147 撤収
その後、映像の終わりと共に部屋の扉が開いた。
いや、本当にどうすんだよ。人違いでただの調査員を拘束して餓死させるとか。ヤバいんじゃ無いの? このプラウラーさんの星の人が聞いたら怒りそう。そして星間戦争に……ヤバい、中世ファンタジーが一気に宇宙SFモノに進化だよ。
「よし、見なかったことにしよう!」
一応、今までそんな宇宙人が侵略してきたなんて事は無かったはずだ。じゃあプラウラーさんの死は知られていないと言う事なんだろう。
とりあえずプラウラーさんの死体――と言っても良いのか――には手を合わせておく。
金目の物を探してやってきたのに、初代勇者のとんだ置き土産であった。
とりあえず部屋の中を一周してみたが本当に封印のための部屋だったみたいで何も無かった。扉も開いたのでここを後にする。
テクテクテクテク……
テクテク……
テク……
……
「うぁ、やべ……ヘルメット持ってきちゃった」
私の腕には鳥頭型のヘルメット型宇宙服とやらが……そういえばプラウラーさんの素顔はどんなものだったのだろう。体は人間 (のミイラ)と変わらないように見えたが……て、そうじゃなくてこのヘルメットどうしよう。正直使い道に困る。死体のかぶっていたヘルメットとかかぶる気になれないし。そもそもこんなデザイン使い道もないし。一応宇宙服らしいのだけれど。
「おう! お主じゃったか、何か見つかったのか?」
しばらく考えながら歩いているとダン子とばったりと出会った。
「ちなみにワシはウハウハじゃ。既に馬車とを2往復しておるぞ」
ダン子は今手ぶらだったのだが、戦利品は馬車に置いてきているらしい。そんなことを得意げな顔で言われた。
「お主は……何じゃその奇妙なものは? 少数部族のお面か何かか?」
ダン子は俺の手に持っている鳥頭型の宇宙服……ヘルメットを見ながらそんなことを言ってきた。
「いや、プラウラーさんと言う人の形見の品? なのかな?」
「ふぅん……金になりそうに無いの」
確かに見た目だけなら金目のものに見えないだろう。宇宙服という何気に高度な代物なのだが。所で、前も思ったがダンジョンが金目のものを集めてどうするのだろうか。
そんなことを思いながらダン子と歩いていたのだが、私があの部屋で時間をとっている間にダン子は地下をあらかた網羅していたらしい。つまりもう私の取り分は残っていないと言うわけだ。
私の発見品、変な鳥のお面(宇宙服)のみ
ガッカリだよ。
そうして私達は魔王城1階のバルコニーに戻ってきた。
そこには既にアリシアさん達がいた。どうやら待っていてくれたようだ。
「あら、ちょうど良かったですわ。首尾はどうでした?」
「ウハウハじゃ。既に馬車に置いてきている。そっちはどうじゃ?」
「ダメですね。私達(人間)に価値のありそうなものはあまりありませんでした。」
カーマインさんがそう言ってジャラリと小袋を見せる。1~2L程度の小さな袋だが、中を見せて貰うと宝石類が詰まっていた。あの魔王がいたバルコニーの後ろの部屋が王座の間のようになっていてそこで見つけたものらしい。それ以外の階や部屋にはほとんど金目のものは無かったそうだ。
「このレベルの城を構えながらこの程度の備蓄しか無いなんて残念ですわ。」
見たところ結構お金になりそうだが、アリシアさんは少なさを嘆いていた。
「所でノワールの方はどうでしたの?」
「あ、私はこれだけ――」
そう言ってヘルメットを見せようとしたところでそのヘルメットから音が鳴り出した。
『ピー! ピー! *******! ピー! ピー! ********!』
いきなり鳴り出すものだから、ビックリして取り落としかけた。
「何ですか、これ?」
「音の出るお面ですか? 確かに珍しいですが……」
それに動じずにアリシアさん達はしげしげとヘルメット――鳥頭のお面を眺めている。
が、警告音だよね、これ? その後に何を言っているのかは分からないがアクセントや区切り方で言語であると分かる。おそらくジャシン星人の言葉とかだろう。
警告音だから何かしら操作を行わないと不味いのかも知れないが、あいにくと何をどうすれば良いのか分からない。
自爆装置とかだったらヤバくない?
考えろ! 考えるんだ私!
