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133 いざアガバンサスへ 3

 城塞都市アガバンサス。人間領に面する側の城壁の上に2人の人物……いや、魔族がいる。視線を人間領に向けながらも、余裕の笑みを浮かべ会話を交わしている。


「フフフ、勇者か……歯ごたえがあると良いんだがな」

「油断しないように、ヒーター。過去の魔王様は勇者に敗れているのですよ。」


 この2人はアガバンサス攻略戦時にいた魔王軍16将軍が2人である。

 この2人によりアガバンサスの防備は今や人間側に向けられる物となってしまった。


 ヒーターと呼ばれた魔族、先のアガバンサス攻略戦時に敵将を討取ったレベル53の魔族はそんな相方――ルークの苦言を受け流す。


「ふん、当代の魔王様はきちんと理解されている。ルーク、貴様も聞いているだろう。魔王様は既にレベルは300を超えているという」

「ほう、さすがは魔王様です。なら人間側への侵攻を早めても良いかも知れませんね」


 ヒーターとルークはそんな会話をしながら、遠くに見える人間達の拠点を見つめる。そうしてそこからこちらに向かってくる一行も魔族の驚異的な視力をもって見えている。


「あれが、勇者とやらか? ふん、すぐにこのレベル53のヒーター様がぶっ殺してやるよ!」

「頼もしいですね。私は後方支援専門ですからね。頼みますよ。」


「あら、それは困りますわね」


「――っ! 何者だ!!」


 突如として聞こえてくる声に2人は固まり……そうしてすぐに戦闘態勢に入る。

 さすがは魔王軍16将軍というところだろうか。すぐにどのような状況にでも対応できるように精神を切り替える。


「あら、遅いですわね」


 ズグッ……!!


「あがっ!」


 だが、そんなものは関係ないと言わんとばかりに次の瞬間にはヒーターの胸から剣が生えていた。


「なっ! 貴様っ!」


 その状況に声を上げるルークであるが運命は彼だけを逃しはしない。


「おや? 自分たちが襲撃を受けるとは思ってもいなかったようですね。お嬢様」

「なっ!」


 目の前にはヒーターと彼を貫いた襲撃者の少女が見えている。目が眩しくなるぐらいの黄金色(・・・)襲撃者(それ)に対応しようとすると同時に自身の後ろからも声が聞こえてくる。

(2人目だと! 馬鹿なっ!)

 慌てて振り返るルークであったがその目が捉えたのは()



 その瞬間(とき)、アガバンサスを攻略した魔族2人は息絶えた。





「ふふふ、魔王軍16将軍と言ってもこの程度なのですね」

「お嬢様、油断なさらないよう。この者達の話であれば魔王は既にお嬢様のレベルに近づいている可能性があります。」

「分かっていますわ。良い気分のときに水を差さないで欲しいですわ。」


 そう言ってレイピアと黄金のドレスアーマーを装備した――ひときわ目立つ縦ロールヘアーの女性は足下で息絶えている魔族を一瞥する。


 もう一人の魔族を一刀のもと、縦に分断した赤い鎧の女性、赤い髪に赤いハルバードを抱える女性が寄ってくる。



「ギャオッ! ギャオッ! ギャァァオォ!!」


 直後、城壁内の街から甲高い魔物の達の声があちらこちらから聞こえてくる。


「あら、気付かれてしまいましたわね」

「お嬢様、その金ピカの鎧は何とかならなかったのですか? 凄く目立ちます」

「あら、目立つのは良いことでは無くて? この私がコソコソ隠れるなんて真似をするとでも? ……だいたいあなたも、赤一色でキメてるじゃない」


 そう言っている間にも、城壁内の声は徐々に大きくなり、こちらに向かってくる魔物の数も増えてきていた。


「まあ、とにかくまずはここの掃除ですわね。行きますわよ!」

「お嬢様の御心のままに」


 2人はそう言って城壁内へと飛び降りていった。



◇◇◇



 目の前にはアガバンサスと思しき城壁が見え、その城壁から建物の屋根などもちらほらと見えている。


 さてここまでの旅路であったが順調そのものだった。魔族支配地域だというので緊張して見張りなども念入りに行っていたのだが拍子抜けするほど何も無かった。


 魔族支配地域とは何だったのか?


 そうしてアガバンサスへと近づいていくのだが、どうもおかしい。


 城壁の外は非常に平和な光景が広がっているだが、中はなぜか騒がしい。魔物や野生動物がキャンキャンと騒いでいるだけなら良いのだが、どうもそうで無さそうだ。


 ピギャァァアッ!!

 ゴギャァアァァン!!

 ゲピャッァァ!!


 どう聞いても断末魔です。ありがとうございました。


「な、何が起こっているのでござろうか?」

「何じゃ、騒がしいの」

「これは悲鳴ですね。」


 ヤマモトも気付いているようで少しオロオロしている。が、その他の面々は普通だ。それなりに精神を鍛えられている証拠だろうか。ダン子やフェン子、ティーアなんかは人間より長く生きているし。


 ズズッン!! と大きな地響きと共に土煙も何度か上がっている。

 城壁の上、上昇しようとしているワイバーンが見える。だが次の瞬間、何かに両断されて、臓物をまき散らしながら墜落していく。


「とりあえず向かおう。ソレイユちゃん、急いで!」

「はっ、はい!」


 何が起こっているのか分からないが、何かが起こっている。

私達は速く確認するために馬車に鞭を入れてアガバンサスへの道を急ぐ。と――


 ビュッ! ドォォンン!!


「――きゃっ!」


 アガバンサスから何かが飛んできた。馬車を走らせながら横目で見るとそれは確かライノセラスというサイの魔物だった。その巨体がアガバンサスから飛んできたのだ。ライノセラスは飛行能力など持たないので即死している。


「魔物が飛んできたでござる!」

「面白いことになっておるの」


 ヤマモトは状況が分からず、非常にビクビクしている。

 逆に私は落ち着いている。いや、落ち着いたと言うべきか。

 最近何気に出番の無かった〈気配察知〉にて内部の様子を探っているのだが、中にある反応――おそらく魔族や魔物――が凄い勢いで減っていく。そうしてよく知っている反応が2つある。

 ああ、あいつらだなと。

 しかしなぜこんな所にいるのだろうか。彼女たちはこちらへは来ていなかったはずだが。


 アガバンサスへ近づくにつれ破壊音や魔物達の悲鳴は大きくなり、たまに何か(・・)が城壁の外へと飛んでくる。

 直撃するものは無かったが、いずれもかなり大きなモノである。


 そうしてしばらく馬車を走らせているとアガバンサスへと到着する。

 そして私はガッタガッタと揺れる馬車によりケツを負傷……イタひ……


 ケツをさすりながら装備を調え――皆が、武器防具類を装備し終え馬車から降りる。

 目の前には城塞都市アガバンサスの高く頑丈な城壁と、ひときわ大きく強固な門が存在する。


 私達を歓迎(・・)しようとする動きなどは無い。


「どうするでござる?」

「壊せばいいんじゃ無いの?」

「開閉機構は中よねぇ」


 さて、目の前の城門であるが当然のことながら閉まっており中に入れない。見える範囲で他に出入り口になりそうな所もないし、この城門をどうにかしないといけないのであるが。


「あ……」


 そうこうしているうちに中の気配が2人を残して無くなってしまった。

魔王軍16将軍が2人、ヒーターとルーク。名前が出るもあっさりと退場。残念!

そして黄金と紅の戦士。一体何者なんだ!?

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