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27 集団討伐 3

 ハイ、今、目の前に大きなトカゲがいます。


 領主軍は後方で列を作ったまま待機。さらにその後方に、教会の回復魔法使いがいる。馬車隊は回復魔法使いと一緒だ。

 討伐対象は思ったより近くにいたらしい。しかも予想よりも大きいらしい。確かに10m以上とは聞いていたが、目の前の奴は全長15m以上ありそうだ。


「ギャオォォォォン!!」


 ロックリザードが吠える。迫力満点だ。こっちが殺気全開で近づいているからな。当然か。


「思ったよりデカいがそんなことは関係ない! 全員で囲い込め! 魔法使いと弓兵は援護だ! 噛みつきと爪に気をつけろ! あと、シッポもだ!」


 先行は予定通り冒険者だ。

 囲んでボコるという単純な作戦らしい。

 近接用の武器を持っている奴らが相手を中心に散らばっていく。その間、魔法使いと弓兵がそれぞれ攻撃を仕掛けるが、効いている気配がない。弓矢とかカン!カン! とか言う音と共にはじかれているし……動物の皮膚からする音じゃないぞ。魔法の方もファイアーボール的な何かが炸裂しても、表面が焦げているような気もするが、ノックバックする気配すらない。

 というか、攻撃のタイミングがてんでバラバラなんだがもう少し合わせた方がいいんじゃないの? そういや敵のレベルは、



名称:アイアンリザード

種族:魔物

レベル:45

状態:興奮

説明:皮膚が非常に硬いロックリザードの上位種。その皮膚の強度は鋼鉄をも上回るとされる。 さらに、顎の力が強くまた爪も鋭い。そのため、下位のドラゴンにも匹敵するといわれる戦闘能力を誇る。ただ、飛ばないのでドラゴンより討伐は楽です。


 おい! ロックリザードじゃないんだが!?


「おい! クライスデールさん!!」

「なんだ!? ……お嬢ちゃんはノワールちゃんか? ギルドマスターから聞いている。頼りにしているぞ。で、何か用か?」


 私は18歳なんだが、なんでみんなお嬢ちゃんというんだ? ……そんなことは後でいいか


「あれの名前が、アイアンリザードとなっているんだが今回の討伐対象で間違いないのか!?」

「なに!? 進化してやがったのか! 通りで魔術の効きが悪いと思ったぜ! おい!! 全員気をつけろ!! 相手は予想より手ごわいぞ!!」


 予想より手ごわいですましちゃうのかよ!


「確かお嬢ちゃん鑑定持ちだったよな。あれのレベルは分かるか?」

「レベルは45だ」

「そうか! ギリギリヤバイが大丈夫だ!」


 ヤバイの? 大丈夫なの? どっちだよ!?


「接近戦の奴ら!! 相手を斬って倒そうとは思うな!! 皮膚が異常に硬い!! 撲殺しろ!!」


 周りに散らばっている奴らは、うまい具合に、ヒットアンドアウェイ攻撃を行っている。一方、アイアンリザードの方は相手が多いからだろうか、多少攻撃に迷っているようだ。

 ……訂正、うまい具合に攻撃を行えているのは一部らしい。結構足がすくんでか攻撃しかねている奴らがいる。


「おい! さっさと攻撃しろ!! 行けっ!!」


 足がすくんでいる奴隷に無慈悲な攻撃命令を出している主人もいる。おい! そんなにがむしゃらに突っ込むんじゃない!


ビュッ!!


「ぎゃっ!!」


 鋭い音と共に振るわれたシッポが、がむしゃらに突っ込んだ奴隷を真っ二つにする。え?あのシッポ、刃物みたいになってんの? 

 さらに攻撃に加わっていた1人が武器で防御するもののシッポによって吹き飛ばされる。


「ぐぁっ!!」


 そのまま木にぶつかって動けなくなる。


「魔法使い! 足を狙え!! 動きを阻害しろ!! 弓兵は顔を狙え!!」


 クライスデールさんが叫ぶ。あ、ちゃんとした指示も出すんですね。

 魔法使いが足を狙い始めたため、爪での攻撃が鈍った。また、弓兵が顔を狙っているのでうっとおしそうにしている。


「よし! お嬢ちゃん! 俺らも行くぞ!!」


 そう言ってクライスデールさんも突っ込んでいく。武器は巨大な戦斧のようだ。


「うぉらぁ!!」


 ガッッィィン!!!!


 戦いが始まってから一番大きな音がした。それと共にアイアンリザードが顎からカチあげられる。

 ――って、冷静に見ている場合じゃないな。私もちゃんと参加しないと。

 魔法の合間を縫って接近。そのまま足関節へ剣で攻撃を、ちぇいあっ!


