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128 ちょっと良いこと 2

ダン子視点

 我が名はダン子。偉大なるダンジョンの主である。ワシの偉大なる経歴を語ろうと思うならば1TBハードディスクすらパンクするであろう。それのほどまでに(以下略


 さて、先ほどの欠食児童共であるが、食い物を与えるとコロッと態度を変えよったわ。


「こっち、こっちだよ!」

「皆で暮らしているんだよ」

「おねぇちゃん変なかっこー」


 人間共は何と親を亡くした子供を一カ所にまとめ生活させておるのだという。

親と言う物が存在しないワシにはわかりにくいが、生物という物はある程度の年齢になるまで親が面倒を見るというのは知っている。

 しかし、うーむ……もう少し人間に関して学んでおくべきだったな。


 ガキ共の案内に従って薄暗い道を歩いて行く。ガキがワシの手を引っ張っているがワシは別に走る気は無いぞ。


 やがて開けた場所に出たのだが、目の前にあったのは確か教会とか呼ばれる施設だ。見る限り結構年季が入っているのう。ワシのダンジョンにもこういった所があるがアレは雰囲気を出すためにやっているのであって実際ボロいわけでは無いのだ。ウエザリングというやつである。

 目の前の建物はどうであろう。窓はひび割れているし、割れているところは紙か布が貼ってある。建物もひびが入っているし、塀は一部が崩れている。……雰囲気作りでは無く普通にボロいの。

 そのボロい建物の前に何人か人間がおった。何やら言い合いをしておるようじゃが……


「アンタが体を売れば全部丸く収まるんだよ」

「子供達の前で何てことを! 帰ってください!」

「「「かえれー!」」」

「おいおい、俺達はこの孤児院のためを思っていってやっているんだぜ。無理だってなら今月分すぐに払って貰おうじゃねぇか!」

「支払日はまだ先のはずです!」


 上から目線の男達が3人それに対しているのは若い女とガキ共。男が女の腕をつかみ、女は抵抗しているようじゃ。ガキ共は周りで騒いでいるだけ。

 フム、これはあれじゃな。人間向けの娯楽で見たことがあるぞ。


「浮気現場というヤツじゃな!」

「違うと思う」

「何じゃと? フェン子、ワシの推理が間違っておると?」


 正解のはずじゃ。以前のぞき見たことがあるぞ「奥さん、旦那がいなくてうずうずしてるんだろ」「ああ、いけないわ。ミカワヤサン」「旦那よりいい思いさせてやるよ」


「――と言うようなことでは無いのか!? では何じゃと言うのだ」


 フェン子め。ワシの隙の無い推理を即座に否定し追って。なら対案をださんか。対案無き否定は無責任じゃぞ。


「アレは多分金貸し。人間社会は貨幣経済で成り立っている。女の方がお金を借りて返せないから揉めている」


 金貸しじゃと、聞いたことがあるな。ワシは借りたことは無いが。


「違うよ、お母さんは悪くないよ!」

「あの人達がお母さんを騙したの!」


 周りのガキ共も騒ぎ出したようだ。うん、どういうことだ? 借りた物を返さないというのは悪いことでは無いのか? 男の方が悪いのか? お母さん? このガキ共、孤児では無かったのか?


「うーむ、分からぬ……」


 ワシが周囲の状況を推察しようとして考えにふけっていると、ワシ等を連れてきたガキ共がその言い合いに突撃していった。


「お母さんをはなせー!」

「うわっ、まだいやがったのか!」

「ダメよ、あなた達はウチの中へ入っていなさい!」


 うーむ、喧噪がヒートアップしておるの。どれ、ここはワシが大人として仲介に入ってやろうでは無いか。


「まあ、待ちなされ。お互い腹を割って話したらどうじゃ?」


 ワシが言い合いをしている男と女と女に近づき言葉を投げかける。そんなワシの存在を今知ったのだろう、全員がこちらを向き黙る。

 うむ、大人であるワシが言葉を発したからであろう。皆黙ってこちらを見ておるわ。


「ダン子の服装を見て言葉を失っている(ボソッ)」


 フェン子が何やら耳打ちしてくるが知ったことか。

 少しの間沈黙していたが、男の方が先に口を開いた。


「へ、へへっ、何だ、こんな奴らもいたのか。そっちのガキ共は小さすぎるが、こっちのガキなら十分商品になるだろ。後ろの白いヤツは職員か? まあいい、こっちのババアより何倍もいいな」


 そういった男の方がワシの体をなめ回すように見てくる。なんだか気持ち悪いのう。女になった身体特有の現象じゃろうか。フェン子の方にも目を向けるがワシの方を見る回数の方が多いな。おそらくワシのこの魅力的なバディーのせいであろうな。ワシも罪な女よ


「誰がババアじゃこらぁ!!」

「へぶぅっ――!!」

「あ、アニキー!!」


 そんなことを考えていたのじゃが、いきなり先ほどの浮気相手の女の方が怒りの形相で男を殴り飛ばしてしまった。


「て、てめぇ! 覚えてろよ!」

「「「お母さんカッケー!」」」


 捨て台詞を残しながらアニキと呼ばれた男を抱えて撤収していく男達。

 暴力に訴えるのはどうかと思うのじゃがのう。 ガキ共には好評のようじゃが……



◇◇◇



「お見苦しいところを」


 ややあって、ボロい建物――孤児院とやらに案内されたワシたちは薄いスープで歓迎を受けていた。

 何じゃろうか、この塩の味しかしないスープは。具もほとんど入っておらんし。こういうのが流行っておるのか? ワシは屋台の串焼きの方がよいな。


「いただきます――ズズー――ごちそうさまでした。」


 ほれ、フェン子など3秒で皿を空にしてしまったぞ。


 その後に語られる孤児院の事情――めんどいので割愛するが陰謀の匂いがプンプンするのう。


「割愛して大丈夫ですか、読者が分からないのでは?」

「読者って誰じゃ?」

「コホン、では僭越ながら王の右腕であるこのフェン子が解説しましょう。私達がいる孤児院ですが現在、院長が1人……お母さんと呼ばれているそうです。本人はそんな歳では無いのでやめて欲しいそうですが。ちなみに29歳です。それに10歳以下の孤児が12人います。孤児院の運営は領主からの補助金にてまかなうのですが、財政難を理由に補助金が減らされてしまいました。財政難になった理由は飢饉です。そのため補助金減額と同時に孤児が増えました。そのためとてもではありませんが孤児院の運営ができません。そうして切羽詰まったシスターは借金をしました。借金先は良心的な利息で貸してくれたそうなのですが、証文に非常に難しい言い回しや隠語が使われており、一見何の問題も無いようですが、その実未返済の場合は管理人や子供自体が担保なるそうです。陰謀はとにかく褒められたやり方ではありません。以上がこの孤児院の現状です。」

「だから誰に言っとるんじゃ?」

終わらない……

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