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124 道中

 馬車移動中

 私は馬車の操り方など知らないのでソレイユちゃんに任せてある。休憩などは適宜挟むように言っているが御者を出来るのがソレイユちゃんだけというのは問題かも知れない。

 フェン子は私の役に立とうとしているのか馬車の幌の上に上って周囲を観察中である。尻尾がブンブン振れているようだがこうやって馬車に乗るのが珍しいのだろう。多分何かあれば知らせてくれるだろう。

 ダン子は御者席――ソレイユちゃんの隣で興味深そうに馬を見ていたがやがて飽きたのかそのまま寝てしまった。席から手足を放り出し結構な寝相だ。

 勇者ヤマモトはティーアと何か話しているようで終始キョドっている。


 皆、王城での謁見時とは打って変わって武装は解いている。ダン子とフェン子は変化が無いが、ソレイユちゃんとティーアは武器防具は荷台に載せて(近くに置いてはいる)ラフな格好になっているし、私もフルプレートでは無くて今は簡素なシャツにスパッツである。スパッツは文明レベルの割に伸縮性に富んでおり(錬金術と魔物の素材のおかげである)なにげに履き心地は元の世界と変わらない(と思う)。

 尚、馬車はそれ自体に振動抑制の魔導具が使用されているらしいので(見えないところも金がかかっている)、そこそこの乗り心地なのだが、いかんせん道の方が悪い(日本に比べればと言う意味で)ので皆クッションを尻の下に敷いている。

 チ○ポジならぬ尻尾ポジが何気に気になる。座りやすい尻尾の状態は試行錯誤の連続である。以前、尻尾を自分の尻で踏んでしまって痛い思いをしたことがある。



 さて、私はと言うと馬車の荷台で荷物に埋もれながら作業をしている。

 何の作業かというと――


「うーん、大学でやった事なんてもう覚えていないからなぁ……そもそも勉強したのは基礎的なことだし、それも窓ありきだし」


 以前に作った拳銃、その完全機械化と弾薬及びマガジンの製造を自動で行うための魔法制作である。出来ればその他大型火器の製造もと思っていたのだが、目論見は早くも崩れ去ろうとしていた。

 この世界で魔法を新たに作るというのは並大抵のことでは無い。この世界の魔法と言う物は世界に組み込まれた法則のようなものである。そのため基本的に造る(・・)事が出来ない。新たに発見されることもあるが、単にそれらは世界に元々あった物で人間が見つけていなかった物だ。それを見つけ出しただけに過ぎない(無論見つけ出しただけでも大きな収穫なのだが)。

 さて新たに造る(・・)にはどうするか。それは魔法の基礎――さらにその中身を紐解いていかなければならない。

 今ある魔法は基本的に基礎となる式がありその上で起動している。OSの上で起動するプログラムのような物だ。プログラム自体は色々あるのだが、新たに造ろうと思ったらOS自体に手を加えなければならないという感じである。

 私の各種魔法スキルはLv10であるがそれは言い換えればワー○やエク○ルを十全に使いこなせるだけであって窓や林檎のソースコードをいじるのはまた別のスキルである。


「称号に〈スキルコレクター〉があったから、弄っていたら上達しないかなぁ」


 そんな目論見もあり、チマチマと魔法基礎式を可視化した上で言語に変換して読み込んでいく。て言うか、人間に読解可能な言語に変換するだけでそのボリュームが10倍以上に増えているのだが、元のコードはどれだけ圧縮されているのだろうか。

 これ一体いつまでかかるのだろうか? そんなことを思いながら読み進めていく。




 まあこれは当然と言えば当然である。上で述べたように魔法は世界に組み込まれた法則であるが故に新たに造ることは世界の法則に干渉することなのだから。




 ……大体、この世界、魔法なんて謎技術は誰が造ったんだ。物理法則と同じ自然の物なのだろうか。【ファイアボール】って言えば、ダブルクリックよろしく魔法が発動するのも謎である。


 そもそもこんな物読解するぐらいなら自分で造ってしまえば…………ダメだ。そもそも基礎知識が足りない。素人がいきなりプログラミングなんか出来るわけないし。

 パソコンならまだ簡単だったんだろうか。アレらの進歩スピードは驚異的であったからな。10年20年で黒電話がスマホになってしまうのだから。 


 うーん、うーん、と唸りながらソースコードを読み進め規則性を理解していく。量が量なので遅々として進まない感じが焦りを生む。

 だからといって諦めるわけには行かない。その先に全ての男の子のロマンがあるのだから! それに今のところ時間はたっぷりとあるし。前世では仕事でせかせかとしていたが、今は余裕がある。仕事的も財産的にも!



 ポーン!!

 『称号〈神眼〉を取得しました』



 そうしてしばらく読み進めていると――

 おや? 何だ少しスラスラと読めるようになったな。これはあれかな? 目が慣れてきたからかな? それとも学生時代の知識を思い出してきたからだろうか?

 もしかしたらレベルの関係で頭の回転も上がっているのかも知れない。


 まあ、何にしても良いことだ。このまま進めていこう。



 そうしてしばらく解読していると、法則性を理解してさらに読む速度が上がってくる。

 ペラペラと、読んでいく。なんとなくだが分かってきたぞ! すごい! これが世界を理解すると言うことか! ワハハ!!



 はい、サーセン。調子のりました。まあ馬鹿正直に最初から最後まで確認することは無いと思い至った。必要なところさえ書き換えてあとは流用すればいいのだから。

 と言うわけで斜め読み~…………出来ないわこれ。いくら理解し始めてきていると言っても専門用語のオンパレードであるからしてラノベを読むようには行かない。それでも英字新聞を読むよりは楽だが。


「さてさて、こことここがこうだから……ここがこうなって……ふむふむ」


 読者諸君はこれだのあれだのでは分からないだろうが勘弁して欲しい。頭のいい者というのは得てして自己完結してしまうものなのだから。フフン!



 ちょっとここ弄ってみるか? ポチッとな

 

 …………

 ……

 何も起こらない


「まあ、当然だよね」


 何せ、完全に関係ないところ――プログラムに読み込まれないところ――を弄っただけなのだから。



 ポーン!!

 『スキル〈世界創造〉を取得しました』



 さてさて、お次はと……

 今度こそ本格的に。まずは新しく物質を創り出すために変えるべき部分は……無から有は作り出せないので(術式を全部書き換えれば可能かも知れないが世界にどんな影響があるのか現時点で不明なので)原子分子レベルでの構造の変化を……


 核分裂と核融合それに放射線による影響に自由電子の動きが――――

 原子核の状態固定に性質の変更、それに伴う電子の――――

 混ぜ混ぜすると出来る物質の化学変化は――――

 その際、空気抵抗は考慮しないものとする――――

 円周率は3――――



 そもそも以前作った拳銃はオーダーメイドの手作業完全一点物である。弾薬やらマガジンそしてこれから作る物までそんなことをしていられない。この世界、文明レベルから分かるように統一規格なんて存在しない。鋳型で作ってもいいかもと思ったがムラが出るかも知れない。

 ならば作ってしまおう統一規格、JISならぬNIS……まあ長さや重さに関連する簡単な物だけだけれど。

 それと機械旋盤や3Dプリンタのようなプログラムを打ち込むだけで同一の物を生産する魔法。ステータス画面と魔法コードを応用し3Dモデリングソフトのような物。

 やることは山積みである。て言うか拳銃作る前にこれらを作っておけば良かった……



 馬車はそんなことはお構いなしに街道を進んでゆく。

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