33 遺跡 3
「気をつけろ! ゴーレムだ!」
冒険者3人組がそれぞれの武器を構える。
こいつらは〈気配察知〉にかからなかったな。
なんだよ、ブォンとかSFチックな音させやがって、とりあえず鑑定だ。
名称:ゴーレム
種族:人工魔物
レベル:25
装備:岩
説明:分類は魔物となるが、人に作られたものであり、自然発生することはほとんどない。体が無機物でできており痛覚がないので防御力が高い。体の中に核があるのでそれを壊すと機能を停止する。
ほう、核があるのか。確かゴーレムって地球では体のどこかに文字があって頭文字を削ると機能停止するとか聞いたことがあったのだが、こっちのゴーレムは違うのか。
2体とも同じステータスだ。ところで装備欄の岩ってなんですか?
とりあえずソレイユちゃんと学者先生を守るよう移動する。
3人組冒険者とゴーレムはもう戦闘に入っている。防御力が高いというだけあってノリーカーの放った矢は簡単にはじかれている。デュロックの剣もあんまり聞いているようには見えないな。ゴトランドは自慢の斧で結構善戦していた。たぶんパワーが一番あるゴトランドが一番今回の相手として相性がいいのだろう。着実にダメージを与えているように見える。ただ、さっき確認したが痛覚がないんだよな、相手。
ゴーレムの方は攻撃力と防御力は高いようだが動きが遅い。ただ2体いるので3人組の方が押されている。
「ノ、ノワール様……」
「分かっている。ちょっと行ってくる。ここを動かないように。」
「はい」
「なんじゃ、お嬢ちゃんも戦うのか?」
「私も冒険者なのでね。学者殿はここでソレイユと待っていてください」
そう言って駆けていく。
ゴーレム2体のうちゴトランドさんが相手にしているのは後回しにして、デュロックとノリーカーが相手をしている方は攻撃が通らなくて苦労していそうなので、そっちに駆けて行って、いつも通り関節部を狙って金棒をフルスイング――
バガンッ!!
見た目通り岩製だったようで、金棒が当たると破片をまき散らしながら砕けた。そのまま倒れる。
ゴーレムって痛覚がないようだし、この場合どうなるんだろうと思って見ていたら、起き上がろうとしているらしい。何度も砕けた方の足を動かしている。これは自分の状態がわかっていないのか? 何度も何度も起き上がろうとして失敗している。なんというかプログラムされたロボットみたいだな。
「おう、助かったぜ」
「デュロックとノリーカーはゴトランドの援護に!」
「分かった!」
「分かったっす!」
核があるという説明だったが……どこにあるんだ? やはり心臓のあたりだろうか?
とりあえず、いまだ立ち上がろうとしているので腕と足の関節部分を砕く。力を籠めなければ砕けない程度の頑丈さはあったようだが、私にしてみれば特に問題のある相手ではなかった。
腕と足を失って動きを止めたゴーレム。いや、動こうとしているんだろうが、腕と足が無いので何もできないといったほうが正しいか。とりあえず核を探そう。もう一体の方は……3人組が結構持ちこたえているみたいなのでもう少し任せようか。
取り合えず、相手の上に乗って、胸のあたりを金棒でガンガン砕いていく。普通の生き物でやったらグロ画像だが、相手は岩製のゴーレムだ。血も出ないし内臓もないぞう…………特に気にはならない。
特にそれらしきものはなかった……もしかして見落としたのだろうか? 少し移動して頭を蹴ってみる。
ギギッ!
こっちを見た。まだ動いているようだ。うーん、となると頭か。
今度は頭をガンガン削っていく。
「お、あった?」
削っていくと、頭の中心あたりに赤い球体があった。大きさはバスケットボール程だろうか? これが核ということでいいんだろうか。
砕いてみる。
……手足に頭まで潰してしまったので、もう動いているのか、いないのかの確認ができない……失敗したな。
もう一体の方で確認してみるか……
もう一体の方は3人組がいまだ戦っている。善戦しているようで。ゴーレムの方は片腕を失っており、残った腕で攻撃を行っているところだった。
「よし、ノリーカーそこにいろ!」
「え! なんすか?」
ちょうどノリーカーが攻撃を加えそうだったので、声をかけて止めさせる。と同時にゴーレムが振り下した腕を足場にジャンプして顔の高さまで行く。
そしてフルスイング!
ガァンッ!!
ゴーレムが下あごを残して頭を吹っ飛ばされる。おそらく核も吹き飛ばしたと思うのでいったんゴーレムの体を蹴って距離を取る。
ズズンッッ!!
糸の切れた人形みたいにゴーレムが倒れる。うん、ちゃんと核を破壊できていたようだ。
「お? なんだ?」
「動かなくなったぞ?」
「ああ、頭に核があったんだよ。それを破壊したから止まったんだ。」
「そうなのか」
「ああ、……知らなかったのか?」
この3人組、私より冒険者歴が長いのに知らなかったのだろうか?
「いや、核があるのは知ってるが、普通は胸にあるもんだと……」
「……え?」
なんか、普通のゴーレムは最初の予想通り胸に核があるらしい。……こいつらは特別製だったのかな?
「終わったようじゃな」
後ろから、ソレイユちゃんと学者先生が近づいてきた。
「ああ」
「じゃあ後は、この扉じゃな」
ゴーレムの後ろには無駄に大きく豪華でそして年季の入った扉がある。今は砂埃で汚れ所々錆びたりもしているが、元は煌びやかなものだったのだろう。中に何かありますよ。と言っているようなものだ。
「これどうやって開けるんっすか?」
「ちょっとまて」
そう言うと、学者先生は扉を調べ始めた。表面のほこりを払ったりしている。扉の表面には何か分からない絵が描いてあるようだが……解読でもするのか?
「ふむ、ここが封印の間で間違いないだろう。これを開けるには――」
少し扉を調べていた学者先生が何か言いだした。封印の間? ああ、何か封印されてるんだっけ? それより時間がかかりそうだな。
「学者殿少しいいか?」
「なんじゃ?」
壁をにらみつつ声だけで返事をしてくる。
「この扉、普通に開けたらだめなのか?」
「……何?」
「いや、カギなどがかかっていないのなら、普通に開けられるのではないかと……」
「……この大きさじゃぞ。開けられるのか?」
「とりあえずやってみる。無理なら別の方法を考えればいいのでは?」
「ふーむ、わかった。」
全員を少し離して、両手を扉に押し当てる。
グッ! と力をかけると、扉が少しずつではあるが開いていく。鍵とかかかっていなかったようだ。ただ蝶番が錆びているのかギギギ! と結構大きな音を立てている。
「おお、すげえ」
「お嬢ちゃんすごいな」
そしてしばらくすると完全に開いた。そこに広がっていたのは――
「おお、すげー」
「ここ、なんすかね」
「この明るさだと松明必要ないな」
大きな広場があり、中心に結構大きめの神殿のようなものがあった。しかも天井から生えているクリスタルのようなものが発光していて昼間のような明るさがあった。地面には日光もないのに草が生えている。
「なんだここ」
「おい、なんだあれ?」
神殿の中心には煌びやかな台座がありそしてそこには美女がいた。