23 奴隷の扱い 2
朝食を食べ終わった後、再度部屋に戻ってきていた。そして椅子に向かい合わせて座りながら質問していく。
「さてと、昨日も言ったとおり君の主人となったノワールだ。いくつか質問したいことがあるが良いかな」
「あ、はい、 大丈夫です。」
「まず、奴隷解放についてだ。君は解放されたいと思うか? 思うならそう言ってくれ、手続きをしてくる」
「ぶぇぇぁ――」
いきなり泣き出した。
「お、おい、どうした!?」
「ぅぇえ、ず、捨てられ るんですか、わだじぇぇぇ」
「いや、別にそんなことは言っていないが。希望するかしないかの話だ。」
「捨て ないでくださぃぅぇぇ」
「分かった分かった、奴隷からの解放は望まないということでいいんだな」
「はいぃぃぃ……」
すこし落ち着くまで時間がかかった。
「落ち着いたか? 希望を聞いただけだ。なぜあんなに泣いたんだ?」
「あの、その、奴隷は解放 されても、その履歴 は残ります ので、どこ に行っても1人では生きていけない と聞いたことが……それに……こんな 体ですし……」
そう言いながら左腕を見る。ああ左腕なかったね。片腕で1人暮らしは確かにしんどいだろう。……ん? 1人暮らし?
「ご両親などはいないのか?」
「……もう死に ました」
「そうか、すまなかったな」
「い え 大丈夫 です」
「では、まずは君の名前だ。……奴隷商人からは奴隷の名前は主人が付けるものだと聞いているが間違いないか?」
「はい、奴隷はご主人様 に名前を付けて もらいます」
「ふむ、ちなみに奴隷になる前は何という名前だったんだ。」
「……ソルという 名前でした。」
「塩?」
「ソル、です。」
「あ、ああ。ではその名前を名乗ればいいんじゃないか?」
「いえ、以前の 名前は奴隷になった時点 で名乗ることを禁止されます。です ので、ご主人様 につけて いただくしか……」
「……そうか。では…………」
え? やっぱり私が付けるの? ペットに名前を付けるんじゃないんだから何かいいのは……
「……では、ソレイユというのはどうだろうか?」
「ソレイユ ですか」
「そうだ。嫌なら行ってくれ。変えるから」
「い、 いえ、ソレイユ いい名前です。」
「そうか、気に入ってくれたならよかった。」
ちなみにソレイユとはフランス語で太陽のことである。ドイツ語やフランス語のかっこいい単語は任せろ。色々調べたからな。主に中二ぐらいのとき。ぶっちゃけ前の自分の名前から取っただけである。あ、自分につけてもよかったなこの名前。カッコいいし。……え? カッコいいだろ?
「あと、私は普段冒険者として活動している。そのため、昼間など宿で留守番をしていてもらうこともあるかと思うが問題ないか?」
「は い、大丈 夫です。」
「……後は、文字の読み書きはできるか?」
「はい、 できます」
「そうか」
奴隷商人さんが商会から仕入れたとか言ってたからね。計算とかもできればいいんだが……
「では、とりあえず今日は君の服を買いに行くぞ」
「え? あの、そこまで して もらわなくても」
「気にするな。むしろあのボロ布は汚いからな。私が嫌だ。」
「……はい」
外を歩いていると、なるほど奴隷の首輪をつけている人を時々見つける。街に来たときはチョーカーみたいなおしゃれかと思っていたのだが、よくよく見れば結構質素ななりをしている。首輪だけごつくておしゃれなんてちぐはぐ具合だ。奴隷商人がこの街に来たということは、この街にも奴隷を売っているお店とかあるのだろうか? 見たことないけど。まあいいや、そんなとこ行くことないし。
さて、やって来ました。毎度おなじみ女性用下着店。こちらでまずは下着を購入だ。すいません。この子の下着5日分適当に。こう言っておけばいい。私はいまだ女性用下着なんぞ分からんからな。あ、でもエロい下着とかは分かる。買わないけどな。――え、店員さんの持ってきたやつ、なんか生地が安っぽくないですか? 作りもいまいちだし。え? 奴隷用ならこれで十分? いや奴隷用とかいいんで、普通の奴持ってきてくれます。
そう言うと驚かれた。なんでだ? いやいやソレイユちゃんなんで君まで驚いてるの? ここにきてまさかのアウェー。どうなってんだ。
