表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/166

閑話 勇者ヤマモト 3

 拝啓母上様。木々が色づき始めています今日この頃いかがお過ごしでしょうか。私は今、魔王を倒すためレベルを上げて――


 やめたでござる。

 て言うか手紙なんて小学校の先生に年賀状を出して以来書いたことなんてないでござる。そもそも届かないし。


 さて、吾輩、ドキッ! 男だらけの勇者パーティー様御一行は王都より出立して早一週間、順調にレベルを上げているでござる。チート装備のおかげで周辺の魔物も楽々でござる。

今現在のレベルは何と50! これはレベル99も見えてきたでござるな。


「レベルは99でカンストではござらんのか?」

「カンスト? 人間のレベルの上限は実際どこまであるのかわかっておりません。文献によれば500年以上昔に勇者様がレベル200に至ったことがあると書かれたものもあります。」

「…………」


 魔王討伐のレベル適正値はいくつでござろう……


 ◇◇◇


 今日は自由行動でござる。無期向きマッチョなオヤジも小うるさい魔法使いもいないでござる。休暇を楽しむのでござるよ。


「おや? ここは――」


 見た目わりと大き目なお屋敷風のつくりでありながらどことなく背徳感を感じさせる店構え。

 “奴隷商館”


「奴隷! なんと心躍る響きでござろう! 店主! 店主はいるでござるか」


 ウキウキ気分で店の中に入る。


「はい、騎士様どのような御用で…どういった奴隷をお求めですか?」


 奥からモノクルを付けたいかにもジェントルメンな老人が出てくる。

 騎士様……そう言えばチート装備を装着したままだったでござるな。この格好ならばお金持ちの騎士とみられても仕方ないでござるなーデュフフ

 しかし、入ってみたもののどういった奴隷が必要か? でござるか。もちろん女の子が必要でござる。ヒロイン気質を持っている女の子がいいでござる。しかし、仲間たちに足手まといをわざわざ買ったと言われるのも癪でござるしな。


「ある程度戦いのできる、見目麗しい女性を所望するでござる」

「さようでございますか。ではこちらへ」


 そうして、奴隷がいるであろう奥の部屋へと案内されるのだが……



 トボトボ


 勇者ヤマモトは一人だった。奴隷商館から出てきたというのに奴隷の一人もつれていない。

 この奴隷商館はここを含めた周辺の町一番の規模と品揃えを誇るとあり、紹介された奴隷はどれも美しかった。しかも戦いもできるとパーフェクトだ。種族も魔法に優れたダークエルフ、接近戦をこなせる狼人族(ワーウルフ)、剣を扱える人間(ヒューマン)などより取り見取りだった。だがいかんせん高い! もう一度言おう高い!


「何でござるか、一番安い奴隷でも手持ちの5倍とかありえないでござるよ……」


 そんな勇者ヤマモトが次に見つけたのが、

 “賭博場”


「そうでござる、無ければ増やせばいいのでござるよ。」


 喜び勇んで中に入っていく勇者ヤマモト


 ◇◇◇


「で、剣をカタに取られたと」

「はいでござる」

「はぁ~」

「ヤマモトさん、さすがにそれは」


 只今、吾輩仲間たちから糾弾を受けているでござる。吾輩はDOGEZAでござる。

 そう、吾輩、カジノで負に負けて手持ち金どころか神様にもらったチート武器である『聖剣』を取られてしまったのである。

 なんて奴でござろう、仮にも勇者から剣を取り上げるなどと。


「大体ヤマモト様は勇者様なんですから奴隷くらい言ってくれたら買いますよ」

「い、良いんでござるか!?」

「まあ、魔王討伐に性奴隷なんかを連れて行くわけにはいきませんが、戦闘用の奴隷ならば問題ないでしょう」


 一番堅物だと思っていた教会出身のヒャロン君よりうれしいお言葉をいただいたでござる。


「な、なら早速買いに行くでござる」

「今日はもう遅いんで明日ですね」

「分かったでござる♪」


 楽しみでござるなー



 次の日


「ではこちらでよろしいでしょうか」

「はい、お願いします」

「…………」


 勇者ヤマモトは放心していた。

仲間には奴隷がほしいと伝えた。むろん、魔王討伐に連れて行くのだ。それなりに腕の立つ戦闘用の奴隷だ。そして10~20代の女性。ここは譲れない。そして仲間たちもわかったと言ってくれた。さすがパーティーメンバーたちである。ここまで心が通じ合っているならば魔王討伐もたやすいであろう。

 そうしてウキウキで奴隷商館に行き……ヤマモト殿は休んでいてくださいと言われたので手続等仲間に任せて後ろのソファーでふんぞり返っていた。


「いや、お客様はお目が高い。こちら当店で最も戦闘に優れた女奴隷となっております。」

「だろうな」

「ではこちらの契約書にサインを」


 さらさらとペンが走る。

 今ここで待ったと言えればよかったのだが、そんな言葉が出ないほどに放心状態だった。

 気が付いたのは奴隷商館を出て数分した後だった。


「よろしくお願いしますご主人様」


 ゴリラだった。

 ムキムキのゴリラだった。

 奴隷として売られていた彼女は、今年20歳になるという女性。猿人族という種類の亜人で剣と盾を用いた前衛要員だ。スタミナもあり、ガウリールとゲイルと共に前衛で役に立ってくれるだろう。


 だが、見た目はムキムキのアマゾネスだ。

 顔はゴリラだ。

 非常にたくましい。

 金属製の胸当てが押し上げる女性の象徴がかろうじて彼女が女性だと知らしめてくれる。


「……こんなはずではなかったでござる(ボソッ)」

「何か言いましたか? ご主人様」

「それよりも、ヤマモト様、次は剣を買いに行きましょう」

「そう言えば、ヤマモトは剣を取られたんだよな」

「国からお金が出ますから魔剣でも買えますよ」

「違うでござる!! そうじゃないでござる!!」

「うぉ! どうしたんだよいきなり」

「どうしたんですかヤマモト様」


 勇者ヤマモトの旅は続く。


勇者パーティー6人中4人が前衛ってバランス悪いですよね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