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18 新たな出会い 1

 今日は北の森に行こうと思う。北の森は中~上級者用でかなり強い魔物が出るという話だ。Cランク冒険者以上推奨だとか。ただ、別に立ち入り禁止とかされてるわけではなく、誰が入ってもかまわない。ただし自己責任だ。

 

 北の森の依頼を探す。……少ないな、やっぱり上級者向けということでCランク以上の冒険者自体が少ないからだろう。あと、魔物の数もそこまで多くないらしいな。強い魔物ほど種としての数が少ないらしい。

 なぜわざわざそんな危険なところの魔物を討伐するのかというと、北と東の森の境界あたり、街から見ると北東の方角に向けて北の方の街へ行く迂回路が存在する。これは、本来北の森を突っ切ればいいのだが、強い魔物が出るためそういうわけにもいかなかったようだ。

 その迂回路や、あと街にまで北の森の魔物が進出してこないようにと、北の森の魔物の討伐依頼などが存在する。報酬の出資者は、領主や行商人である。そのため討伐は北の森といっても東寄りもしくは街に近い場所となる。ちなみに商人の場合は護衛依頼も存在する。

 

 今回は腕試しみたいな意味合いが強いので、もし(かな)わないと思ったら全力で逃げる。そのため、キャンセルしても問題ない依頼がいいのだが。

 そうそう、キャンセルといえばもう例のキノコの採集依頼はキャンセルしておいた。そのまま忘れそうだったからだ。

 ……話がそれたな。何かいい依頼は無いかな?

 お、オーガの討伐依頼というのがある。なになに、北東の街道付近でオーガの目撃例有。討伐をお願いしたい。推奨ランクはD~Cランク。

 これにしようか。期限も結構余裕があるし、オーガっていうと前に倒したので問題ないだろう。と思う。キャンセル料も……まあ、問題ない範囲だな。


 そして今日も今日とてサレールさんの受付に、


「この依頼を受けたいのだが」

「あ、ノワールさん、お待ちしておりました。ギルドマスターより実力的に問題ないので自分の権限にてDランクへ昇格してもらうと聞いています。」

「は?」


 え? 何でいきなりそんなことになってんの? ランクってそんなに簡単にあげちゃっていいの?


「ですのでギルドカードの提出をお願いします。更新しますので。」

「えっと、これでいいのか?」


 よく分からないままギルドカードを渡す。


「はい、少々お待ちください」


 サレールさんはギルドカードを受け取ると奥へ引っ込んで行った。

 少し待っているとすぐ戻ってきてギルドカードを返してもらう。


「更新が終わりました。」

「あ、ああ……」


 あ、ちゃんとDランクってカードに書いてある。あと、レベルが8に上がっている。


「あ、それで依頼を……」

「はい、こちらの依頼ですね。推奨ランクはDランク以上ですね……本来はパーティ推奨の依頼なのですが……問題ありません。」


 パーティー用だったのか。依頼表、もう少しちゃんと読んでおくんだった。


「あと、別件で少々聞きたいことがあるのだが、」

「はい、なんでしょう」

「昨日教会に行ったのだが……ヒール1回800フラムというのは適正価格なのか?」

「教会ですか…………そ、そういえばそれで思い出しましたが、もう1件ギルドマスターから伝言があります。」

「なんだ?」

「『回復魔法を使えるというのは絶対に言うな。使用も人目のあるところでは自粛(じしゅく)するように。あの3人にも口止めしておいた』とのことです。あと、適正価格のほうはよく分かりません。上位の回復魔法を使えるのはほとんどが教会関係者ですので。」

「そうなのか? では冒険者が怪我などしたらどうするんだ?」

「薬草やポーションを飲んで治したり、あとはヒール程度なら使える魔法使いもいますのでその方とパーティーを組んだりですね。」

「なるほど。ありがとう。」


 そう言って受付を後にした。そうか、あまり言いふらさない方がいいのか。今までの情報だと回復魔法関係は教会が独占しているみたいだな。教会にはいきたくないな。そこまで信心深いわけでもないしな。


 そんなことを考えながら歩いていると、横の酒場に例の冒険者3人組のうち2人がいるのが見えた。……確かパーティー名は『燃える剣』だったか? ……いや『炎の刃』だったかな? ……うーん何か違うような気がするな。思い出せん。


「2日ぶりだな。もう1人を待っているのか?」


 とりあえず知り合いとして声をかけてみる。何か周りの視線がこっちに……じゃないな2人のほうに集中している気がする。男に見られているって、ホモォな奴らがまぎれているのか……そんな視線じゃなさそうだ。何か(くや)しそうな……


「おお、お嬢ちゃん。元気そうだな」

「あ、ノワールさん、久しぶり……じゃないですね。ええ、ノリーカーを待っているんですよ。」

「そうか、今日も3人で依頼を?」

「ああ、また東の森でゴブリンなんかをな。」

「そうか、前みたいなことにはなるなよ」

「ははは、そうだな注意するよ」

「ノワールさんも依頼で?」

「ああ、ちょっと北の森のほうに行ってみようと思っている。」

「え、そうなんですか? あそこは強い魔物が出るって……ノワールさんなら問題ないかもしれませんね。」

「ちょっとした腕試しだ。危なくなったらすぐ逃げるつもりだ。」

「そうなのか? まあ、大丈夫だと思うが気を付けてな」

「ああ、ありがとう。じゃあ」


 少し言葉を交わした後、その場を離れる。さてと依頼に行こうか。

ギルドから出ていくときに、ふと視界の端に2人に詰め寄る冒険者たちが見えたが……まあ気にしても仕方ないか。



 さて、街道沿いを少し歩いてみたが、そう簡単に見つからないな。街道付近で目撃といっても街道まで出てくることはめったにないしな。魔物だって多少は学習する。人間の道に出れば面倒なことになる。ぐらいは考えていそうだ。

 少し奥に行ってみるか。

 おや、少し向こうに気配があるな。これは、大きさは……前と同じだな。これがオーガで間違いないかな?


