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36 ようやく外に

「そ、そうじゃ。その封印されていた奴の死体はどこにあるんじゃ!? も、もう持ち去ってしまったのか!?」

「ああ、それならここにあったお金になりそうなものと一緒に奥の部屋に放り込んであるんじゃないの? 確か後で検証するとかなんとか言ってたような気がするし……」

「な、なんと、真か!?」

「え!? 財宝もあるのか!?」

「マジで残ってるんっすか!?」


 あ、学者先生が復活した。あと3人組冒険者もなんだかテンション高くなった。


「奥の部屋というのはどこじゃ?」

「……なんでいちいちジジイの質問に答えなけりゃならないのよ、別にあんた――――いっ、痛ぁいぃ……あ、あっちですぅ」


 ちょっと、金棒でケツバットしてやったら素直になった。奥の部屋とやらを指差している。


「ひゃっほい!」


 学者先生がジジイとは思えぬ身のこなしで突撃していった。


「俺らも行くか?」

「そうだな、お宝が残ってるかもしれないしな」

「このお姉さんはどうするんすか?」

「あのぉ、ご主人様ぁ、これを」


 リリスのお姉さんが鎖を差し出してきた。……なんだ。鎖をたどって行ってみるとお姉さんの首輪につながっている…………これをどうしろというんだ? 引っ張るのか?


「じゃあ行くぞ、…………ティーア」


 何と呼ぼうか迷ったけど、ビッチの変態趣味な奴なので呼び捨にしてしまった。従魔なんだしいいよね。使い魔と同じなら、お姉さんとか敬語も変だし……だめだったら言ってくるだろう……多分


「はいぃ」


 はいとは言ったが、その場から動こうとしない……これはなんだ? 何かを期待する眼をしているな……あんまり分かりたくないな。

 鎖を引っ張る。


「あっ、ご主人様ぁ」


 色っぽい声を出しながら今度はちゃんとついてきた……扱いが難しいなこいつ。あほっぽいのに。


「あの、ノワール様。私も鎖とかで繋いでいただいた方がいいんでしょうか……」

「いや、ソレイユはいいから。」


 本当にいいから。なぜそんな悲しそうな目をするのかなぁ?



 たどり着いた奥の部屋とやらには、まばゆいばかりの黄金が――――


「無いな……」

「そうっすね」

「なんだこりゃ?」


 妙なポーズをした土偶みたいなものとか、砂埃で汚れた食器みたいなものとかがあった。


「あ、でもこれ地味に装飾に宝石とか使ってるな」

「こっちも埃かぶってるけど、これ白金じゃないか?」

「こっちの石って砂埃で汚れてるけど宝石じゃないっすか?」


 なるほど、ちゃんとお宝はあったようだ。長い年月で汚れてて見た目分かりにくかっただけか。


「こらっ!! むやみに触るんじゃない!! 貴重な古代の遺産じゃぞ」

「……でもこういうのって、発見者のものになるんだろ?」

「確かそうだったっすよね」

「…………むぅ、分かった分かった、ここをちゃんと調査してそれらの相当額を後で払えばいいじゃろ! だからむやみに触るな!」

「……まあ、俺らは金をもらえればいいんだけどさ……」

「そうっすね、なんかあの先生怖いっすよ」

「あれだろ、考古学的価値ってやつじゃねぇの?」

「私は、分け前をもらえるのであれば問題はない。」


 まあ、そんなこと言いつつ心の中ではワクワクなんですけどね。いくらぐらいになるんだろうか?


「ところでさ、お宝があったのはいいんだが……どうやって帰るんだ?」

「…………」

「何帰ろうとしておるんじゃ! これからここを調べるんじゃろうが!」

「いやいや、ここ結構広いぞ。1日2日じゃ終わらないだろ。そんな長居するための準備してねぇよ。それに先生だって1人でここ全部調べるつもりなのか?」

「む、むぅ……」

「おい」


 グイッと鎖を引っ張る。


「ハァハァ、何でしょうご主人様ぁ」

「ここの出口は?」

「……知りません。私はここに転移の魔法陣で連れてこられただけですから。……ああ、この役に立たない私にお仕置きを……」


 お仕置きはしないが……まいったな、出口がわからないのか。


「どうする?」



 結果として出口はすぐ見つかった。最初の丁字路のところを反対側に行けばよかったのだ。そこを行くと……垂直に切り立った崖の中腹辺りにある横穴につながっていた。


「とりあえず降りるか」


 テント固定用の金具を崖の岩に打ち込んで、そこから縄を垂らす。地上までは10mといったところか。


 地上まで降りた後、あの横穴を見上げるが、


「あれ? 無いぞ」

「本当っすね」

「どういう事じゃ?」


 崖の横穴が見つけられなかった。今降りてきた縄をたどっていくと岩の中へ消えている。デュロックが再度登って確かめてみるようだ――


「横穴はあったんだが、目には石壁に映っているな……幻惑系の魔法じゃないかな?」

「そんなものがあるのか?」

「さあ? 俺も魔法は詳しくないから」

「まあ、もう一度行けるなら問題はないの」

「じゃあとりあえず今日は帰るか? 本格的な調査に私たちは不要だろう」

「そうだな」

「で? ここどこだよ」

「…………」



 その後、私がジャンプして町の方角を確認しナビしながら帰ってきた。この崖、結構街から離れていたみたいだ。街に着いた時にはもう昼過ぎだった……一晩遺跡の中で明かしたことになるのか……通りで崖から外を見た際周囲が薄暗かったわけだよ。日の出前だったのか……腹減ったな。


 ◇◇◇


「護衛依頼を完了した。」

「はい、了解しました。」

「あと遺跡の内部とお宝の方を発見したんだが、ギルドマスターに取り次いでもらっていいか?」

「……え? 発見されたんですか……少々お待ちください。」


 そう言って、奥に消えていくギルド職員。おなじみの光景になりつつあるな。

 ……あと、周りが私たちをガン見してるんだが……なんだ? お宝の分け前がほしいのか……違うな視線は私と……ティーアに……あ、そういや服がうす布一枚だけだったな。あと、首輪から伸びた鎖を私が引っ張っているのだが、そっちは……本当にどうしよう。


「おい、ちょっとこれ羽織っておけ」

「はいぃ」


 ティーアにマントを貸して羽織らせる。


 しばらくして戻ってきたギルド職員より、


「ではみなさんどうぞこちらへ、ギルドマスターがお待ちです」


というわけで全員で――発見者の3人組冒険者、私にソレイユちゃん、ティーアの計6名でぞろぞろと上階へ行く。


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