16 帰るまでが冒険です 3
「ゴブリンを討伐してきた。討伐証明部位と魔石を提出したいのだが。」
「はい、ではこちらに」
さっきオークの討伐依頼のときと同じように、カウンターに敷物をしてだすよううながす。敷物をするのは血などで汚れないようにするためだろう。
「……このカウンターに乗りきらないと思うのだが?」
「? どういうことでしょう?」
「数が多い」
「……何匹程度ですか?」
「えーと、……ゴブリン、ボブゴブリン、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジ、ゴブリンハイメイジ、ゴブリンキングすべて合わせて…………122匹だ」
「は? もう一度お願いします。」
「……122匹だ」
「「「…………」」」
サレールさんだけじゃなく、冒険者3人組も黙ってしまった。何か言えよ。
「……はっ! で、ではあちらの買い取りカウンターで伺います。」
「ゴブリン以外は討伐証明部位を確認していなかったため、死体もあるのだが、買い取ってもらえないだろうか?」
ちなみにゴブリン類の討伐証明部位は全部右耳だった。どうやって見分けるのだろうか不明だ。
「えと、た、タダ同然でよければゴブリンも買い取っていますが。」
「そうか助かる。では――」
「ッちょっと待ってください。非常に数が多いので裏手の倉庫にします。そっちに案内しますので!」
あわててサレールさんが言ってくる。死体も出すとなると買い取りカウンターのほうでも狭いもんな。
「わかった。」
その後、サレールさん、買い取りのおっちゃん(名前は知らない)、冒険者3人組(オークの死体も出すため)、あと変な機械みたいなものを持ったギルド職員5人と一緒に裏の倉庫に移動する。いろんな物資が積んであるな。そこの結構広い場所に案内される。
「では出してください。」
「ああ、」
とりあえず、端から、ゴブリンの右耳122匹分、魔石122匹分、ゴブリン類の死体122匹分、オークの死体14匹分を別々にアイテムボックスから出していく。
「「なっ、」」
「ひゃぅ」
「うわぁ」
「こりゃまた……」
いろんな声が聞こえてくる。
「端のオークの死体はこっちの、えーと……『燃える刃』のものだ。……そういえば運ぶ代わりに分け前をもらうといっていたな。……2割でどうだ?」
「「「あ、はい……」」」
生返事だな。ちゃんと聞いているのか怪しい。
「2割でいいのか?」
「えっ? あ、ああ、もちろん。もっと持って行ってもいいんだよ?」
「いや、それでいい。」
「……分かった。」
私と『燃える刃』3人組がやり取りをしている横で、ギルド職員が、変な機械を使って魔石を何かしている。なんだろう? あれ、魔道具とかいうやつだろうか?
サレールさんは記録係らしく横で立ってしきりにメモを取っている。
全部売ってしまうものだと言ったら確認するので待ってほしいと言われたので、ギルドに併設されている酒場で『燃える刃』の3人と一緒に飲み物を頼んで待っていた。ちなみに3人組のおごりだ。このくらいはいいだろう。
「そういえばアイテムボックスは珍しい能力だと聞いたが」
「ああ、そうだ、特にお嬢ちゃんみたいなめちゃくちゃ容量のあるやつは特に希少だ……と聞いた。」
「そうか、ではあまり言いふらさないでほしい。面倒事はごめんだ。」
「ああ、わかったよ。」
「もちろんっす」
その後、さらに時間がたって、3杯目を頼もうとしたくらいの時だった。サレールさんが戻ってきた。
「査定が終了しました。」
「ああ」
「こちらがノワールさんの報酬になります。ゴブリン類122匹合わせて92200フラムとなります。」
「……多くないか。ゴブリンの報酬はそこまで高くなかったはずだし、死体もタダ同然なんだろう?」
「それは『ゴブリン』の場合です。ハイメイジやキングは非常に高値で取り扱われますので。」
「そうか。」
「あとこちらは、『燃える刃』さんのオークの査定です。14匹で16600フラムとなります。」
「ああ、ありがとう」
こっちはデュロックが受け取った。
「えーと2割だったよね……2割っていくら?」
「俺に振るなよ」
「勉強とか得意じゃないっすからね」
「3320フラムだ」
「え? えーと計算速いね。」
「そうか?」
「あ、うん、じゃあこれを」
そう言ってデュロックが3320フラムを渡してきた。
「確かに。では次は服だな。3人はこの後予定はあるのか?」
「え? この後、……ないけど」
「では、今から買いに行く。つきあえ。」
「へ? お金だけ渡すんじゃ……」
「あ?」
「「「……いえ、お供させていただきます。」」」
その後すぐにギルドを出て、冒険者御用達という服屋へやってきた。おお、質素だが丈夫そうな服が並んでいるな。とりあえず店主に適当なフリーサイズの服とズボンを見繕ってもらって買った。何? シッポ穴をあける必要がある? ここは前の店と違ってあとから仕立てる仕様か。仕方ないな
「「「なっ!」」」
採寸するためその場で今着ていたズボンを脱ごうとしたら、店主の奥さんらしき人が飛んできて店主を殴り飛ばしていた。あと何故か3人組は背を向けていた。……ああ、いま女だったな。男の時の感覚で対処してしまった。
そして、店主の奥さんらしき人に奥につれて行かれて採寸してシッポの穴をあけてもらった。
「よし次は下着だな。」
「「「え?」」」
そのまま女性用下着屋へ直行した。こっちは以前も使用した店だ。おう、3人組の顔が真っ赤だ。女性用のピンクのフリフリ空間だからな。完全にアウェーだ。周りの女性からあからさまに不審な目で見られている。まあ、私もいまだにちょっと恥ずかしいんだが。
「さて、……どれがいいだろうか?」
以前と同じように、店員さんにお願いしてみようか。……待てよ、今回は3人組がいるじゃないか。
「なあ、デュロック」
「ひゃい」
返事をかんだぞ。そんなに居心地が悪いのか。まあそうだろうな。
「君たちのお金を使うんだ。君たちが選んできてくれ。」
「え?……いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ。」
ちょっとしたいたずらのつもりだったのに、すごくあわてている。面白いな。
「なんだ? 童貞でもあるまいし。女性用の下着くらい選んで見せろ。」
「どっ、童て――いや、俺まだ女の人と付き合ったこともないんですよ、無理です!!」
からかったら、全力で拒否られた。
「ふむ」
すー、とゴトランドのほうを見るとめっちゃ目をそらされた。あと汗がだらだら垂れている。
最後の一人を見る、顔を真っ赤にして下を向いている。
これは、3人とも童貞確定か? まあ、私も人のこといえないんだがな。日本でもこっちでも経験ないし。おお友よ。
「はあ、すまないな冗談だ。」
とりあえずフォローを入れて、店員さんを呼ぶ。結局今回も店員さんに選んでもらった。
「こんなものだな。服代をありがとう」
「いえ、こっちがお礼を言う側ですよ。」
「そうっす、命を助けてもらったんっすから」
「くすくす、律儀だな、まあまた縁があったら一緒に冒険でもしようじゃないか。」
「え、ええ、そういうのもいいですね。」
そんな会話をしながら別れた。女性用下着店の前で……
最後の買い物シーンは、もうケモ耳美女って設定忘れてるよね。とか思ったので無理やりぶっこみました。