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 昨日、武器を持った奴がいきなり扱えるわけがない。というわけで、今、ソレイユちゃんと一緒にギルドの練習場に来ている。講師は途中で捕まえてきた『燃える刃』のゴトランドさんだ。他2人が昨日食べたものに当たって寝込んでいるため、ギルドで暇そうにしていたのを連れてきた。あわよくば誰かと臨時のパーティーを組めないかと思っていたらしい。

 ゴトランドさんはさすが年長というだけあって、自分の武器である斧以外に、剣や槍なども多少なら扱えるらしい。


「で、こっちの奴隷のお嬢ちゃんに槍を教えればいいのか?」

「ああ、そうだ。頼む。時間があれば、ナイフの使い方なども教えてやってくれ。終わったら1杯おごろう」

「まあ別におごらなくてもいいけどな、これぐらい」


 そう言って、ソレイユちゃんに向き直る、ゴトランド。


「じゃあちょっと槍を構えてみな」

「は、はい」

「うーん、右腕はもっと前だな、両腕の間隔はこれくらい、そして基本は突き、その槍なら払うように斬ることもできる――」

「はい!」


 そう言って丁寧に教えていくゴトランド。うん。これなら問題ないだろう。特に奴隷だからといってひどく差別しているようにも見えない。面倒見のいいおじさん? お兄さん? という感じだ。そういや年上っぽいが何歳なんだろう。


「じゃあ私はギルド内にいるので終わったら来てくれ」

「なんだ、見て行かないのか?」

「ああ、少し調べ物をしようと思ってな。」

「そうかまあいいや、わかった。」



 そして私は、ギルド内へ戻って一般開放している本棚へ行く。


「ふむ、これなんかいいかもな」


 手に取ったのは、『火魔法~入門編~』

 実は以前から興味があったのだ。魔法。ただスキルにないし、教えてくれる人の当てもないので何もしてこなかったが。

 他に風魔法と水魔法の本も置いてあった。

 本を開いてみると本当に最初から説明してくれていた。ありがたいことだ。少しの間その本を読んでいたが、次の章の『実践してみよう』という言葉にバカ正直に実践してしまった。


(ファイア)!」


 ポッ! と指の先に火がともる……おお、できた。ただ、いきなり声を上げたので周りの注目を集めてしまった……

 今度からもう少し考えてやろう……

 この本は本当に入門だけで魔法の使い方というよりも、魔法を使うための下準備や状態などに重きを置いているようだった。なので、書いてある魔法は火を起こす『ファイア』だけで、あと少し説明の例として火の玉を飛ばす『ファイアーボール』が出てきたぐらいだった。まあそれでも使えることは分かった。本当に小さな炎だったが。


 ついでに『風魔法~入門編~』というのも読んでみた。こっちも火魔法の本と同じような内容だった。本の中で教えているのは、風を起こす『ウインド』と、同じく例として『ウインドカッター』が出てくるぐらいだ。


本格的な魔法の本というのはここにはおいていないのでどこかで購入するか、誰かに教えてもらう必要があるのだろう。



「おい、お嬢ちゃん、もういい時間だし切り上げてきたんだが」


 気づくと、横にソレイユちゃんとゴトランドが来ていた。


「もうそんな時間か、わかった。お礼に夕食は奢ろう。」

「いや別に、そんな礼はいらないが」

「気にするな。どうせ我々も食べるんだし、一緒に食べればいいだろう」

「そうか? じゃあお言葉に甘えるかな」


 そう言って3人で夕食を取りに行ったのだが、なぜかギルドを出る際に睨まれた……ゴトランドが。

 あ、ちゃんと夕食は奢ったぞ。


 ◇◇◇


 次の日から狩に行くことにした。ゴブリン、コボルト、オークについては常時討伐依頼なので、ギルドには寄らず、直接、東の森に行く。

魔物の出る森の奥まで歩いていくと時間がかかるのでそこはショートカットだ。ソレイユちゃんを担いで走っていく。


「あの、ノワール様、自分で歩け――うきゃっ! 速い、速いですっ」


 ちょっと騒いでいたようだが、あまり気にしないでおく。それよりも早く奥の方へ行って、魔物をたくさん狩ろう。


 装備はおととい買ったやつだ。私はガントレットに金棒。ソレイユちゃんは槍にラウンドシールド、胸部分に革鎧という感じ。


 1時間ほど走ったころ結構たくさんの魔物の気配がしてきた。結構ばらばらにいるな。こっちはソレイユちゃんもいるので1~2体でいる奴が狙い目だ。

 とりあえず相手からある程度の距離を取って、止まる。


「大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。」

「よし、じゃあ行くぞ。近くに魔物がいる。ゆっくりついてこい」

「わ、わかりました。」


 ソレイユちゃんがギュッと槍を握る。緊張しているなー。


「相手は1匹だ。もう少し気楽でいい。」

「は、はい」


 全然緊張が抜けていないな。


 少し歩いていくと、いた。ゴブリンだ。ああいう弱い魔物って群れると思っていたのだが結構バラバラにいるよな。なんでだろう?


