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小話 ギルドマスター

 私の名はファラベラ。今年で128歳になるエルフだ。昔は冒険者として、また、魔法使いとして非常に優秀でBランクにまで行ったことがある。

 今はフォルオレンという街でギルドマスターをしている。


 コンコン


「あいているよ」


 扉を開いて入ってきたのは美人受付嬢として評判のサレール君だ。


「やあ、今日も綺麗――「少々報告したいことがあるのですが」

「……何かな?」

「東の森でオーガ2匹が出たそうです。」

「……本当か?」


 本当なら一大事だ。東の森は低レベルの冒険者が狩りや採集をするところだ。そんなところにオーガなんてものが出たのなら死人が多く出るだろう。


「それで被害は?」

「特にありません。いま、下でオーガの死体の査定を行っています。」

「……む、東の森に高レベルの冒険者でもいたのかね?」

「いえ、狩ったのはFランク冒険者です。レベルも低いです。」

「?」

「しかしアイテムボックス持ちでした。」

「ふむ、会おう。ちょっと連れてきてくれるかな。」

「わかりました。」


 そう言って部屋から出て行った後、連れてきたのは黒髪美人の亜人種の女性だった。しかしいきなり〈鑑定〉を使ってきたのでちょっと注意しておいた。その後、オーガを倒した経緯を聞いたのだが簡潔にかたずけられてしまった。たぶん何かごまかしているのだろうが、そこまで立ち入る必要はないだろう。 しかし本当にFランク冒険者だったとは、しかもレベルは6だそうだ。


「怪我などしたんじゃないのかい?」


 何気なく聞いてみたのだが、


「回復魔法が使えるからな。問題ない。」


 なに!? 回復魔法が使用できるだと。教会関係者ではない回復魔法の使い手は貴重だ。これは今のうちに取り込んでおいた方がいいだろう。

 あと、スキルは純粋に興味があったので聞いてみたが拒否された。だが、鑑定を使用したということとオーガを運んできたということは少なくとも〈鑑定〉と〈アイテムボックス〉はもっているだろう。

 とりあえず、ギルドマスター権限でEランクへ上がるための手続きをするように言っておいた。


 ◇◇◇


 2日後

 

 コンコン


「あいているよ」


 扉を開いてはいってきたのは今日も美人のサレール君だ。


「やあ、今日も綺麗――「少々報告したいことがあるのですが」

「……何かな?」


 このやり取りにも慣れてしまったな。もっと奇をてらったほうがいいだろうか。


「ノワールさんのことで少々お話が」

「あの綺麗な女性か」


 また会えるのかな?


「はい、ゴブリンを討伐中に『燃える刃』というパーティーを助けたそうなのですが」

「ほう、冒険者同士の助け合いか。死者が減るのは歓迎だよ。」

「いえ、それもそうなのですが、今回の成果が、ゴブリンキングを含む122匹を討伐した後にオーク14匹を討伐しているのですが」

「…………ノワールさんは今いるか?」

「いえ、もうギルドを出ていかれました。」

「その『燃える刃』だったか? の話は今聞けるか?」

「そちらも同じです。ただ、『燃える刃』の冒険者3人はすぐ連絡が取れますが。」

「わかった、明日時間を作るように言っておいてくれ」

「はい」


 その次の日、『燃える刃』というパーティー名の冒険者3人と会った。男か。残念だ。

 無論、ちゃんとそれまでに資料は読んでおいた。ゴブリンキングに率いられた122匹のゴブリン軍団を1人で討伐。その帰還中に『燃える刃』の危機を救った。その際、ノワールさんの倒したオークは9匹だったそうだ。


「さて、君たちは昨日ノワールさんに助けられたそうだね。その時の話を少し聞きたいのだが。」

「あ、はい――」


 冒険者パーティーが危機に(おちい)るのは特に珍しいことではない。予想外の強敵に出会ったとか、自分の能力を過信したとか色々ある。このパーティーはオーク討伐の最中自分たちで対処できない14匹のオークと出会ってしまったらしい。5匹倒した時点で、弓兵の1人が腕を切断する大怪我をしており、他の2人も軽傷だが怪我をしてスタミナが切れかかって、さらにリーダーが武器を落とすという状態だったらしい。そこに大丈夫かと聞こえたので返事をしたら来たのがノワールさんだったというわけだ。そのあとは、特筆することはない。ノワールさんが一方的に9匹のオークを狩って終わりというわけだ。ん?


「先ほど1人が腕を切断と聞こえたのだが……その人は?」

「あ、俺っす」

「……? 腕はちゃんとあるようだが?」

「それは、(あね)さんに治してもらったんですよ」

「あれは凄かったよな。腕がいきなり生えてきたもんな」

「ああ」


 何だと!?


「ノワールさんは回復魔法を使ったのか!? それはヒールじゃないのか!?」

「え、あ、いや、ヒールじゃなかったでしたね。なんだったけ?」

「えー……たしかハイヒールと言った後エクスヒールと言ったんだったかな? そういやなんで2つも回復魔法をかけたんだろうな」

「後、俺らも範囲回復魔法で回復してもらいましたよ」

「な!?」


 ハイヒールにエクスヒールだと、最高レベルの回復魔法じゃないか!? 教会の教皇ですら数回使うのが限度と聞いたことがある。


「いやー、本当に運が良かったですよ。」


 まずいな、そこまでの回復魔法だと〈回復魔法〉のスキルもあるのだろう。ばれたら絶対教会から横やりが入るな。


「君たち、その件なのだがあまり言いふらさないでほしい。あと、回復魔法については絶対に他人に話さないように!!」

「え? 何でですか?」

「あのお嬢ちゃんには命を助けてもらったんだ。それを言うなっていうのは何か理由があるのか?」

「ああ、オーク討伐に関してはあまり問題ない。期待の新人が入ったというだけだからな。まあ珍しいがそれだけだ。ただ、回復魔法のほうは別だ。先ほど3人が言った回復魔法は最高レベルのものだ。そして高位の回復魔法は教会の独占状態となっている。」

「なるほど、教会から勧誘が来るかもということか」

「そんなものではない。教皇クラスの使い手だ。勧誘なんて生易しいものではないだろう」

「……は? あのお嬢ちゃん戦闘は凄かったが、魔法のほうもそんなにすごかったのか?」

「やっぱすげえっす、姉さん」

「なので、回復魔法に関しては絶対に口外しないように!! いいね!!」

「わ、わかりました」

「ああ、わかった」

「わかったっす」


 そのあとは、オークの売却時の分け前の話とかだったがこれは問題ないだろう。一通り話を聞いたので『燃える刃』の3人を帰らせる。無論、回復魔法のことは絶対に口外しないように。ともう一度言っておいた。


 ああ、どうしようか。どうやってノワールさんを囲い込むか。非常に有能な新人だ。教会なんかに取られたくない。とりあえずは、ギルドマスター権限でDランクに上がってもらおう。実力的にも問題はない。


 ちなみにギルドマスターの独断で上げることができるのはDランクまでである。それ以上は依頼の達成状況や、実力など、ちゃんとした複数人の審査が必要となる。これは賄賂などを防ぐためとも言われている。

 さらに、DからCランクへ上がるための審査は結構厳しい。なのでCランクへなかなか上がれず挫折してしまう人というのも一定数存在する。


 まあとにかく、あとは情報が漏れないようにするぐらいしかできない。頭の痛い問題だ。対価にデートでもしてくれれば頑張れるんだが。


別の人の視点の話とか書いてみました。語尾とか全部変わるのでややこしかったです。

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