153 パーティーの夜に
戦勝記念パーティーは盛況であった。
急な帰還だったが、教会の聖女が魔王が倒されたことを感知して連絡済みであったため、勇者が帰還して国王からの発表があるだろうとかなりの数の貴族が王都に滞在していたためだ。
パーティーは王城の一角、大広間にて行われた。急なパーティーにもかかわらず会場も料理もちゃんと整えられていた。
舞台に王様と私達が立ち、王様より紹介が行われた。
「皆の物、勇者殿とその一行が今日の昼に、ここ、エドクス王国王都に戻られた。教会の聖女殿より魔王が倒されたことを聞いている者も多いだろうが、勇者殿が無事この場へと戻られたことを――――」
国王の話は少し長くて退屈だった。特に紹介される側なので下手に動いたりも出来ないし。
貴族達は私達のことは出発の時に見ていたはずなので今更驚いたりはしないと思っていたが、国王が喋る度に「おおー!」とか言う声が聞こえてきた。
そうして国王の話が終わり、私達が舞台から降りるとワッと人々が群がってきた。
「勇者殿、お初にお目に掛かります。」「勇者様、おめでとうございます。」
やはり一番人気はヤマモトだ。まあ勇者でリーダーだし当然だろう。
そして私達も人気。まあ美人揃いだし(自画自賛)
「父上、なにゆえ私をパーティーに参加させてくれないのですか! おお! ティーア殿、無事戻られたと聞いて安心いたしました。私はあなたがいない時をまるで悠久の時のように感じておりました。しかし魔王討伐したとなれば話は早い。実績としては十分! さあ、私の妃としてこの国を治めて――なっ何をする! はなせぇぇ!! ティーア殿ぉーー!! はなさんか、こらぁぁぁぁぁぁぁ!!」
なんかいきなり会場にやってきた金髪イケメンが絶叫しながら大臣とか近衛騎士とかに取り押さえられてそのままフェードアウトしていった。ティーアに近づこうとしていたけれど、あの人、どこかで見たことがあるような……うーん……
まあとりあえずパーティーは無事終了した。終わってみれば、以前のダンジョン攻略パーティーに比べれば雰囲気は割とおとなしかったような気もする。顔ぶれは豪華だったみたいだが、少しだが勇者がいるんだし当然みたいな空気も一部にあった。
実際にそれほど簡単なことでは無いのだが、『勇者』っていうのもおとぎ話の英雄的な扱いだしね。そこまで危機的な状況は無かったし、貴族さん達にしてみればどこか遠い国の出来事のように感じている者も居たのだろう。
主役の一人として貴族達にそれなりに声もかけられたが、以前のダンジョン攻略に加え、勇者パーティーに同行すると言うことで、私達のことは色々と調べていたのだろう。フーカ公爵やメープルローズ伯爵と親しく国王とも顔見知りと言う事で、無理な勧誘やナンパは無かった。…………私が感じる限りは。
パーティーが終わるとダン子はさっさと自分のダンジョンに戻っていった。ちなみにダン子は勇者パーティーに加わった時点で似顔絵が出回っており、夜遅い時間帯で痴女みたいな格好にもかかわらず問題なく自分のダンジョンに戻れた。まあその後ダンジョンの状況を見て絶叫するのだが。
私達はと言うと、夜も遅いと言うことで王城にある客室に部屋を借りてそこで今日は休むことになった。
「おやすみー」
「おやすみなさい、ノワール様」
「また明日ね、ご主人様」
それぞれに個室が用意されているので、ソレイユちゃん達と廊下で別々に別れていくそして……
「王よ、少しお話が、」
フェン子が後ろから声をかけてきた。フェン子にも個室が与えられたはずだが……話があるそうだ。
「ん? それって、明日だとダメなのか?」
「深夜のことですので、一応お耳に入れておいた方が良いかと」
何かヒソヒソと話してきているがどうも今日の夜中のことらしい。今日何かあったっけ? 既にパーティーはお開きで、夜も遅い時間、後は寝るだけといった時間だ。
◇◇◇
今、私は中庭にいる。宇宙船の止まっているところとは別の中庭(城が大きく中庭が何カ所もある)だ。比較的小さく花壇なども整理されたここの木陰に私はこっそりと潜んでいる。
夜もかなり深く建物も明かりが消えているので辺りはかなり暗いかと思ったが、月明かりや星の明かりが思いのほか強いのか割と鮮明に景色が見える。
目の前にはもう既にヤマモトがいた。かなり前からここにいたようで、さっきからソワソワとしている。
「あー……これはたぶんアレだなぁ」
「では王よ、行って参ります」
私の横にいたフェン子がヤマモトの方に向かって歩き出していく。……いや、止めろよ、そんな堂々と行くと私のことがバレるだろ?
さて、フェン子の報告だと勇者ヤマモトに深夜に呼び出されたらしい。なんでも二人きりで話がしたいとのことらしいが……私に言ってしまってもいいのだろうかと思うものの聞いてしまった後だったので、一応見に来た。
まあヤマモトのあの態度で大体分かってしまったのだが。
「ふぇふぇふぇフェン子殿、よ、よようよよく来て――」
フッ、これ以上は野暮というものだろう。いつの間にヤマモトとフェン子の間にフラグが立ったのかは不明だが。
まあ、頑張れ若人達よ――
私はニヒルな笑みを浮かべながらその場を後にした。
――翌朝
「あれ、ヤマモトは? フェン子何か知らない?」
朝食の時間帯。部屋では無く食堂に集まって皆で食事を取る際にヤマモトがいないことに気付いた。
深夜の覗きは途中で止めたので告白の結果は知らない。フェン子はこの場にいて一緒に朝食を取っていた。
寝坊だろうか。もしかすると結果次第では落ち込んでいるのかも知れない。
「ああ、あの強き雄のことですか? 私と番になりたいと言ったのにあの程度でへばるとは少し評価が下がりました。しかし、強さは本物です。良き父となるでしょう」
「?」
ごめん分からない
「何を言って――
「きゃぁぁぁぁーーー!!」
そのとき、突如として響き渡る悲鳴。
「何だ! 何があった!」
食事の手を止め、悲鳴のあった方に向かう。
急いで向かう声の方向は……ヤマモトの部屋?
そして現場へと到着すると、崩れ落ちているお城のメイドさん。多分部屋を整えにきたのだろう。そしてそのメイドの視線を追うとそこには――
「そ、そんな……」
無残にベッドに横たわるミイラ化した勇者ヤマモトがいた。
滅茶苦茶あいてしまいました。とりあえず魔王編が終わる155話まで投稿します。
続きは書くかどうかわかりません。