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131 いざアガバンサスへ

 旅は続く。

 最初の街を後にした私達だが、アガバンサスへの旅路は順調である。

 当日の朝こそ、集合時にヤマモトが妙に爽やかな笑顔で出発の音頭をとったが、基本的に問題なく進むことが出来た。

 途中何度か魔物が出現したもののゴブリンやオークと言った雑魚モンスター、しかも2~3匹程度と明らかに少ないので、馬車を止めること無く轢き殺したり、馬車上から魔法を撃ったりすれば簡単に排除できた。魔法はティーアかダン子が担当していた。


 道中、私は馬車の中でのんびりと魔法開発にいそしむ事が出来た。結果として、以前に作った拳銃の弾などの部品類を製造する魔法を作成することが出来た。と言っても材料を揃えてそこに魔法名を唱えるという工程は変わらないのだが。これで同一規格の部品が作成できる。この魔法は『材料』を魔法により《変質》《変形》させ『製品』にする物でありこの手順を自動化した物である。

 この『材料』であるが基本的には『製品』と同じ物がよい。『製品』と『材料』違う場合使用する魔力と時間がめちゃくちゃかかる。おそらく一般人だと弾1発も作れないぐらいだ。さすがにレベル12万の保有魔力になると『土』などを材料にしても作れるが時間はかかるし疲れるのでやりたくない。



 そうして北へと進むこと数日、何度か魔物の襲撃があったが、たいしたことは無いので突っ切った。

 もう少し行けば目的のアガバンサスだという所で、目の前に小さな砦のような物が見えてきた。

 おかしいな、地図上にはこの辺りに砦や関所などは無いはずだが。


「止まれー!」


 その小柄な砦に向かうと兵士と思われる鎧を着た人が出てきた。

 何か用があるのか聞くと、この先は魔族の勢力圏なので引き返すように言われた。本来の魔族からの防衛拠点である城塞都市アガバンサスが落ちた事により防衛ラインを下げなければならなかったため、急遽作られた物らしかった。物資はある程度アガバンサスから持ち出せたようで、既にここの砦は急遽作られた物にしては強固な物となっている。

 砦の中には多くの兵士や冒険者など多数いるらしい。かなり広い範囲で現在工事中のようだ。


「もしかして加勢に来てくれた冒険者か?」


 私達を止めた兵士の人たちが聞いてくるが、あいにくと違う。いや冒険者ではあるのだが、私達は勇者パーティーとして魔族に攻勢に出るための人員だ。


 ヤマモトが王様からの書状をもって馬車を降り、兵士に見せる。

 その書状を見た兵士は興奮したように話しかけてきた。


「こ、これは、勇者様でありましたか。失礼いたしました!」

「いや、かまわないでござる。この馬車に乗っているのは吾輩の頼もしい仲間達でござれば。通行の許可を頂きたいのでござるが。あと敵地の情報などもあれば欲しいでござる。」

「はっ! 勿論です。すぐに確認をとって参ります!」


 兵士の一人が砦の中に走って行った。

 残った兵士にヤマモトが話しかける。


「アガバンサスの状況などこちらで把握しているのでござるか?」

「少し前の情報でよければ司令よりお話出来るかと。ただ近況については現在出している偵察が戻ってきていないためなんとも……」

「分かったでござる」


 そうしてしばらくすると砦から兵士が走って向かってきた。


「お待たせしました勇者様。司令が是非ご挨拶したいそうです。ご案内します。」


 その後、私達は砦の中へと案内され、豪華な部屋に通された。

 そして待つこと数分、偉い人っぽい人物が部屋に入ってきて、現状などを説明してくれた。

 と言っても、服装から偉いと推測しただけであって、顔は普通だった。むしろ事務の人っぽい。


「おお、勇者殿。お目にかかれて光栄です。私、この砦の指揮を務めております――」


 話し合いは非常に短かった。そもそも話すことが少なかったというのもある。指揮官のオッサンの自己紹介の方が長かったかも知れない。

 内容としては街を占拠している魔物の数と種類について報告を受け、街の地図を受け取る。端的に言えばこれだけだ。


 街を占拠と言うとおり、何者かが指揮を執り、街の残った家屋などにモンスターなどを住み着かせたり、警戒のためか見回りのような者が居たりするそうだが。種類、数共に、私達はおろか、ヤマモト君でも蹴散らせるだろう魔物ばかりだった。勿論特殊進化した魔物がいる可能性などもあるし、魔王16将軍もいるから油断は禁物だが。