「とにかく、金目のものは持ち出しましたし、生き残りもいないようなのでもうここに用はないですね」
「そうじゃな、さっさと帰るか。ワシも自分のダンジョンの様子を確認したいし。」
「では行きましょう」
そう言ってアリシアさん達は、城の外へと出て行ってしまう。それに慌ててついて行く私。しかし考えることを止めたわけでは無い。
スキルで役に立ちそうなのは〈鑑定眼〉〈世界創造〉辺りか、称号ならば……〈神眼〉……そういえば私、世界に干渉する際にプログラミングっぽいことやっていたな。
「ならば――」
それらのスキルや称号を意識して使用する。手に意識を集中して持っているヘルメットにつながるイメージを持つ。
ちなみに歩みは止めておらず、一番後ろをついて行っている。アリシアさん達は何か話している用だが、私は話しに参加する余裕は無い。
そして――
「よし、いける!」
鳥頭型ヘルメットのコンピューターにアクセスできた。コンピューターにアクセスできればこちらのものだ。ジャシン星人とやらの言語が分からずともコンピューターの言語は分かる。0と1だ。それを、この世界の言語に変換し中を覗いてみる。
そう私は以前の世界に干渉する云々(124話)により、電子の世界に潜り込むことに成功したのだ。
えーと、ここがこうなって……、あそこがこうで、うわっ、ファイアーウォールかこれ? 今は必要ないのでぶっ壊してやれ。
ポーン! スキル〈電子戦技〉を獲得しました。
ポーン! 称号〈電子の妖精〉を獲得しました。
その後、エラーを吐いている箇所を確認する。その結果、エラーでは無く、どうやら所有者から離れたため警告音が鳴っていたらしい。
良かった。自爆装置とかじゃ無かった。
とりあえずスピーカーのボリュームをOFFにする。その後、翻訳装置というものがあったのでONにしておく。
「お帰りなさいませ、ノワール様」
ん、作業に没頭しているとそう声をかけられた。顔を上げるとソレイユちゃんがいた。あ、馬車の所まで戻ってきていたのか。
「あ、ああ、ただいま……何か変わったこととかあった?」
「いえ、特には」
「そう」
とりあえず戻ってきたようだ。馬車側は特に変化無し。
「お帰りなさいませ、王よ」
「おお。戻ってきたのでござるか。どうでござった?」
ヤマモト達は馬車の中で休憩中だったのだろう。ソレイユちゃんの言葉と共に馬車の中から降りてくる。
「確認は終わりましたわ。生き残りなどは無し。戦利品は少なかったですが頂いてきました。」
アリシアさんが代表してそう言う。一応ダン子は馬車を2往復するぐらいのものを見つけたらしいが。
「へぇ、それが、じゃあダン子ちゃんが一番ねぇ」
アリシアさん達の戦利品を見ながらティーアがそんなことを言う。するとアリシアさんは驚いたようでダン子の方を見た。
「ワシの方はガッポガッポじゃったぞ。ほれ」
そう言って馬車の方を指す。そこには馬車に立てかけるように大きな袋が4袋ほど置かれていた。
「まあ、こんなにあったんですの!?」
「どうやら金品は地下に保管されていたようですね。」
アリシアさん達が自分たちの戦利品とダン子の戦利品を見比べながら少し残念そうな顔をする。
「とりあえず魔王退治はもう終わりですね。帰路はどうしましょう。」
「明日朝一出発で良いのではござらんか? さすがに今から出発は中途半端でござろう。」
そう、周囲は明るいが今は昼も過ぎており午後3時か4時ぐらいと少し中途半端な時間帯だ。
「では今日もここで野営ですね。準備をします。」
そう言ってソレイユちゃんとカーマインさんが野営の準備に取りかかっていった。そして私はもちろんのことアリシアさん、ダン子、フェン子、ティーア、ヤマモトは料理は出来ないので、力仕事他に従事することになる。まあ調理補助程度は出来るが。
いや、私は全く出来ないことは無いんだよ? ただ凝ったものは作れないと言うだけで簡単なものは出来る。多少豪快になるが。ヤマモトも似たようなもの。対してフェン子、ダン子は全く出来ない。この旅が始まるまで調理の必要な食事というものを食べてこなかったためだ。
それに私はそれよりもやることがある。
「あ、悪いんだけれど、私、調べ物があるので馬車にいるよ」
「あ、はい、分かりました」
私はそう言って馬車に乗り込んだ。
登場人物紹介を書いている際に気付いてしまった……
アレクサンダー(子フェンリル)どこ行った?
勘のいいガキは嫌いだよ(ー◎ω◎ー)