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22 奴隷の扱い 1

 さて奴隷の少女を2つあるベッドの片方に寝かせたのはいいんだがこれからどうしよう。いや、回復魔法はかけるのだが問題はその後だ。あの時は、死にそうな人間が放置されているということで、さすがにこのまま死なれると後味が悪いと思い、譲ってもらった……お金払ったけど……けれど、奴隷なんて持ったことがない。いや、当たり前だけど……


「本当に、どうするかな」


 日本にいたころには、犬や猫すらも飼ったことがなかったのにいきなり奴隷の面倒を見るとか無理ゲーじゃないだろうか。だからと言って、回復させた後、自由に生きなさいとか言って放り出すのも無責任だ。奴隷商人には主人が望めば奴隷を解放することもできると聞いているが、さすがに子供に1人で生きて行けというのも酷だろう。……なら奴隷として傍に置いておくのか。奴隷の首輪という魔道具もあるし冒険者として活動している間、部屋で待っていろとか言っていればいいだけだし…………あれ? 何か問題があるのか? 金銭的な問題はあるだろうが、その他は問題はないような気もするな。むしろコミュニケーションが取れる分、犬や猫より楽なんじゃね?


「うぅ……」


 今、苦しそうなうめき声を出したな。そろそろヒールが切れてくる頃か? まずは回復しておくか、とその前に、



名前:(無し)

種族:人間

年齢:14

性別;女性

職業:ノワールの奴隷

レベル:5

状態:左腕喪失、肺炎、右腕骨折、右足骨折



 状態でちゃんと症状が表示されるな。病気の方は肺炎か。これって感染とか大丈夫だっけ? 医者じゃないのでわからんが、とりあえず魔法かけておけばいいだろう。左腕の喪失については傷口が完全に塞がってしまっているので回復魔法では治らないだろう。治す方法は思いついてはいるのだが……これは本人が起きてから確認を取ろう。

 ちなみに奴隷の名前が(無し)となっているのは、奴隷に落ちた時点で名前を奪われ、買った主人が新しい名前を付けるからである。これは、奴隷に名前があった場合、主人本人や家族、知人の名前とかぶっていた場合面倒だからである……と奴隷商人から聞いた。

 とりあえず、変な方向に曲がっている右腕と右足をちゃんとまっすぐにしておいて……


「ぅあぁぁ……」


 苦しそうな声が漏れる。やっぱり動かすと痛いか。まあ、我慢してもらうほかない。そして、


「エクスヒール!」


 一応最大級の回復魔法をかけておく。別に医者じゃないから適切な魔法とかわからんしね。

すると奴隷の体が淡く光り、――光が収まった後には穏やかな顔で眠る奴隷がいた。ちょっと血色がよくなったが……相変わらずガリガリで左腕が無い。

 状態を再度確認したが、



状態:左腕喪失



 となっていた。ふむ、骨折と肺炎は回復したな。病気の方は回復しなかったらどうしようかと思ったがちゃんと回復したようである。

 後、さっきも見たが年齢14歳だったんだ。小さいので10歳ぐらいだと思ってた。栄養が足りていないからかな? とりあえずはこちらをどうにかすべきか?


 もう時間的に夕食時より少し遅い時間だったが、1階へ行って女将さんに部屋で食事がとれないか聞いたら、あっさりとオッケーしてくれた。たまにそういう客がいるそうだ。部屋には質素だが小さいテーブルと椅子も用意されているしな。ただ、再度汚さないようにと注意された。


 一応奴隷用の食事というメニューもあったのだが、さすがに栄養失調気味の人に食べさせるのはどうかとも思うので、通常のものを2人分注文した。


 2人分の夕食を持って部屋に戻ると、いまだ奴隷の少女は寝たままだった。と思ったら、鼻がぴくぴく動いて、少ししたら目を開けた。


「ぅあ、ここは……」

「起きたか?」

「ぅえ? あ、はぃ」

「ここは宿屋だ。私は君の主人のノワールという。」

「はぃ。よろしく、お願いし ます。…ご主人様……」


 そう言いながら、ハイライトさんの戻った目は、私の持っている食事の乗ったトレーを見つめている。


「動けるか? そうなら食事にしよう」


 そう言いながら、部屋に備え付けてあるテーブルに2人分の食事を置く。するとのろのろとではあるが、動いて床に座ろうと……


「……何をしているんだ?」

「ぃぇ、食事をい ただけると 聞いたので……」

「ああ、言ったな。食事にするのでそっちの椅子に座りなさい。」

「いい んですか?」

「何がいけないのかよく分からんが、早く座りなさい。食事が冷めてしまう」

「あ、はい……」


 そうして床に座りかけていた体を起こしまたのろのろとした動作で椅子に座った。

 そうして座ったのを確認した後食事をとろうとしたのだが。


「どうした? 食べないのか?」

「あ、…いえ……」

「そっちが君の分だ。……もしかして何か理由があって食べられないのか?」

「え? い、いえ、 そんな ことは …い ただきます」


 そう言うと、がっつくように食べ始めた。おいおい、そんなにあわてて食べるとのどに詰まるぞ。大丈夫か。

 そんなことを思いつつも、まあ私もしっかり食べるんだがな。しかし、見ているとなぜか泣いているようにも見えるんだが、なぜだろうか? ……嫌いなものでも入っていたのか?