 この砦にて一泊して早朝から出発となった。朝にここを発てば昼頃にはアガバンサスに到着するだろう。夜戦はしたくない。魔物のホームだし、誤射の可能性があるし。


 外から見た際は小さな砦だと思ったが、貧相な町や村に比べれば造りはしっかりしている。広さも非常にあり、そこにいる人間もかなり多い。兵士から冒険者、またそれらを相手にする商人まで様々な人間がいる。酒場のような場所も存在した。


 そんな砦内――規模で言えば町と行ってもいい――を歩いているとキュッと手を握られたのでふと見てみるとソレイユちゃんに腕を握られていた。少々顔におびえの色が見える。何事かと思い視線の先を追ってみると商人と兵士が話をしていた。


「どうした?」

「あ、いえ……」


 再度、商人の方を見てみるとその後ろには薄汚れた布を身につけた人達が数十名いた。……おや? 何か見たことがあるなと思い、少しじっと見てみると


「……ああ、そうか。行こうか」

「あ、はい」


 それはソレイユちゃんと最初に会ったときに見た……ソレイユちゃんを見捨てた奴隷商人だった。

 別に商人側には問題が無いのかも知れないが、ソレイユちゃんが気にしているのでさっさとその場を去ることにした。別に会って話すような仲でも無いし。

 後ろの数十人は奴隷だろう。皆見覚えのある首輪を付けていた。ちなみにソレイユちゃんは以前のグランドドラゴン戦で私が死んだ際に、首輪がとれてしまったので今は付けていない。


 それにしても奴隷商人。戦場で奴隷を使用するのか。後方で雑用でもさせるのか、それとも戦闘要員として使用するのか。

 この世界の奴隷についてそれほど詳しいわけでは無いが、奴隷商人の奴隷への扱いは良い物では無い。だからといって何かしてやるほど慈善家でも無いが。


 さて、そんな中をぶらぶらと目的も無く歩いている。本日の宿は既に予約しており、この砦で一番良い(と言っても最近出来たばかりのため高級と言うほどでも無いが)宿を取っている。宿代は砦の司令官が持ってくれるらしい。といっても経費として落とすのだろうが。



「ヤマモトは何か用とか無いのか?」


 そうしてやや後ろを歩いているヤマモトに尋ねてみる。リーダーなので前を歩けば良いのに。


「いや、必要な物は前の街で揃えてきたので大丈夫でござる。ただ、そうでござるな……明日からは魔族領なので最後の食事ぐらいは豪勢にいきたいでござるな」

「なるほど、確かに」


 魔族領に入れば宿や飯屋などは無いだろうしな。そうして、ヤマモトの案に乗っかる形で食事処と看板を出した大きめの建物に入り、メニューにあった高価な香辛料たっぷりのステーキや魚介類を注文した。



 その後、興が乗った私達は2次会だと言わんばかりにオシャレなバーに突入するもダンディーなバーテンダーに入店拒否されてしまった。

 どうやらオシャレなバー的施設は“ゲイバー”だったらしく女人禁制であった。そうか、そう言う施設もあるのか……知らなかった。娼館を見つける前にゲイバーを見つけてしまうとは。

 なんだか白けてしまった私達はそのまま宿屋に戻ることになった。


 ゲイバーからの帰り道にヤマモトがいなかったのに気付く者は居なかった






「びぇぇぇん!! ごわかったでござるぅ~!! わ、吾輩のお、お尻が、うぇぇん!! グスッ~~」

「悪かったよ。ほら、胸貸してやるから。ダン子の」

「え? 嫌じゃよ? そんな鼻水だらけでばっちいの。フェン子がすれば良かろう?」

「……別にかまいませんが」


 その後、ヤマモトが何とか逃げ帰ってきた。ほんと悪かったよ、忘れていて。

 フェン子が胸でヤマモトをあやしているがそれをじっくりと楽しむ余裕も無く泣きじゃくるヤマモト。

 夜中だったので宿の従業員に注意された。すいません。ヤマモトが恐怖の体験をしたんです。

なお、ギリギリでヤマモトのお尻の貞操は守られたらしい。

う~ん、スランプ気味なのか話が全然進みません。

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