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120 それぞれの日常2

第三者視点

『由々しき問題ですね』


 ノワール達に与えられた邸宅の庭で頭を抱え悩んでいる者が居た。


『どうにかしなければ、私の……』


 そう、フェンリルである。


 彼女は王に仕えると言う名目でここまで来た物の、今の今まで何ら活躍らしいことをしていない。

 まあ、王都なのでフェンリルが活躍する機会など無いのであるが。


 だが息子はすでに独り立ちしているというのに(アリシアさん家で飼い犬街道まっしぐらだが)、自分はどうか。ここ最近食っちゃ寝の生活であり、庭から出てすらいない。

 このままでは番犬にすら劣ってしまう。それはヤバい。




『と言うわけで知恵を拝借したいのです、我が王よ』

「それって私に言うことなのか?」


 銃の開発途中、息抜きに庭に出てきていたノワールにフェンリルが訪ねる。


 ノワールは気にしていないが、なぜかこの庭は雑草が伸びたりはしていない。いつ見ても綺麗な芝生が広がっている。


『ですがこのままでは私は飼い犬にすら劣る犬畜生に成り下がってしまいます。何卒お知恵を!』


 「飼い犬にすら劣る犬畜生」って、「頭痛が痛い」みたいな物だろうか……そんなことを考えながらフェンリルの出来ることを考える。


(……何が出来るんだ? 冒険者登録して魔物狩りとか?)


 ティーアは魔族の扱いだけれど登録できた。けれどフェンリルはどうだろうか? さすがに外見が人間から離れすぎている。誰か監督者を立てれば問題ないだろうか。


「動物園とかどうだろうか?」


 そうだ、動物園なんかどうだろう。前世で行った「ふれあい広場」みたいな感じにして「君も会場でフェンリルと握手!」とか、入場料が取れるんじゃ無いだろうか?


『動物園とは何でしょう?』

「えーと……見世物小屋?」

『嫌です』

(即答しやがったなこの野郎)


 まあ、真っ先に見世物小屋と例えたノワールにも問題はあるのだが。さすがに自然界では頂点近くに居るフェンリルが見世物というのは本人のプライドが許さない。


 ちなみにこのフェンリルはその体格からは想像できないくらい小食である。それが種固有の物かこのフェンリルだけなのかはノワールには分からないが、ノワール自身はそれほど迷惑だとかは感じていない。食費もそこまでじゃないし、犬を飼っていると思えば、こんなもんかと思える程度である。


 だがフェンリル側としてはそれは許されない。王に世話をして貰うなどと言うわけである。プライドで飯が食えるか! と言われれば返しにくいが。


『私も何か王の役に立ちたいのです。』

「うーん、といってもなぁ……ここ王都だし治安はいいし、フェンリルにやって貰う事なんて……」

『王よ。私とていろいろなことが出来るのです』

「ちなみに何が出来るんだ?」

『この力とレベルを利用しドラゴンすら屠って見せましょう!』

「いや、ドラゴンいねーし」


 王都やその周辺は治安もいいし魔物も少ない。ドラゴンなんてまず見ない……まあドラゴンは他の町でも見かけないが。やっぱり出来ることねぇんじゃ無いの


『後は人に化けることが出来ます』

「……は?」

『最近はこの庭の雑草を抜いているぐらいでしたが……』


 ノワールがポカーンである。


「………………化けるって何!?」

『こういうのですが』


 フェンリルがそう言うと自身の下に魔方陣が浮かび上がり、そこからあふれ出た光がフェンリルを包んでいく。そうして作られた光の繭が徐々時縮んでいって……ある程度の大きさになったときにパァン! とはじけた。


 中から出てきたのは女性だ。

 年の頃は16、17ぐらいだろうか。元の体のような白い髪にモフモフの獣耳と尻尾。腕と足の先は毛に覆われている。指は5本あるようだがやや獣具合が強い。亜人の女性のようである。顔には頬の辺りに赤いタトゥーのような線が入っており少々ワイルドな印象を与えている。