まあ、とりあえず普通の下着5日分を購入し、
続いてやってきました、こっちに来て初めて服を買った女性用服店。すいません。この子の服上下5日分動きやすい服で。こう言っておけばいい。――あれ? 何でこっちでもそんな質素な服が出てくるの? え? 奴隷用? だからいいって。普通の服持ってきてよ。
奴隷用の質素な服やら下着やらが存在したため、ちょっと時間がかかってしまったが普通の服と下着を購入できた。普通は奴隷に着せるようなものではないらしいが。さすがに14歳の少女をザ・奴隷というような恰好で連れまわすのもな。こっちがいたたまれないというか。お巡りさんこいつです。とか言われそう。……まあこっちじゃそれが普通なんで言われないんだが、私の精神衛生上よろしくない。
あと、自分の服も数着、新調しておいた。また血で汚れるかもしれないしな。
やって来ました。靴屋。おじさん、この子の靴、森の中とかでも動きやすい靴適当に。今度はちゃんとした奴を持ってきてくれた。奴隷は靴を履かないそうだから、奴隷用というのがない? そうですか。
その後昼食を屋台で簡単にとって、あとは私と同じ洗面用具一式を買って、一度宿屋に戻った。
そういや、買い物の途中にいらない樽をもらっておいた。これに水を入れてアイテムボックスに入れておくのだ。そうすれば水場のない所でも魔石などを取り出した後の血汚れを洗ったりできるしな。
「とりあえず、着替える分はここに置いておくぞ。あとは、私のアイテムボックスに入れておくので、必要になったら言うように」
そう言って買った物をアイテムボックスに片っ端から放り込んでいく。
「あ、あの、ご主人様はアイテムボックス持ちだったのですか?」
「ん? ああ、そうだな」
おお、驚いているな。やっぱり珍しいんだろう。
「ああ、そうだ上はちょっと着ないでおいてくれるか。その前に確認したいことがある。」
ソレイユちゃんが下着を着たので少しストップをかける。……しかしこうしてみるとやっぱり細い。もう少し栄養のあるものを食べさせないとダメだな。
「あ、はい……」
少し怪訝そうな顔をしたものの、すぐに顔が真っ赤になった。
「じょ、女性同士で ですか! あの! わ、わたし、その、こ、こういう ことは 初めてなので……よ、よろしく お願いします。」
そのまま、うつむいてしまった。何がよろしくなのか?
「? 何を言っているのか知らんが、顔を上げてくれ」
「はぃ……」
顔が真っ赤だが本当にどうしたんだろう?
「確認したいことというのは左腕のことだ」
「え……」
今度は顔が真っ青になる。赤から青にって信号機じゃないんだから。
「あの、やっぱり 気に入らない ですか……」
だからなんで泣きそうになってるの?
「その腕だが……治るかもしれない」
「……はい?」
「腕が治るかもと言った」
「……本当 ですか?」
なんか、あんまり信じてないような感じだな。
「ああ、ただしものすごく痛い、それを我慢できるか?」
「えっと、う、腕が治るの なら……」
「そうか、では今からやるけれど私に言うことをよく聞いて」
「わ、わかりました」
「ではこれを口に入れて……ゆっくり噛んで……で左腕を前に出して」
「?」
左腕を前に伸ばして、私の親指を噛むように言う。
そして、剣を抜いて腕の無い部分上1センチ程度のところを斬り、新たに傷口を作る。
「―――――――ッ!!」
「エクスヒール!」
痛みで親指をおもいっくそ噛まれたが、思ったとおり切断面から腕が生えてくる。
「――ッッ!!」
いつ見ても気持ち悪いなこれ。
やがて、ものの数秒で左腕が完全に生えた。いや生え変わったというべきか? あと体にあった複数の傷もなくなったみたいだ。
「――よし、もう大丈夫だろう。……ええと、噛むのをやめてくれませんかね?」
「ふぇ、あ、あぁぁ、う、う、腕が……」
ソレイユちゃんは驚いた目で腕を見つめた後、動かしてみたり右手で触ってみたりしている。
「ぅえ、う、腕がぁぁあるぅぅぁぁ――」
また泣き出してしまった。
「おい、大丈夫か? どこか変なところはないか?」
「ごじゅじんざばぁ――、うでがぁぁぁ――」
いや、それじゃわかんないから。ね。