閑話 勇者ヤマモト
生存報告&あけおめー(遅っ)
さんざん更新まで間を開けておきながら更新したのが閑話(笑)
『ワールドオブミズガルズ』
つい先週、大手メーカーから発売されたゲームで、内容は勇者を操作し仲間と共に魔王を討つというよく言えば王道的、悪く言えばありふれた作品であるが、最新のゲーム機による圧倒的なグラフィックと、自由度にとんだミッション、仲間になる女の子の可愛さにより一部では発売前から傑作と呼ばれていたゲーム作品である。
そして今日もまた仲間と共に魔王を討つべく一人の勇者が旅立とうとしていた。
吾輩は山本圭太郎と申すもの。今現在、3人の美少女と共に魔王を倒すため旅の真っ最中でござる。
おっと、ここでモンスターとエンカウントでござる。
「圭太郎。ちょっとお使い行ってきて。」
おや、外野から何か聞こえてくるでござる。
おっと、愛しの少女たんたちが戦っているのでござる。吾輩も参戦せねば。
「ちょっと、聞こえてるの圭太郎!」
おっと、外野がうるさいでござるよ。これは敵のかく乱攻撃でござるか。
「圭太郎! まったくゲームばかりやって!」
コンセント(ブチィー
ブチュン
「うぎゃぁぁ! 吾輩と仲間たちのメェモリーがぁ! な、何をするでござるか!」
「聞こえてるんなら返事しなさい!」
横を見ると母上殿が怒っていらっしゃった。
「ひ、ひどいでござる母上。こちとら魔王を倒すという重要な使命が……」
「いつまでも家でダラダラしてないで、ちょっとは手伝いなさい!」
「だらだらはしていないでござる、日夜家を守っているでござる」
「はいはい、夕食のお使い行ってきて。」
「……」
母上殿、吾輩の扱いがぞんざいではなかろうか。まあ、行くのでござるが。だって行かなければ働けとかうるさいし。
父親がローンを組んで買ったという一軒家を出て近所のスーパーまで国道沿いに歩いていく。
近くにコンビニとかあればいいのでござるが……しかし、家をローンを組んで買うとか正気でござろうか。吾輩社会の歯車にはなりたくないのでござるよ。
おっと、そう思っている間に信号が赤に変わりそうでござるな。速く渡らねば。
横断歩道を駆け足で渡っていくと、
おぉう、車線を逆走したトラックが向かってくるでござるよ。これはあれでござるか。トラックにはねられて、世の不条理を哀れんだ神様によって異世界転生。チートキタコレでござるか。
しかし、痛いのは嫌なので華麗に回避するでござるよ。
「スティック倒してボタンを押すと緊急回――――ヒデブッ!!」
ピチュン
無論現実はそんなに甘くはない。ほぼ引きこもりの運動不足野郎に緊急回避などという迅速な動きができるわけがない。
こうして山本圭太郎という青年は対向車線にはみ出した暴走トラックと信号待ちに停車していた大型トラックにサンドイッチされこの世を去った。
「――――はっ……ここはどこでござる。」
目を覚まして辺りを見渡すと白しかない世界が広がっていた。ほ、本当にどこでござるか!
「はい、次の人」
何もない空間から、声が響いたでござる。幽霊でござる。おかーちゃーん!
すると周辺が緑っぽい光のラインが走ったかと思うと、まるで企業面接のような部屋に居たでござるよ。目の前にいるのはスーツを着た老人男性。天使みたいな羽根を生やしているでござる。この年でコスプレとは少々キツイんじゃないでござるか? それに似合ってないでござるよ。ププーー
「山本圭太郎君ね。君死んだの覚えてる? これから別の世界に行ってもらうから」
は? 何を言っているのでござるか。このご老人。
「あ? 分からない? えーと確か今風に言うと異世界転生チートってやつだよ。分かる?」
そ、そう言えばトラックにはねられたような気がするでござる。
「え? ほ、本当でござるか。マジで死んだんでござるか。異世界へ。チートでござるか。や、やったでござるーーーー!!」
何か目の前の老人がかわいそうなものを見る目をしているでござるが関係ないでござるよ。神は死んではいなかった!!
「うんうん、最近の子は理解が速くて助かるよ。じゃあ、こっから3つ選んでね。」
おや? 何でござるかこれは? パソコン? タブレットでござるか? ムフフ―こういうの得意でござるよ。
「……え? 3つでござるか?」
画面の中にはいかにもなチート能力がたくさんあるが3つだけでござるか。ケチ臭いでござるねー。
「これも規則でね。まあ、どれも良いものなのは保障するから。」
「むぅ、どうするでござるか」
たくさんあって目移りしてしまうでござる。
「あ、そうだ君。勇者とか興味あるかい?」
「ゆ、勇者でござるか。もちろんでござる!」
「そうかい。実はね、今から行ってもらう世界のある国が召喚魔法をやっていてね。本来なら、君のいた世界の誰かがランダムに選ばれるんだけど、それだと元の世界で行方不明扱いになっちゃって問題なんだよ。だから君をその召喚に割り込ませたいんだけどいいかな?」
「あ、ハイ。オッケーでござるよ」
老人が何か言っているが生返事でござる。やはり勇者というからには仲間の少女と共に魔王を討伐でござるか?
ではやはりこれなど良いでござるな。
「あ、決まったじゃあ送るから。準備はいい?」
「オッケーでござる。ああ、ワクワクするでござる。」
「じゃあがんばってねー」
だんだんと老人の声が遠くなって意識が引っ張られるような感覚と共に薄れていくでござる。さあ、異世界へ出発でござる。
こうして、山本圭一郎は『聖剣』『聖盾』『聖鎧』のチートをもらい異世界へ旅立ったのだった。
さてこの山本君。本編に名前だけは出てたのでちょっと書いてみようかと思いつきで書きました。なので今後主人公との絡み方とか全然考えていません。もしかしたらこの閑話で終わってしまうかも……
山本君の明日はどっちだ!