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118 魔道具? いえ、ただの武器です

 『勇者様』が来る1週間の時間が空いているわけだが、さすがに冒険者仕事を入れて不測の事態などは避けたい。王城からもできれば待機していてほしいと言われているし。そもそも1週間といってもピッタリとは限らないのだから。


 そこで、以前のように魔道具研究などに精を出してみた。

 ただ、〈魔道具技師〉や〈鍛冶〉スキルなど持ってはいるが現代並みの工作精度を出すのは非常に難しく時間と労力がかなりかかる代物となっている。しかも手作業がメインのこの世界で同じ規格の部品を何個もというのは難しくほとんど1点物となってしまう。型に流し込む鋳造品もあるがそういった物は基本単純な形状の物のみだ。


 とりあえず車は無理だ。部品点数が多すぎる上に電気系統など不明な箇所が多すぎる。試行錯誤ができるならともかく1週間で作れるとは思わない。


 銃火器はどうか? 火縄銃程度なら簡単に作れるか?

 前世は日本人なので銃など触るどころか実物を見たこともない。モデルガンならあるが。後は基本テレビやインターネットの知識だ。ただ、銃はアメリカなら民間人でも分解組み立てができるらしい(よく知らないが)。ということは、そこまで複雑な構造はしていないのでは?


 とりあえず知っていることを書き出してみる。箇条書きにずらずらと。

 引き金を引けば撃鉄が下がる。などから、火縄銃→弾倉回転式→オートマチックの順に発展していたはず……だとか。

 個人的にはオートマチックの銃の方が格好いいと思う。

 ショットガンやグレネードランチャーなど特殊な物は今回作らないので省く。

 その次に銃の外観を絵にして描いてみる。とりあえず映画とかでよく見る銃などを書いてみる。絵心はある方(素人にしては)と思うので多分参考になるだろう。漫画とかじゃなくて設計図なので3面図みたいに描いていく。

 内部の構造は知らないので外観と機能から推測するしかない。引き金を引くのに連動して…………あとはスプリングとか使っているのだろう。多分。


 とりあえず思いつくようなことで内部構造を描いてみる。

 引き金を引くことがその後のすべての動きと連動しているわけだから……うーん……ここをこうすれば、撃鉄がロックされて……あれ? 回転弾倉ってどうやって回るの…………う~ん……う~ん……



 あ、そういえば、この作業は私の書斎として作った部屋でやっている。本とかはまだ無いけれど、筆記具とかは買いそろえた。


 ソレイユちゃんとティーアには買い出しをお願いしている。ソレイユちゃんは我が家の台所事情を任せているため食品などを、ティーアは以前から個人的に化粧品など購入していたため、そのあたりのおすすめを買ってきてくれるように頼んでおいた。

 そのほか空いた時間は自由時間とした。今までそういった時間をとらなかったので思いっきり羽を伸ばしてきてほしい。



 スキルがよい仕事をしているのか、心なし考えがよくまとまったし、設計図もうまくかけた気がする。試行錯誤すること2日、ゴミになった紙50枚以上を経ることでようやく設計図っぽいモノを作成することができた。


 そうして、よし、作るか! となったときにとんでもないことに思い至る。そう、材質は何だ? ということだ。総鉄製なんてことは無いだろう。重くて持ち運べない。……確か強化プラスチックを使っているとか聞いたような……。後は軽合金も使っているのかもしれない。だが、どちらもこの世界の技術では作れない物だ。


 じゃあどうしようと思ったが、すぐに解決した。

 この世界はファンタジーだ。勿論ファンタジー金属なんてのもあるし、それ以上に身近な存在がある。

魔物の素材である。

 有名どころだとドラゴンの鱗だろうか。金属以上の強度と金属以下の重さという謎素材である。他にも、透明なアクリル板のような素材や、ゴムのような素材などがある。



 と言うわけでそれらの素材を買いに行った。今は私たちがダンジョンで入手した素材類で専門店が結構豊富に扱っているため十分な量を入手できた。

 ただ小売店の利益が上乗せされているので、こんなことになるんだったら素材をギルドに売る際にもっと確保しておけばよかったと思う。少し損した気分だ。



 ◇◇◇



 ずっと銃制作のことを考えていた訳では無い。気分転換に他にも作れる物が無いかと考えていた。


 とりあえず以前コマの魔道具を作ったのでそれを再利用して扇風機を作ってみた。

 結果、プルプルプルと回って風を送ってくれた。割と簡単に成功したが、核となる魔石の値段が結構したのでコスパは悪い。

 そのほかにも回転運動を動力にする道具というのは非常に様々な物がある。大きな所では発電機から小さい物だと食品ミキサーなど。時間があればそれらも作ってみよう。


 あと構造が単純で知っている物というと……

 オイル式ライターを作ってみた。100円ライターとかでは無くて芯となる紐? にオイルをしみこませてと言うやつだ。学生時代、アルコールランプを扱った事も有ったので構造は容易に想像できた。