 後、当然ながら裸である。スタイルはよいようで、どこがとは言わないがあっちも白い毛であった。


「やはり貧弱な体です。これでは庭を整えるぐらいしか……」

「……は? え? あ………………いやいやいや、何やってんの! て言うか、そういうのはもっと早く言ってよ!」


 フェンリルは手を握ったり開いたりして感触を確かめているようだが、彼女としてはこの人間(亜人)の体は貧弱に映るようで、あまり好きでは無いらしい。

 対するノワールはビックリである。こんな能力があるなんて知らなかった。そもそもあんな大きな体がここまで縮む事をどうやって想像できようか。


 ファンタジー世界テンプレの獣娘爆誕の瞬間である。



◇◇◇



「えー、では会議を始めたいと思います。」


 邸宅の大広間。そこにしつらえられた、テーブルを囲むように大人数用のソファーを買っていたのだがその活躍の場が今やってきた。


 上座をノワールとして、他はそれぞれが思い思いに座っている。


 今この場には5人の人間っぽい者達が集まっていた。


 ノワール、ティーアとソレイユといういつものメンバー。

 そしてあと二人――


 一人は人化したフェンリル。お行儀よく座っているが家の中に入るのは初めてなのでキョロキョロと視線が動いている。

 あの後ノワールから与えられた服――ノースリーブシャツにホットパンツを着用している(体格はノワールが一番近いので彼女の衣服を借りている)。

 手足の先の毛の生えている部分が衣服に覆われるのを嫌うため長い袖や長ズボンはあまり好まないようであった。


 そうしてもう一人、ティーアが連れてきた少女。

 見た目は13、14歳程度。顔はティーアに似ているようにも見えるがこの子の方が幼い。体の発育も年相応であり胸や腰のくびれなどは発達途中といった感じだ。それ以外の差異も色々と見受けられる。まず髪の色が緑でツインテールにしている。あざとい。それと角と羽と尻尾がある。その見た目は完全に悪魔っ娘といった感じである。そして一番目立つのがその体――服を着ていない。薄っぺらい羽の皮膜のような物がかろうじて局部を隠している状態なのである。痴女なのだろうか。そんな奴が「菓子は無いのか」とのたまっている。ずいぶんと態度がでかい。


「で、誰だそれ?」


 ノワールが緑髪の少女を連れてきたティーアに問いかけるが答えたのはティーアでは無くその少女だった。


「ふふふ、ワシが誰かとな。よいだろう。教えてやろう。聞いて驚け見て驚け! ワシこそがダンジョンが主、ダンジョンコアである」


 立ち上がったその少女が膨らみかけでトップ部分以外丸見えな胸を反らしてそう宣言する。


「……そうか、では以後緑髪の少女をダン子、白髪の女性をフェン子と呼称する。」

「待て、何じゃそのテキトーな名は!」


 緑髪の少女――ダン子が抗議するがノワールは淡々と話を進めようとする。


「ではまずフェン子、自己紹介を」


 辺りをキョロキョロと見回していたフェン子であるが、ノワールに指名されると視線を戻し自分のことを語っていく。


「おお、王に名前をいただけるとは……フェン子これまで以上の働きを――「いや、そういうのいいから」――フェン子です。人間の作った都市ゆえこのような姿をとっています。この体格故非力にはなりましたがこちらの姿の方がお手伝いできることが多いかと思います。ソレイユ様、ティーア様よろしくお願いします。」


 ちなみにフェン子、実年齢は122歳なのだが人間換算だと未だ10代後半程度である。それが見た目に表れておりこのような姿となっている。なお見た目16、17の少女であるがすでに1児の母である。余談ではあるが、彼女の夫(アレクサンダーの父親)については子育ては母親がして父親と一緒に暮らすことは無いというフェンリルの習性により不明である。


「はい、と言うわけでフェンリルのフェン子です。でそっちの子は?」


 緑髪の少女はぞんざいな対応をされたからか唇をとがらせ拗ねたような態度をとっている。


「この子はダンジョンコアよぉ」


 代わりにティーアが少女の紹介をする。


「何でもダンジョンの魔力で作り上げた疑似生命体らしいわ。ダンジョンコアの意識をこちらに移しているんですって」


 少女はダンジョンコアが作り上げた移動端末のような物である。ダンジョンコアである親機とは常に魔力的につながっており今現在は自我意識をこちらの端末――ダン子の方に移動させている。そのためダンジョンコアは現在意識を持っていないが、通常業務と言う単純作業は実行できる程度の自立性はあるため問題ない。さらに魔力的なつながりによりダン子側のレベルに関係なく魔法などを使用できるし、魔力はダンジョンコア側の貯金魔力を使える。

 ダンジョンコアに何かあればダン子を切り離し独立活動できるが、無論その場合はダン子側のレベルに性能が下がることになる。尚、ダン子のレベルは1である。

 外見がティーアに似ているのはティーアの魔力をベースとして作成した体であるためで、角や羽、尻尾があるのは同じくベースとしたティーアの魔族としての特徴がでてしまったためと思われる。