 食べ終わったらさっさと寝るように言っておいた。……いや待て、少し汚いので寝る前にお湯で体を拭いておいた方がいいだろう。そう思って、タライに入ったお湯とタオルを持ってくる。もちろん有料だ。


「あー、体は自分で拭けるか?」

「あ? え?」

「……仕方がない。服を脱げ。拭いてやる。」


 よく分からないような返事をしていたので、もう私が拭いてやることにした。

 ちょっと命令口調だがこっちの世界の奴隷の扱いを考えればこれでも問題はないはずだ。子供相手に威圧感たっぷりとか大人げないなぁと思ったりするが、もうキャラづくりしてしまった後だ。これで行こう。

 あと、体を拭くということも相手は少女だが14歳だしガリガリなので色っぽさとかとは無縁だ。問題ないだろう。……問題ないはずだ。こう、私の好みはもっと年上で大人の色香漂う女性だからな。いやまあJKとかも興味があるが、14歳はな、さすがに犯罪者にはなりたくない。

 奴隷の少女が服を脱ぐ。といってもボロ布一枚だけだったが。裸になったのでお湯で濡らしたタオルで拭いてやるんだが……汚い。正直1回拭いただけでタオルが黒っぽくなっちゃった。一応全身を拭いてやったんだが、そのころにはタライの水がかなり濁ってしまった。まあその甲斐あって見た目多少ましになっただろう。それと、髪がくすんだ土色だったが汚れが取れると金髪だった。あとは、体中に傷があった……左腕を失う何かがあった際についたのだろうか。

 服は私の替えのものを渡した。むろんサイズが合わないので、ベルトで締めて、袖や裾をまくって無理やり合わせた。ボロ布ではどうしようもないので服は明日買いに行こう。


「もう寝ろ。」

「はい」


 また何故か床に座ろうとしていたので、何をやっているのか尋ねた後、奴隷の少女に、君のベッドはそっちだと言ったらまた泣いた……何故だ? まあ、素直に従ってベッドに入ってくれたので、食器類と汚れた水の入ったタライを1階に持って行ったあと、私もお湯をもらい体を拭いた。しっかし、自分の体だと思うと裸を見ても全然興奮しないな。まあいいや。もう寝よう。


 ◇◇◇


 朝が来た。最近といってもこっちに来てそんなに立っていないが、まあ最近、朝、こちらの人たちと同じような時間帯に起きれるようになってきた。

 伸びをしつつ欠伸を一つ。

 周囲を見渡すと…………あれ? いつもより部屋が広い……


「ああ、奴隷を買ったんで、部屋を移動したんだったな。」


 その奴隷の少女は隣のベッドでいまだ寝ていた。このまま寝かしておいてもいいんだが、朝食をとった方がいいだろう。


「おい、起きろ」

「……ぅあ、…………あ、はっ、はいっ! すいません!」


 声をかけて、少ししたらいきなり飛び起きた。うぉっ! 急に飛び起きて謝られると、こっちがびっくりするわ。……ちょっと顔色がよくなったかな。ちゃんと食ってちゃんと寝たからかな?


「起きたか……どうした?」


 何か顔を青くして震えているような……なんだ? またどっか悪くなったのか?


「い、いえ……寝過ごした挙句……ご主人様に…起こしてもらうなど……」

「それは構わない。それより動けるか? 動けるなら朝食を取りに行くぞ。」

「…は、はい。動けますが……あの……罰などは……」

「罰? 何を言っている。それより動けるなら早く来い。」

「あ、は、はいっ!」


 部屋を出て行こうとしたらあわててついてきた。


 1階についたが、まあこの時間帯は宿泊客ぐらいしかいないわな。

 とりあえず適当なテーブルについて……


「なぜ床に座ろうとしているんだ?」

「え? いえ、私は奴隷ですので……」

「その必要はない、そっちの椅子に座れ。」


 そっかー。奴隷は床がデフォだったのか。今度からちゃんと椅子に座るように言っておこう。

 あと、朝食に2つ同じものを頼んだらまた変な顔をした。いや驚いていたのかな?


「なんだ? 何か変か?」

「…い、いえ、 奴隷が主人と同じ ものを食べるなんて……」

「別にかまわない。それより君はもっと肉をつけろ。」

「……あ、はい……」


 なんだかよく分からないという顔だな。まあいいや。とりあえず朝食だ。


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