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41 お貴族様のレベル上げ 1

 その日の朝、領主邸宅の前にいるのは、メリノ君、私、あと領軍の若い兵が2名に中年の兵が1名。ゴブリンなどのザコなら問題ない人数だ。

 領主様は10人単位で護衛を付けるとか言い出したのだがさすがにそれは無いだろうと、私やら領軍の団長さんやらが説得した。どんだけ甘やかす気だよ。

 ソレイユちゃんは相変わらず料理の勉強をしている。ティーアはなんでも領軍の指導を行っているとか。大丈夫か? いろんな意味で


 とりあえず、領主の用意した馬車(御者付き)で、東の森の入り口まで行って、そこからは徒歩で森の中に入る予定だ。


 ガタゴトガタゴト……


 正直、街から森まで歩いてもあんまりかからないのに馬車なんか使っても意味ないんじゃないだろうか。

 まあ、領主様が用意してくれたんだし乗って森の入り口まで来たんだが。相変わらず馬車っていうのは乗り心地が悪い。車軸が車体に直接接続されているのだ、サスペンションなど当然無い。座るところにクッションでもひいてくれればいいのに。


 その後、歩いて森の中へ入っていく。浅い所には小動物程度しかいない。魔物は少し中に入る必要がある。この面子だといつものスピードではいけない。

 ゆっくりと森の中に入っていく。全5名、全員武装しているが、夜営の準備などしていない。間違いなく日帰りだろう。なので、森に少し入ったところで少し狩りをして帰ってくるというスタイルになる。

 ちなみに、私は領主様に用意してもらった剣を装備しているが、服はメイド服だ……いつも防具をつけていないので防具や専用の服を用意してもらうのを忘れていた……ということを今朝気づいた。まあ、靴はそれなりのものなので問題はないが、スカートが邪魔だな。



 歩くことしばし、時間は午前10時といったところか。それなりに森の中まで進んだ。このあたりなら、はぐれたゴブリンなどが少数でいるだろうところまで来た感じだ。

 というか普通にゴブリンかコボルトらしき気配がする。1匹だ。ちょうどいいカモだぜ。


「1匹近くにいるな。こっちに向かってきている。」


 うむ、やっぱり話し方が安定しないので、領軍の人に対しては元の話し方にする。一応領主様には変な敬語を使うぐらいなら元の口調でもよいと言ってもらっている。まあ一応、領主様やメリノ君には敬語を使うようにしているが。それに、メイドという恰好ではあるが、一応領主の指名依頼を受けていることを、ここにいる領軍の人は知っているし問題はない。現に今も特に気にした様子もない。


「こっちに? それは本当か?」


 領軍の人たちが剣に手をかける。


「ええ、間もなく遭遇するがどうする? 一応ここへはメリノ様のレベル上げのために来ているんだから、彼に戦わせるのか?」

「いや、メリノ様のレベルは3と聞いています。さすがに1対1で戦わせるのは無理があるので、まずは我々が戦って弱らせます。」


 領軍の人たちが剣を抜いた。と同時に目の前の茂みが揺れて、相手が姿を現す。


「ゴブリンか」

「よし行くぞ」

「おう!」


 領軍の3人がゴブリンを囲んで、剣で斬りつける。


「グャァ!」


 さすがにゴブリン相手に3対1だと簡単すぎるか。ゴブリンの方なんてもう自分が劣勢だと分かっているんだろう。パニックになったように持っている棍棒をふるっているが、そんなにめちゃくちゃに振るったって当たるわけがない。というかこのペースならすぐスタミナ切れになるだろう。

 案の定疲れて動きが鈍ったところを3人にめった刺しにされた。ちょっとかわいそうだな…………というか3人で倒しちゃってどうするんだよ。メリノ君のレベル上げだって言っただろ。領主様から伝わってないのか


「倒してしまったが……メリノ様のレベル上げではなかったのか?」

「いや、まあ、そのなんだ……」

「俺たち魔物退治は、その、初めてでして……」

「手加減とかその辺がちょっと……森の中で動きにくかったですし……」


 おい! もっとちゃんとした奴つけろよ!


「…………分かった。今度から私が先頭に立とう」

「「「ああ、分かった」」」

「メリノ様は私の後についてきてください。」

「う、うん」

「では、行きます」


 そうしてまた森の中へと入っていく。今回は日帰りなので魔物退治に取れる時間は長くても3~4時間程度だろう。そんなに時間は無いのでここは強硬策で行こうと思う。

 以前、必要だといって用意してもらっていたアイテムを取り出す。小瓶に入った油のような液体だ。その蓋を開けると何とも言えない甘い(にお)いが周囲に広がっていく。

 ふむ、このくらいでいいだろう。

 ある程度匂いが広がったところで瓶の蓋を閉じる。

 このアイテムは【魔集香】といって、その名の通り匂いで魔物を呼び寄せる効果がある。普通はどういった使い方をするのかわからないが、店頭で売っているものだというので買ってもらっておいた。


 待つこと5分程度、ワラワラと集まってきた……まあ、ワラワラといっても20程度だが。


「あの、周囲が騒がしいような気がするんですが」

「ああ、魔物が集まってきているからな」

「なっ!?」

「心配するな、数は……20か。一番強い奴でもオーク程度だろう。問題はない」

「いやいや、数が多いですよ!」

「そうですよ、一度後退したほうが……」


 こいつら一応、職業軍人なんだろ、強くてもオークだぞ、めっちゃ格下の相手にビビりすぎじゃないだろうか?