 体の成長具合が違うのは不明で、髪の色が緑なのは、独自性を出そうとしたのとおしゃれのために少し手を加えているためである。


「あと、ダンジョンコアの魔力を受け取るにはこの格好の方がいいらしくて、本人曰く服は着たくないんですって」


 服を着ていないのはダンジョンコアとのリンク――魔力を送受信するためには素肌の方がいいからである。しかし最低限の羞恥心は持ち合わせているのか局部はコウモリの羽を模ったと思われる形状の皮膜により覆われている。なぜ剥がれないのか不思議である。


「なるほど……」


 それらの説明を受けノワールは頷く。


「はぁ……あのダンジョンコアはこんな感じだったんですねぇ。あんなしゃべり方だからおじいさんだと思っていました。」

「私も若い頃はこういった格好をしてモテようとした時期もあったわねぇ」

「ほう、これがあの変なしゃべり方をする赤い球ですか。球にすら命を与えるとはさすがは王です。」


 ソレイユ達がまじまじとダン子を観察する。フェン子は少し勘違いしているようであるが。


「ワシに性別など無いのじゃが、人間はかわいい女の方がチヤホヤされるんじゃろ?」


 欲望に割と正直なダン子がティーアをベースにしているのは単純に人間社会で有利な外見とするためで本来ダンジョンコアに性別は無い。しゃべり方も人間を観察して威厳のあるように真似をしたためである。


 顔の作りはティーアをベースとしているだけあってほぼ同じであるが成長度合いや髪の色が違うのでかなり印象はかなり変わっている。ノワールなどそれなりの付き合いのある者であれば「似ている」と思うが、そうで無ければ「言われればそうだな」で済ませる程度だ。


「さてと、自己紹介も終わったことだし、フェン子とダン子の処遇についてだが――」


 フェン子は王から自身に与えられる役割について待ちきれないという感じでうずうずとしている。

 ダン子は、


「待て、ワシはまだその名を認めておらんぞ!」

「じゃあどんなのがいいんだ?」

「そうじゃな、ワシにふさわしく高貴で強そうな名前がよいな」


 ノワールは面倒くさそうな顔をして、


「めんどいのでダン子な……で、ダン子は何でそんな姿になっているんだ?」


 つーん


「何でも魔王を殴ってみたいんですって」


 ダン子がまた拗ねてしまったのでティーアが代弁する。本人談によると先代魔王に好き勝手されてムカつくので魔王というのを一発殴ってみたいと言うことで、そのためであれば魔王討伐に対し助力するという事がティーアの口から語られる。


「ふーん、ダンジョンコアってどの程度の能力があるんだ?」


 ノワール達はそれなりの実力者でレベルも十分と言うことで国王より魔王討伐を依頼されてはいるが、ダンジョンコアの方はよく分からない。本人の希望だけで連れて行くわけには行かないし、依頼人である王様を納得させるのも難しいであろう。


「勿論余裕よ! この体自体は作ったばかりなのでレベル1じゃが、コアとつながっておるのでそこのサキュバスに負けぬ魔法を放てるぞ!」


 さっきまで拗ねていたのに、いきなり立ち上がり自慢をし始めるダン子。


「ティーアと同じ……レベル300代の魔法を使用できると言うことか」

「そうじゃそうじゃ、もう余裕よ!」


 ノワールは一瞬悩んだが……


「じゃあ、ダン子とフェン子は魔王討伐に行く際に仲間として紹介する。」

「はっ! お任せください王よ。必ずやこの牙と爪で魔王とやらを引き裂いて見せましょう!」

「任せておけ、任せておけ! ワシは強いぞ、大船に乗った気でいてよい!」


 フェン子は肉球プニプニでモッサリと毛の生えた手をワキワキさせ、ダン子は胸がプルンと揺れる――ほどは無い、膨らみかけの胸を反らして答える。


「あ、ダン子は服買って来いよ」

「嫌じゃというとろうに」




 そして後日王様の使いが来た際にダン子の服装は――


「おい、なんだそれは?」

「格好いいじゃろう」


 服など一切着ておらず、局部ガードに指ぬきグローブとピッチリブーツというさらにマニアックな格好になっていた。

フェンリルとダンジョンコアがチョイ役だと言ったな、アレは嘘だ!


すみません。後書きやらコメント返信やらで色々書いていたような気がしますが、物語はどんどんと変わってゆきます。大まかな流れなどならともかく、細かい部分はガンガン変わっていくため以後の予告などは基本当てになりません。

(-人-)許してつかーさい

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