそのままの格好で来たのはまずかったか。


 ◇◇◇


 魔法の練習をしようと思ってもここは領主様のお屋敷である。【ファイア】や【ウォーター】など使ったら、火事になったり、床を水浸しにしたりといろいろ問題がある。そこで都合のいいのが、光魔法の【ライト】である。これはただ単に光を出すだけである。別に熱とかは発しないので、【ファイア】みたいに熱がメインで光が副次的な効果を示すものとは違うのである。


 魔力の練り方というか、体外への放出の仕方は何となくわかった。集中してみれば体内を何かが流れているのが知覚できる。たぶん血管や神経みたいに魔力も体中に巡っているのだろう。それを一か所に集める感じだ。これは血などと違い、自分の意志でコントロールできる。そしてそれを任意の場所……魔法の場合は大体手の平か指の先から放出する。

 

 とりあえずは、【ライト】で魔法の練習をしようと思う。魔力を籠めて光を強くしたり、ずっと同じ出力で照らし続けたりといった具合に、まずは魔力の放出の強弱や持続性の練習を行った。

 この【ライト】地味に便利である。この世界、光と言えばランプや焚き木の火などだが、それは光源となる火自体が揺れたり、光に強弱がつくことでチラチラと明るくなったり暗くなったりを繰り返すのである。現代日本で30年近く暮らしてきた身としては、これは非常に気になる。さらに光量自体が弱い。そのためランプの光で本を読むことなど結構難しい。暗い所で本を読むと目が悪くなるというのは迷信らしいが、実際やってみると、本当に目が悪くなるんじゃないかと思う。

 【ライト】の魔法は、魔力の籠め方によっては、それこそ豆電球クラスからフラッシュグレネードクラスの閃光まで思いのままだ。一度、魔力量を間違えて「目が~、目がぁ~」と、どっかの大佐張りの悲鳴を上げてしまった。

 あとこの魔法、一か所にとどめておくことができる。そのため、暗くなってきたら、部屋の天井辺りに向かって【ライト】を使用すれば、あら不思議、蛍光灯並みの光が長時間続くことになる。むろん光の量と持続時間は籠める魔力の量に比例するわけだが、そこは暇を見つけて適度な光の量で、適当な点灯時間なるように何度も練習した。

 うむ、これでランプいらずだな。油代が浮くぜ。



 さらに暇な時に東の森にいるゴブリンさんに一方的に付き合ってもらって、魔法の練習をしていた。

 何故か風系統に属する雷魔法の【サンダー】は、ゴブリンさんに触れて発動させると、体が麻痺したように泡を吹いてその場に倒れた。うむ、これはスタンガン程度の威力があるな。(なお、ゴブリンさんはこの後スタッフが責任を持って駆除しました)

 この前のリベンジとして【ファイアボール】も使ってみたが少し威力が上がっただけで、いまだに一発で確実に相手を倒すことができるとは言い難い。当たった場所を重度の火傷にするぐらいだ。顔なんかに当たったら呼吸困難でそのまま死んだりするのだが。傷口が焼けただれていて結構グロいな……

 同じく【ウインドカッター】のリベンジも行った。ゴブリンの細腕程度なら切断できたのだが、胴体となると切断まではいかなかった。ただすっぱり切れて内臓が出てきた。同じくグロかった。

 他にも【ウォーター】や【ストーン】など初級の魔法では、即死とまではいかず、当たり所がよければ重症といったところだった。


 そこで、【ライト】で魔力の制御を練習しつつ、更に威力のある魔法を覚えてみようと思った。幸い領主様の屋敷には火、水、風、土といった基本系統の魔法の本は結構な量があったし資料には事欠かない。


 ゴブリンさんに練習という名の実験に付き合ってもらって、更に1段上の魔法【ファイアアロー】【ストーンアロー】にて、相手を一撃で倒すことに成功した。

 

ここで、重大なことに気付く。今まで何となくこんなもんだろうなという漠然としたイメージで魔法を放っていた。籠める魔力量もそれに合わせて適度にということになる。なら、意識して魔力を多めにこめてみたらどうだろう。

 いつもは魔法の発動の方に気を取られて、あんまり籠める魔力量にまで気を払っていなかった。というか、読んだ資料には籠る魔力は魔法によって自動で調節されると書いてあったので、あまり気にしなかった。しかし考えてみれば【ライト】の魔法だって、籠める魔力量で、光の量や持続時間が変わったんだから、他の魔法もそうなんじゃないか。

 今回はそちらにも気を払って少し強めに魔力を籠めてみた。

 魔力よ籠れ~ 威力重視で籠れ~ みょんみょん


「ウインドカッター」


 ズパンッ!!


 ゴブリンが胴体ごと真っ二つになったうえ、その後ろにあった2本の大木も切断、3本目の木の中ほどまで切断して魔法は霧散した。


 他の魔法も込める魔力量によって威力が変わった。【ファイアアロー】でゴブリンが炭化し、【ストーンアロー】で上半身が消えた。


 やっぱり籠める魔力の量がカギだったみたいだ。

ありがとうゴブリン。この犠牲は無駄にはしないぜ。


 その日は意気揚々と領主屋敷へ帰って行った。


ちょっとした説明回です。

本文中に上下水道の話が出てきましたが、近くの川から水路を引っ張っている程度です。まあ、魔法で浄水や汚水の処理をやっているので総合技術的には高い水準かもしれませんが、

まあ、こんな細かい設定作っても後で矛盾だらけor出てこないなんてことになるんでしょうけどね。


追記)人物名のミスを修正しました。

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