 外枠の金属などの加工は私の魔法で一発だ。……嘘です。結構手間がかかった。金属を溶かし液体状になった場合それを操るのは水魔法の【流体操作】でできると思ったが元が鉱物なので土魔法の合わせ技になるらしい。さらに金属が液体になっている=高温を維持しなければならないと言うことで火魔法で温度管理をしてやらなければならないとやることが結構繊細だった。〈鍛冶〉スキルも動員しなんとか形になった。

 ちょっと模様なんかを入れてオサレにしてみたり。


 しかし魔法を使えばかなりの精度で金属加工ができることが判明した。これは収穫だ。銃を作るときに応用することにする。


 そのほかには同じく単純な構造の折りたたみ式の椅子やテーブルなどを作ってみた。木をメインに要所に金属で補強していった。

 野営などをするときに役に立つだろう。と思ったがアイテムボックスが有るのでわざわざ折りたたみ式にする必要が無かった。



 途中から魔道具とは関係ないお役立ち品を作っているようになった。

 ……まあ、そんなこと言ったら銃だって魔道具じゃないしー



 また別の日、気分転換にウインドウショッピングに出かけた。いろいろな店を見回っている際に武器店で気になる物を発見する。


「こ、これは!」


 手に取ったのは…………火縄銃だった。何でこんな物が? と思い店主の男性に聞いてみた。

 それは魔石を使って鉄の球を飛ばす武器です――から始まり、その不遇の歴史を教えてくれた。

 むかしむかし、とある発明家が魔法を使えない人でも使える遠距離攻撃武器を開発しました。しかしそれは魔法のような汎用性が無く、また次弾を撃つまでに時間がかかり、音が大きいこと等から敬遠されていました。そうして魔法使いは魔法を、使えない物は弓矢やクロスボウを使うようになりその武器は忘れ去られてしまいましたとさ。

 と言うことらしい。

 進歩したら連射できるすごい武器になるのに、進歩する前に廃れてしまったようだ。


 研究用に買うことにしたが売れ残り品なので格安で手に入れられた。

 そうして家に戻ると、バラしてパク……参考にさせて貰おうと思った。しかしながら、火縄銃と現代の銃とではかなりの違いがあるだろう事から本当に参考程度にしかならなかった。



 ◇◇◇



 ようやく完成にこぎ着けた。その集大成が目の前にある。そう、できたのだ。作ってしまった――


「……長かった」


 感慨深い。

 制作回数9回(内1回暴発、7回は加工精度不足)、総制作時間約30時間…………あれ? あまり長くないな。スキルさんがいい仕事をしたらしい。こんな短期間で銃が作れるなんてさすがチートである。


 外見は海外ポリスが使用していた物を参考に作成。弾倉は複列弾倉式で装弾数は17発。弾は地球の物と同じく9×19mmとした。親指でハンマーをカチッと起こすとかやりたかったが、実用性を考えハンマーを無くしストライカー式でダブルアクションを採用。

 威力については実物を知らないので比較できないが、Lv100代の人間を余裕でぶち抜けるぐらい有るし、たぶん大丈夫だろう。

 まあとにかく、まごうこと無き銃である。


 ただ完全に物理技術のみと言うとそういうわけでは無かった。材質の違い以外で一番大きな違いとして、高性能な火薬が無かった点だろうか。質の悪い黒色火薬なら少量流通しているそうなのだが。そのため一部に魔法技術を使っている。薬莢部分は中心に一定以上の圧力が加わると爆発するような魔法を刻んである。撃針がその部分を叩くと薬莢内に仕込んだ魔石をエネルギーに爆発して弾が飛ぶのである。



 なお、この銃であるが、私のレベルだと弾を見てから避けることができる。漫画などで見る銃弾を剣で弾くなんてこともできる。

 せっかく作ったが、この拳銃はサブの武器とすることにした。メインは剣と盾と鎧である。単純に銃の速さと威力より私の身体能力の方が高いためである。


 サブとはいえいつでも使用できるように鎧にホルスターを後付けした。鎧――ドレスアーマーのサイドスカートの金属部分を少し加工し右側に銃のホルスターを、左側に予備弾倉を3つ装着できるようにした。


 なお、名称は単純に【ナイン】とした。試作品から数えて9番目に作られた物の意味で。



 オートマチックピストルが作れたのだから次の段階にとも思っていたが、銃の制作に加え、十分な弾と弾倉を揃えて、さらに射撃練習までしてさらに様々(・・)な問題に対応していると1週間が過ぎてしまったためここで一区切りとした。

銃はG社の17のヤツがモデル。


定期更新とか憧れはしますが、前後の整合などあるので今後も何話か更新して、間を開けて、また何話か更新して……みたいなスタイルになると思います。(あくまで現時点の予想ですが)

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