「よし、茂みを出るぞ。その後、あいつを転ばせるから攻撃するんだ。分かったな。」

「はい」


ガサガサッと音を立てて茂みを出ていくと、さすがに相手も気づいたようでこっちを見る。


「グァ!」


 おっと、いきなり向かってきましたよ。

 こっちが女性2人だからだろうか、2対1なのに、手に持った棍棒を振り上げながらいきなりこっちに向かって走ってくる。

 ただ、スキルなどで自分が対処できると分かっているのでまったく恐怖心など湧かない。

 とりあえず、足を引っ掛け転ばせる。


「ギャッ!」

「よし! 突け!」

「は、はい!」


 チクッ! とか音がしそうなほど弱い攻撃だった。槍の刃部分が半分も刺さっていない……まあいいや。


 ゴッ! ゴキッ!


 金棒で首のあたりを叩くと首の骨の折れる音がする。


「うーん、もう少し力を入れながら突き刺した方がいいな。……大丈夫か」


 もう息絶えている、ゴブリンの右耳(討伐証明部位)を剥ぎながら言う。


「……は、はい……」


 うーん、やっぱりいきなりこういう事は、精神的負担が大きいんだろうか。今まで戦ったことすらないといってたしな。


「やはり、やめておくか? なんなら、他の採集依頼をしながら待っていてもらうという方法も――」

「――いえ、大丈夫です。やらせてください!」


 まあ本人がやる気があるんだし、それに、冒険者をやっている以上、今後こういう事があるだろう慣れておいて方がいいか。


 次に狙ったのは、同じく1匹でいたオークだ。だからなんで1匹でいるんだ、このザコモンスターは


「よし、私が動きを封じるので、とどめを刺してみようか。心臓は分かるな。そこを思いっきり突くんだ。いいな。」

「は、はい」


 やっぱり緊張が取れていないな。とか思いつつオークに近づいて行って両手両足を金棒で突く。力加減が大切だ。


 ゴキゴキゴキゴキッ!


「プギィィ!!」


 両手両足の骨を折られたオークがその場に転がる。不謹慎かもしれないが、ちょっと面白いな。


「よし、心臓を突け」

「はい」


 槍を両手で持って、思いっきり下向きに突く。グサッ! という音と共にオークが数回痙攣して動かなくなった。うん、この傷の深さなら問題ないな。

 オークは肉が売れるのでアイテムボックスに丸ごと放り込む。


「よし、次行くぞ」

「はい」


 そこからはもう同じような作業を続ける。1~2匹でいる奴を、転ばせたり、脚の骨を折ったりして動けなくしたところを、ソレイユちゃんが槍で突く。とどめを刺しきれなかった場合は私が刺す。そうやって10匹ぐらいを狩った。……ザコモンスターばっかりだけど、レベル上がるのか?

 あと、このやり方だと盾の使い方がわからない。くそ、槍の使い方と合わせて誰か他の冒険者に先に教えてもらっておくんだった。

 まあ、今更後悔しても遅いか、とりあえず今日はソレイユちゃんがモンスター狩りに慣れるのを目標にしよう。


「よし、次のステップに進もう。」

「次のステップですか?」

「そうだ、ゴブリンと1対1で戦ってみよう。」

「え、あの、大丈夫でしょうか」

「大丈夫だろ、ゴブリンだし。もし危なかったらフォローする。」

「……わかりました。」



 その後、同じように1匹でいるゴブリンを確認して近づいていく。


「あれだな。近くに他の魔物はいない。……さあ、頑張ってこい」

「はい!」


 そう返事をして1人で近づいて行ったんだが


「ギギャ!」

「ひっ!」

「怯えるな! 相手を見ろ! 槍の使い方は昨日習ったはずだ!」

「は、はい!」


 こっちを認識するといきなり襲ってきたゴブリンに対して、やはり腰が引けてしまっているが、声をかけるとちゃんと、槍を突き出した。


「ギャ!」


 ゴブリンはその一撃で沈んだ。


「よし、ちゃんと討伐できたな。よくやった」

「え、あ……」


 頭をなでてやると、くすぐったそうにしていた。かわいいな。犬とか猫みたい。


 その後、2匹目、3匹目と狩らせていったのだが、どうやらちゃんと自分より弱い相手だと頭でわかったらしい。5匹目ぐらいになると。ちゃんと腰を落とし、槍を構えて突いていた。


「今日はこれぐらいにしておくか。」

「あ、は、はい」


 ソレイユちゃんが、ちょっと疲れてきたようだし、昼が過ぎてから少し経つので今日はもう街に戻ることにした。


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