25 集団討伐 1
今日も冒険者として依頼を受けに行くのだが、ソレイユちゃんどうしようか。……まあいいか、一緒に連れて行こう。私が何か依頼を受けている間、別に採集の依頼とかをやってもらっていてもいいしな。
冒険者ギルドにやってくると、何やら人が集まっていた。なんだろうかいつもよりざわざわしている気がする。……お、何とかの刃の3人組を発見。ちょっと聞いてみよう。
「すまない、何かあったのか?」
「え? ああ、……あ、ノワールさん」
「お、お嬢ちゃんも依頼を受けに来たのか?」
「お久しぶりっす、姉さん……とそっちの子は誰っす?」
ソレイユちゃんに気付いたようだ。まあすぐ隣についてきているからな。当然か
「ああ、ソレイユという。奴隷だな」
「そ、ソレイユです」
「ノワールさん奴隷を買ったんですか!?」
「お嬢ちゃん結構羽振りがいいんだな……まあ、あの実力じゃ当たり前か」
「いやそれはいいんだが、なんだこれは? 何かあるのか?」
「ああ、集団討伐依頼だよ。」
「集団討伐依頼?」
何か知らない単語が出てきた。なんだ?
「ああ、西の農業地帯の向こうの山脈は分かるな」
「ああ(名前は知らないが山があるのは知っている)」
「そこに、ロックリザードが出たんだよ」
「山を下りてきて農業地帯に被害が出たら困るからな。」
「だから今、冒険者を集めてる最中なんだ。なんでも30人程集めるらしい」
「教会からも応援を呼ぶって言ってるっす」
さらに聞いていくと、ロックリザードとは岩みたいに固いトカゲらしい。しかも大きさも10mを超え、ワイバーンなど下位のドラゴン種にも引けを取らない戦闘能力を誇るらしい。それを領主軍約30人に加えて30人程の冒険者で討伐するらしい。いま冒険者を集めている真っ最中だとか。さらに教会から中位……できれば上位の回復魔法を使用できる者を助っ人として何人か呼ぶらしい。
「ほう、3人も参加するのか?」
「いや、俺らは参加しないよ」
「参加の条件がDランクからだからな」
「俺がまだEランクなんっすよ」
「そうなのか」
ノリーカーはEランクだったのか
「お嬢ちゃんは参加するのか?」
「…………そうだな、参加してみるか。」
純粋に興味が出てきた。参加してみるのもいいだろう。下位のドラゴンというのがどの程度強いのか知らないが、60人程で討伐するそうだし、偉い人が多分それで十分な戦力と考えているんだろう。変なことにはならないだろう。……やばかったら逃げよう。
「あ、いたいた、ノワールさんちょっと、」
と思っていたらサレールさんがカウンターから出てきて私を呼んでいた。なんだろう? デートのお誘いとかだったらうれしいなー。女同士だけど。
「ギルドマスターが呼んでますので来てください」
チッ! あいつか、
「ああ、わかった」
カウンターの内側に入り、階段の方に行こうとするので、後ろを付いていこうとする。
「あの、ノワールさん。その子は?」
「え? ……ああ、私の奴隷でソレイユという。……連れて行っても問題ないか? もし口外できない話であればどこかで待って居させるが……」
「……まあ、問題ないと思います。」
「そうかでは、」
ソレイユちゃんも一緒に連れて行くことにした。
「ギルドマスター、ノワールさんを連れてきました。」
扉の前で、ノックをした後、ギルドマスターに呼びかける。
「ああ、開いているから入ってくれ」
「失礼します」
中に入ると当然だがギルドマスターがいた。なんで扉の近くにいるのかわからないが
「やあ、ノワールさん久しぶりだね。どうだい?一緒にしょ「で? 何の用だ」
「つれないなぁ、まあいいや。とりあえず座って」
椅子をすすめられたので、とりあえず座る。
「おや、そちらのお嬢さんは?」
「あ、あの、私はノワール様の奴隷をしていますソレイユと言います。」
こっちが何か言う前に、ソレイユちゃんが自己紹介をしてしまった。
「そうなのかい。まあいいや、一緒に座って座って」
「え? あ、はい……失礼ます」
ソレイユちゃんがすすめられた席に座る。椅子に座るということを覚えてくれてよかったよ。
ギルドマスターも奴隷だということで何か気にした様子もないな。こういうのは慣れているのだろうか。
「まあ、場合によっては冒険者のほうが汚いからね。その点、ソレイユちゃんは綺麗にしてるね。」
確かに、たまに鎧とかすごく臭い奴とかいるもんな。
「それで、何の用だ?」
「今回の集団討伐依頼の件はもう聞いているかな?」
「ああ、おおよそのことは聞いた」
「そうか。では、ノワールさんは参加するのかな?」
「ああ、そうだな。参加しようと思っている。」
「そうか、なら回復魔法の件だが……使ってもらって構わない」