 パキィィン!


 …………うそ!? 剣が折れちゃった。真ん中から綺麗に折れた。

 いったん離れる。

 どうしよう。武器これしかないんですけど。


「グギャァァァァ!!」


 アイアンリザードが吠える。非常に大きな音と威圧感に何人かの足が止まる。


「おい! 止まるんじゃない!!」


「「ぎゃっ!!」」


 足が止まっているところに爪で攻撃され、2人程がまともに食らった。

 そのまま倒れる2人


「おい!! 動け!!」


「このぉ!」


 折れた剣を鞘にしまって、再度接近。さすがに武器がないので戦えませんとは言えない。素手でどこまでできるかはわからないが、やるだけやってみよう。

 とりあえず先ほど倒れた2人を追撃しようとしていたのと反対側の前足を思いっきり殴るっ!


 ガアァァァン!!


 おおよそ生き物を殴ったものとは思えない音がした。


「ガァアァァ!!」


 ――が、思い通り反対側の足に体重をかけていたのだろう。そのまま態勢を崩す。というか倒れた。


 ズズンッッ!!


「うぉっしゃー!」

「おい! うかつに近づくな!!」


 グチャ!


 ここが狙い目だと勘違いしたどっかのアホが、無防備に近づいて食われる。首は動くんだからうかつに近づくなよ! あとシッポも健在だ。ヒュンヒュンと鞭のように動かしており冒険者たちが近づけない。


「もう一発っ!!」


 ガチュィィィン!!!!


 後ろ脚も殴る。おそらく弱いだろう関節部分を殴っているのになぜこんな音がするのか!?

 ただ、素手でも攻撃した甲斐あって関節が折れたようだ。変な方向に曲がっている。アイアンリザードは起き上がろうとしているのだが、前足後足ともに片方ずつ折れているので起き上がれない。


「どらぁ!!」


 ガンッッッン!!


 クライスデールさんが再度頭を殴りつける。アイアンリザードが首を動かして必死に冒険者を近づけまいとしているが、殴られたダメージか、動きが少し鈍い。

 その間に私は相手と距離を取っていったん息を吐く――――


「――っぃいだぁぁぁ!!」


 痛い! 痛い! アイアンリザードを殴った利き腕がすごい痛い! 見てみると関節が増えてる、ビャァァァァまずいっ!


「ヒ、ヒール!……ハイヒール!」


 あわててヒールを使ったが、骨折だとこれじゃ治らないかもしれないのでハイヒールを使う。……ヒールの次にハイヒールだと、ミドルヒールが死に魔法になってるな。


 一気に痛みは引いたが、どんだけ固いんだよ! あいつ!


 ドッッ!!


 隙を見て攻撃を加えていた冒険者の一人がシッポに串刺しにされた。弱ってはいるが、それでもまだ油断できる状況ではないらしい。


 ドスッ!!


「ガァァァァァ!!」


 今、魔法使いの氷の槍みたいなものが目に直撃した。片目が完全につぶれている。


「よし! 頭を攻撃してる奴は死角に回り込め!!」


 クライスデールさんが攻撃をしながら周りに指示を出す。

 その間に再度近づいて腹のあたりを殴る!


 ガァン!!


 やはり弱そうな腹ですら固い音がする。ハイヒールを殴るたびに使う。手刀もやってみる。


 グキッ!


 痛っ! 突き指したっ!! ハイヒール!

 やっぱり殴る方がいい。1発、2発、3発、4発、5発――

 シッポの動きが鈍ってきたようだ。他の冒険者もわりと近づいて攻撃している。


 ドッッ!!


「ぐぁっ!!」


 必死に動かしている足の爪が肩をかすった。


「ハ、ハイヒール!」


 くそっ! 腹を殴っていてもなかなかダメージが通らない。皮膚の内側に脂肪とかあるんだろう。ちっ! 首だ首!

 移動して首を思いっきり殴る!殴る! 1発、2発、3発――


 ガンッ!! ガンッ!! ゴキンッ!!


 ん? 今変な音がしたな。

 いったん離れる。

 肩と腕がもうボロボロだ。衣服的に。肉体の方はハイヒールを絶えずかけていたので回復はしているが。


「よし! なんか知らんが動きが鈍ったぞ! 攻撃を続けろ!!」


 見ると、アイアンリザードが泡を吹いていた。動きも非常に鈍い。

 その後すぐにシッポの攻撃がやんだ。


 ズンッッ!!


 頭も力なく垂れた。


 どうやら終わったようだ。

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