「とりあえずいちばん近い奴から()っていきます。メリノ様は剣の用意を」

「あ、う、うん、分かりました」


 なぜかメリノ君は以前からこちらに対して敬語を使う。礼儀正しい子だ。私には真似できないな。


「来た」


 まず、現れたのは3匹のゴブリン。興奮状態だ。あのお香のせいだろう。


 ヒュッ!


 腰に差していた剣を振るうと、ゴブリンの手足が飛んだ。3匹は一気に崩れ落ちて動けなくなる。さて、失血死する前に止めを刺させてしまうか。


「メリノ様、こいつらの止めをお願いします。」

「え、でも、あの……」

「大丈夫、相手は動けません。まずは魔物を殺すということに慣れておくべきでしょう。」

「わ、分かりました」


 えい! と掛け声とともに振るわれた剣は1匹のゴブリンの脳天に突き刺さる。ガッ!と音がして頭から血が噴き出す。


「う、固い……」

「骨に当たったからですね。メリノ様の剣は特注なのでその程度は問題ないでしょう。次に行ってください。」


 ちゃんとメリノ君は3匹にとどめを指せたようだ。よし次だ。サクサク行くよー


「次は、同じくゴブリンです。ただし5匹。今度は腕は残しますので練習を思い出して戦ってください」


 そう言った直後、現れたゴブリン5匹、もうこの程度じゃ私自身はどうとも思わない。弱いし、多分経験値もしょぼいし。

 5匹とも一気に駆け抜け、足を飛ばしてやる。一拍遅れてゴブリン5匹がその場に崩れ落ちる。


「さあ、メリノ様。倒してみてください」


 ゴブリンどもは足を切り落とされた痛みで何か分からない言葉を叫んでいる。ぎゃーぎゃーうるさい。あと、闇雲に手をぶんぶん振り回している。


「あ、あの」

「腰が引けていますよ、大丈夫、相手をよく見て」

「は、はい、えい!」


 ドッ! という子気味よい音と共に心臓を貫かれたゴブリンが絶命する。その後も、腕の動きを見て、それをかわし、また機会をうかがいながらゴブリンを絶命させていく。

 問題ないな。ちゃんと動けている。やはり魔物ということで抵抗も少ないのだろうか。相手が足が無くて、大量出血の上、最初の方で腕を振り回してすぐスタミナ切れになって動きが鈍かったのもあるのだろうが。


 このくらいの文明レベルだと11歳でも食べるためとかで動物を殺したりするのにあまり抵抗ないと思っていたがどうなんだろう。たぶんパックに切り分けられた肉しか見たことないヒヨッコ現代人とは違うんだろうけど。私が11歳の頃なんてもう思い出せないけど多分屠殺現場なんて見たこともなかっただろうなぁ。


 うーん、さすがに一気にたくさん殺すのは精神に負担をかけるかもしれないので、今日はこのあたりにしておくか。


「よく頑張りましたね。動きもよかったですよ」

「あっ……えへへ」


 メリノ君はやっぱりまだ子供ということなんだろう、頭をなでてやると嬉しそうに顔を緩めた。


「ただ今回は特に何もなかったからといって油断するのはいけません。魔物というものは言葉は通じませんが、知能はあります。無論考えて行動することもあるでしょう。それに、魔物側も私たちと同じで死にたくはないはずです。ですので、殺そうとすればそれなりに抵抗してきます。冒険者などはこれにより怪我をしたり最悪殺されてしまったりすることもあります。ですので、必要以上に怯える必要はありませんが、慎重ではあるべきでしょう。分かりますか」


 ついこの間この世界に来たばっかりで魔物の事なんてよく知りもしないが、ちょっと知ったかしてみた。


「は、はい」


 返事はいいんだが、やっぱりこういうのは実際にそう言った局面に会ってみないと分からないこともあるだろう。さすがに大怪我をするとトラウマになりそうだが、ちょっと攻撃を食らうくらいをして危機感をあおってみた方がいいだろうか。


「とりあえず、あとを片付けてしまいますので、そちらの3人と待っていてください」

「え、あの、大丈夫?」

「大丈夫ですよ」


 残りは12匹だがいるのはゴブリンにコボルト、オークとザコモンスターばかりだ。結局5分もかからず片付いた。

 まあ、今日はこのぐらいだろうな。


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