「いいのか? 私は教会とか興味ないが」
「ああ、領主に話はつけてある。この領にいる限りは領主が便宜を図ってくれる」
「……あと、私は討伐依頼に興味があるので回復専門になる気はないぞ?」
「ああ、そっちは教会から助っ人を呼ぶからね。手の空いているときで構わないよ」
「……分かった。手の空いているときだけでいいのであれば、」
「そうか、助かるよ。今回の討伐は人数をそろえているとはいえ無傷でとはいかないだろうからね。」
「そうなのか、領主軍と冒険者合わせて60人程だと聞いたが」
「逆に、それだけいないと倒せない相手なんだよ。教会の方も中位回復魔法の使い手までしか出せないそうだしね。」
「そ、そうなのか……」
なんか、すごく強いらしいというのが今分かった。やっぱり、やばくなったら逃げよう。
「えっと、じゃあこっちの話は終わりだね。領主の方にも伝えておくし、依頼の参加手続きもこっちでしておくよ。」
「そうか、助かる」
「あ、あの!」
いきなりソレイユちゃんが声を上げた。今まで静かにしていたが……なんだろう。
「わ、私もノワール様と一緒に行ってもいいでしょうか!?」
「は?」
何を言っているんだろうこの子は、
「いや、特に連れて行く気はないが、……討伐の間は宿で待っていてもらおうかと……」
「ふぇ、……あの、い、一緒に連れて行ってください!」
「……えっと、なぜ一緒に行きたいんだ?」
「ノ、ノワール様と離れたくありません!」
あれ~? 何かロマンチックなことを言われたぞ。意味を考えると全然ロマンチックじゃないが、
「ノワールさんは慕われているんだね。その子は戦えたりするのかな?」
「……レベルは低かったはずだ。……え? 戦えるの?」
「…………いえ、戦いとかやったことありません……」
「えーと……」
「まあ、山の麓までは馬車で行くから、そこまで一緒に行って、討伐中は馬車の中で待っていればいいんじゃないかな。御者の人には言っておくよ」
あれ何でギルドマスターはそんな提案をするの?
……でもそれでもいいかもな。もしあれなら私が補佐しながら一撃ぐらい相手に攻撃を食らわせてレベルを上げるというのもいいかもしれない。それでレベルが上がるのかどうかは分からないが。そもそもレベルが上がるということについてもよく分かっていない。いや、相手を倒したら上がるのは知っているんだが、複数人で倒した場合、経験値? みたいなものは均等に分配されるのだろうか? それとも与えたダメージによって変わってくるのだろうか。ちょっと試してみてもいいかもしれないな。やばくなったら逃げるということで(大事なことなので何回でも言うよ)
「まあ、おとなしく待っているというのなら……」
「あ、ありがとうございます!」
「ふむ、ではそういうことで」
「ああ、これを、今回の集団討伐依頼の依頼表だ。詳細が書いてあるので読んでおくといい。」
「分かった」
ギルドマスターに一枚の紙をもらって、今度こそ部屋を後にした。
依頼表を読むと、集めた冒険者は明後日の昼にギルド前集合らしい。その後、ギルドの用意した馬車で山の麓まで移動。1夜の野営をして次の日の早朝から山へ入り対象の討伐を行うということだった。
領主軍との連携は特に必要ないらしい。ただ、冒険者が先方を務めるとのことだから、もしかしたら、冒険者が弱らせて領主軍が仕留めるといった感じなのかもしれない。
教会の回復魔法使いは馬車と一緒に山の途中あたりで、対象から一定の距離を保って待機して、怪我をして戦線離脱してきた者を治療という感じだ。
「なるほど、とりあえず野営に必要なものを買いに行かなくてはな」
この前、ゴブリン軍団を倒した際に1晩外で過ごしたが色々と足りなかった。まずテントと毛布、あとは食事だな。保存食を食べたが固くてしょっぱかった。つまり不味かった。食べ物で1~2日、日持ちのするものなら探せばありそうだし、それに……アイテムボックスって時間が止まったりしないかな?
ちょっと前に採ってアイテムボックスに放り込んだままだった薬草を取り出してみる。……特に枯れてたりはしないな。まだ葉が水分を含んでいる。これは、アイテムボックスの中は時間が止まっている。もしくは、時間の流れがゆっくりだということだろう。それに他のものと混ざったりもしないから、買った物をそのままつっこんでも問題ない。……あれ? スゲー便利な能力じゃね? これ
とりあえず、テントと毛布あと、水の入った水筒とサンドイッチみたいな食べ物を買って、すべてアイテムボックスに放り込んでおいた。念のため食料は数日分買い込んでおいた。あと、ソレイユちゃんにも冒険者用の動きやすい服のセットとかかな。