 〈気配察知〉のスキルはかなりすごい。昨日街を散策中にもっと詳細にわからないかと〈気配察知〉の能力に色々と意識を傾けてみたところ、頭の中に三次元イメージが投影された。範囲が非常に広く、さらにそこに相手(昨日の場合は人間)の大きさ、距離、高度、進行方向、相対速度から色による敵味方識別までできた……そのあたりで頭の使用量がいっぱいになったのか頭痛がして倒れそうになったが。しかもその時、周りが見えていなかったため、視界の方に注意を振り分けるだけの余力もなかったのだろう。危険度は歩きスマホどころではない。この能力、人間が扱うのは難しいんじゃないだろうか? 結局、いつもの使用時は、今まで通り、何となく感覚的にわかる。程度に抑えておいた。


 まあとにかく、オーガらしき反応が複数体ある。こんなにすぐ見つかるとは幸先がいいな。などと思っていたら複数の人間らしき反応も近くにあった。……これ、追われているんじゃないか?


 現場まで駆けて行ってみると――


「おや?」


 すでに戦いが始まっていた。

 道の真ん中に1台の2頭引きの大きな馬車がおりその御者席に2人の男が乗っているのだがこちらは中年のちょっと太った男性と初老の男性――商人と御者といった感じだ。オーガの方をちらちら見ながら顔を青くしている。

 その(そば)――北の森側から出てきたのだろうオーガが3体いるのだが、そのオーガと馬車の間に2人の人間が立っていた。1人は剣を構えてオーガに切りつけている。もう1人はローブに杖を持っておりいかにも魔法使い然としている。


「もうほかの冒険者が見つけてしまったのか……いや、あれは馬車の護衛かな?」


 その2人の冒険者と思しき者たちは、剣を持った男のほうがオーガに斬りかかっている。一撃で沈めるというほど効果のある攻撃ではないが、オーガに着実にダメージを与えて行っている。魔法使いは剣士のフォローとともに他のオーガを火の玉を飛ばす魔法なんかでけん制して足止めしている。「ファイヤーボール」とか言ってそうだな。火の魔法が得意なのだろうか? あと、あの魔法使いは女性みたいだ。


「これは、手を出す必要はないか。」


 そう言っている間に、1匹目のオーガが倒れた。はたから見ていても見事な動きだと思う。剣を持った方は一撃離脱の戦法だろうか、相手の攻撃を確実に避け、相手には着実にダメージを入れる。魔法使いはその間ちゃんと他2匹のオーガの足止めができている。

 これなら、時間はかかるかもしれないが、確実に勝てるだろう。もう私の出る幕はない……あれ? じゃあ、私が受けた依頼はどうなるんだ? 未達成扱いになるのか。達成させるにはまた、オーガを探すところから始めなければならないのか……しかし、依頼内容の『街道沿いで目撃』ということはあれじゃないのか? 森の奥でオーガを狩って持って行っても達成扱いになるんだろうか?


「まあ、面倒だが仕方ないか。……もうちょっと見ていくか」


 正直もう今日中に他のオーガを見つけるのは無理かなと思っているので、目の前の……先輩冒険者? だろう人たちの戦いを見ることにした。今後、私もああやってパーティーを組んだりするんだろうか? なら、あの3人組――なんちゃらの刃――みたいな気のいいやつがいいな。

 そう思っているうちに2匹目も結構動きが鈍くなってきた。


ガイィン!!


 剣を持った男が相手の攻撃を受け流したようだが、オーガの持っていた大剣(刃が欠けまくってのこぎりみたいになった大剣だと思われる武器)がはじかれた。そのはじかれた先には馬車につながれた馬がいた。馬は運が悪かったとしか言いようがないだろう。馬の首にはじかれた大剣が刺さってしまった。2頭の馬が暴れはじめる。1頭は剣が首の半分くらいを切断していたのですぐ倒れて動かなくなったのだが、もう1匹は暴れたままだ。

 御者の人が必死に抑えようとしているが、暴れまくる馬に馬車が横転してしまい、商人と御者らしき人が投げ出されてしまった。


「うわぁ!」

「ひぃ!」


その間に馬は留め具が外れてどこかへ走り去って行ってしまった。


「うわぁ、あれ大丈夫か……ん?」


 横転した馬車の中からも気配がするな。なんだ?

 少し気になって探ってみたら人間らしき気配が8人ほど馬車の中にあった。


「馬車の中にも人がいたのか……」


 こっちがそう思う分にはいいのだが――


「大丈夫ですか!」


 剣士と魔法使いが、投げ出された商人と御者のほうに意識を取られてしまった。

 瞬間――


「ガァ!!」


 弱っていた2匹目のオーガが剣士のほうに攻撃を加えた。


「グッ!」


 弱っていたが、素手とはいえ、オーガの攻撃をまともに食らった剣士はそのまま吹き飛ばされ木にたたきつけられる。……何とか立ち上がったようだが、フラフラしている。


「兄さん!」


 もう一人魔法使いの方も、攻撃の手が止んでしまった。

 あれ? 一転してピンチじゃね?


???「冒険者のピンチ? どこかで見たような……」

???「気のせいだ」

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