21 新たな出会い 4
フォルオレンの街へ着くまでは奴隷の引く馬車に合わせたスピードで4時間ほどだった。そのため街へ着くころには、すでに日が落ちかけていた。
ちなみに道中はコラット、ソマリ兄妹、それと商人と少し話をした。なんでも2人は奴隷商人の雇った護衛だそうだ。この街道は北の森(フォルオレンでそう呼ばれているだけで他の街ではまた違った呼び方がある)の近くを通るので、やはり護衛は必要だと考え雇ったそうだ。商人が少し奮発したといっていたから何のことかと思ったが、兄のコラットさんがCランク冒険者だそうだ。たしかCってベテランのランクだったと思うのだが、コラットさんって結構若くないか? この年でCランクっていうことは将来有望ということかな。くそ、このリア充野郎め!
あと商人さんは結構いい人だということもわかった。私からぼろうとしたが、まあ、あれくらい金儲けをやっているものなら当然という感じだった。私には結構人当たりの良い笑顔で奴隷のことについていろいろ教えてくれた。奴隷に引かせた馬車に乗ったままだが…… また、奴隷には結構怒鳴っていたので、この世界での奴隷の扱いというのはあまりよくないのだろう。
担いでいる奴隷に10分に1回ぐらいヒールをかけていたのだが、結局一時的に楽になるようなだけで、治ったりはしなかった。それと、魔法って連続で使っても問題ないのかなとも思ったりもしたが特に何かあるわけでもなく問題なく使えた。この世界では魔力? みたいな魔法を使うエネルギーのようなものはどうなっているのだろうか? これもいつか試しておいた方がいいだろう。肝心な時に使えませんでは問題だからな。
「お、街が見えてきましたね。」
「そうですね。」
とか言ってるうちにすぐに街門の人の列にぶつかった。もう日暮れ前だからかそんなに列は長くない。これならすぐに門内に入れるだろう。
「ではこちらが依頼達成の報告書となります」
「ありがとうございます」
「いえいえ、また何かありましたらお願いしますよ。」
「こちらこそ」
商人さんと兄妹冒険者が何かやり取りをしているな。護衛依頼というのはああやるのか。
そのまま、私とコラットソマリ兄妹は列に並ぶ。
「2人はこのまま冒険者ギルドへ?」
「ええ、ノワールさんもですよね。」
「ああ、オーガの討伐について報告しないといけないしな。……あ」
「じゃあ、一緒に行きませんか? どうせオーガの件を報告しないといけませんし、なら一緒にした方が手間が省けるでしょう?」
「そ、そうだな」
そうだなとか言ったが、私、奴隷抱えたままなんですけど。あとオーガの死体回収するの忘れた。あれ1体20000フラムぐらいしたのに……(;ω;)
◇◇◇
冒険者ギルドへはもう何度も足を運んでいるのですぐ着いた。並ぶのは毎度おなじみサレールさんのカウンターだ。……え? いない? 休みなの? ……仕方ないので適当に空いているカウンターに並ぶ。兄妹も一緒だ。
空いているカウンターに並んだので、すぐに順番が回ってきた。
「護衛依頼の完了報告をしたいのですが」
「わかりました。証明書を提示してください。」
「はい。」
「……はい、確認しました。少々お待ちください。」
受付の人が奥に引っ込んですぐ袋を持って戻ってくる。
「ではこちらが、報酬となります。ご確認ください。」
「ありがとうございます。あと報告したいことが……」
「はい、なんでしょう?」
「ああ、私が説明しよう。実は――」
その後、私がオーガの討伐依頼を受けていたこと、私が見つけた際には、この兄妹がオーガとすでに戦闘に入っていたこと、その後、私も戦闘に加わり結果的に3体のオーガを討伐したこと。などを話した。
話し始めた際に少し驚いていたようだが、視線を追ってみると肩に担いだ奴隷に向いていた……ぐたっとした人間担いでりゃそうなるか……
「――この場合、私の依頼はどうなるのだろうか?」
「そうですね……討伐証明部位は持っていますよね?」
「あ、それは僕が持っています。あと魔石も」
「まず、討伐依頼ですが、どのような経緯であれ3体すべてを倒し、さらに3体中2体と半数以上をノワールさんが倒しています。また、そちらの冒険者の危機を救ったという件を考慮し、依頼は達成扱いとして問題ないでしょう。ただし、魔石の売却金については依頼とは別ですので、それはそちらで話し合ってください。……では討伐証明部位と魔石を提出ください。」
「はい。」
「……はい。確認しました。少々お待ちください。」
また、受付の人が奥に引っ込んですぐ袋を持って戻ってくる。今度は2つ
「こちらが、ノワールさんの受けていた討伐依頼の報酬となります。」
「ああ」
「そしてこちらが、魔石の売却金となります。こちらは先ほど言ったように、こちらから口出しするようなことではありませんので……」
「わかりました」
そう言って私は討伐依頼の報酬を、兄妹は護衛依頼の報酬とオーガの魔石の売却金を受け取ってカウンターから離れる。
その後、横に併設された酒場のテーブルにて、
ちなみに4人がけのテーブルなので、奴隷も座らせている。相変わらず骨折と病気、栄養失調のせいで人形みたいにぐたっとしているが、……周りの目が痛いっ! 見ないでっ!
「えっと、どうやって分けようか?」
「……3人いるんだし単純に3等分してはどうだ?」
「いえ、ノワールさんが2体倒したのですから2/3はノワールさんのものでは?」
オーガの魔石売却金の話し合いが行われていた。
「私としてはそれでもかまわないが、」
「そうだね、それじゃ2/3をノワールさんに渡すということで、」
そう言って袋の口を開けて中身を確認、金額を数えて2/3を渡してくる。ちなみに計算はソマリちゃんがやっていた。さすが文系美少女。
「確かに、ありがとう」
「いえ、お礼を言うのはこちらの方ですよ」
「ええ、今回は本当にありがとうございました。おかげで私も兄も無事でした。」
「いや、気にするようなことではないよ。では、私はこれで」
「はい、では」
「さようなら」
2人の兄妹冒険者に手を振りながら、奴隷を担ぎ直し冒険者ギルドを後にした。
宿屋に戻ってきたのだが、
「どうしたんだい? その子は」
宿屋の女将さんに見つかった。
「いや、奴隷を買ってきたのだが……えーと、2人部屋は開いているだろうか?」
「ああ、開いているけど……奴隷のために2人部屋かい。奇特な人だね。汚さないでおくれよ。」
「ああ、わかっている。」
その後、今泊まっている部屋の残りの宿泊分をキャンセルし、2人部屋に移った。2人部屋なので今までよりちょっとお値段の高めだったが、まあ仕方ない。
そのまま移った部屋に入って行った。